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【服飾ロビ→ジュナ】一般人懺悔論

最初は、かわいそうな人だなって思ったんですよ。

はは、あー、それそれ。そういう表情すると思ってました。
オレが最初にアイツに会ったのは、カルナに忘れられて凹んでた直後だった。アイツは「私を覚えていないカルナなどカルナではありませんよ」なんて言ってたんじゃなかったっけ。
因果というか業というか。こんな平和な世界の学生として生きてきてるオレらなのに、アイツだけが記憶にとらわれてて、でもその記憶の一番深い所にいる奴は全然アイツのこと覚えてない。酷い話だよなぁ。カルナはアイツを覚えてないのに、アイツのことを美しいとかなんとしてでも手に入れるとか言ってるんだぜ。おぞましくねぇ? 考えてもみてくれよ。牙を剥いて戦いに殉じるためだけに生きてきた相手に、手のひらを返されて観賞用の鉢にぶち込まれた気持ちをさ。

……そう、アイツとカルナが会って、何度目だろうな。カルナはやっぱりアイツのことを賛美しかしなかったし、どれだけアイツが冷たい態度を取ったとしてもかまわないという様子だった。それってつまり、「モデル」としてしか扱ってもらえてないわけだろ? 外見の賛美だけを甘受できるほど、アイツは器用な男じゃなかった……。

カルナと二つ三つばかし話をして、教室の外に出てきたアイツの顔といったら、絶望に色をつけたらあんなもんになるのかな、とも思った差。いや、でも、なんつーか、ちょっと違うかな。
アイツがあんまりにも、雨の中の迷子みたいな顔してたもんだからさ……。そこでやめときゃよかったんだ。背中をといと叩いて大丈夫かよって声をかけて、それでわざとらしくナイチンゲールでも呼んでやれば済む話だったんだ。
しゃがみ込んで、息を荒げて、ひゅうひゅう鳴ってる音を聞いて。そこから両目を見開いているアイツの横顔を見たら、そんなのは、どっかにいっちまった。
闇夜の月は綺麗だし、野に咲く花は尊い。薔薇はそこにあるだけで世界を明るくするし、迷子の子猫はかわいそうだ。そんな当たり前の、世界の真理を混ぜ込んだ男に、どうして触れようなんて思っちまったんだろう。

気付けばオレはアイツの唇を塞いでいて、そこが異様に冷たいことを知ってしまった。
目尻に浮かんだ水滴は朝露のようだったけど、全然違った。朝露なら、もっと純粋で希望に満ちていただろうに、アイツの両目にはそれがなかった。諦めと困惑、それから疑問と焦燥。……カルナと対峙してたときの、オレの覚えてる強い瞳じゃあなかった。
魔が差したんだ。本当にそれしか言いようがない。じゃなきゃ、カルナの持ち物に手を出したりなんかしなかった。誰がなんと言おうと、カルナはアルジュナのもので、アルジュナはカルナのものだった。それはカルデアに居る頃からの不文律で、そこに運命めいた形のなにかが存在していなかっただなんて誰も言えない。例え、カルナとアルジュナの間に恋情が無かったとしても、だ。

あぁ、そうだったな。アイツの唇は案外冷たかった。男にしては柔らかいそこは、オレが口をふさぐたびに酸素を求めるようにうごめいてて、魅惑的だった。こんな言葉を使うと、後で誰かから殺されるとは思うが……役得だと思った。
うまく呼吸ができないそこに、少しずつ酸素を送り込んでやると、しばらくして呼吸が収まってきて、それからアイツがようやくオレの名前を呼んだんだ。……綺麗な、響きだった。

……これはさ、オレの懺悔なんだよ。いたいけなお姫様に手を出した一般人の後悔の話。
救えないよなぁ。だって、オレ、アイツの唇も、肌も、どんなに滑らかで美しいのか、もう知っちまったんだからさ……。

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