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ラティーフとサミルスハ

 視察から戻った彼は、山のように積まれた書類に挑んでいた。その全てに目を通して、可否を判じる。今年はどうもモンスターによる被害が多いように思う。近く山間部の方へと出向いて様子を見に行かなくてはなるまい。民の苦しみを見過ごすことはできぬが、モンスターにもきっと何か理由があるはずなのだ。場合によっては王国へ癒術士の派遣を依頼しなくては。かつて共に過ごした癒術士の少年を思い出し、彼は健勝にしているだろうかと思いを馳せた。
 あの時得たもの達が、今の自分の血肉となり糧となっている。あの日刃を交えた女の、痛みを湛えた瞳とその決意。それを受けてなお、止まることはせずにここまで歩んできた。彼女の言う通り儘ならぬ道行きではあったが、それでもこの胸に燃える理想がある限り、何人たりとも自分を止めることなどできないのだ。瞼の裏に、いつでもその光景を描くことができる。あの日向けられた問いを思い出しては、自身の心を燃やす薪にするのだ。
 ここ最近とみに忙しくなり、寝所に入るのが遅くなっていたからか、どうにも疲れが溜まっているようだ。ゆっくりと頭を蝕み始めた眠気が煩わしい。この一角を片付けたら今日は早めに眠ることにしようと、再び書類に目を通し始めた彼の意識は薄闇の中へと溶けていった。



 ゆるやかに、頭を撫でる感触がする。母のような、恋人のような、姉のような、何ともつかぬ優しい手つき。この女を知っている。
 目を開けると、そこには見知った女の姿があった。
「……私は眠っていたのか」
 いつの間にか体は寝台に預けられている。どうやら彼女が移動させてくれたらしい。頭を撫でる手を止めずに、女ははいと頷いた。その手が心地良くて、目覚めた意識は再びゆっくりと眠りの淵へと沈んでいく。どこまでも深く、ともすれば吸い込まれてしまいそうな紫の瞳が、果てない慈愛を以てこちらを見ていた。
「我が君、無理はなさらず休んでください。代わりの王はいても、あなたの代わりはどこにもいないのですから」
「そうだな。私が眠るまでこうしていてくれ。お前の手は心地良い」
 瞼を下ろしながら告げると、くすりと笑う気配がした。はい、と再び返事が返されて、褐色の手が頭を撫でる。それに誘われるように夢路へと向かう最中、朧げな意識は女の声を微かに聞いていた。
「大きくなられましたね、我が君。昔はあんなにも軽かったのに」
 理想を抱き進み続けた王子を知る臣下の呟きは感慨と慈しみに満ちていた。王の夜は静かに更けていく。

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