ジャンル:カルジュナ お題:男のわずらい 必須要素: 制限時間:15分 読者:196 人 文字数:1496字 お気に入り:0人

【カルジュナ】洋裁専攻学科xモデル志望9

講師室の仲は雑然としていた。スチールパイプの椅子がそこかしこに置かれているのにも関わらず、人の気配は少ない。アルジュナは自分のゼミ教授から言われていた、こちらの担当講師を探す。曰く「すぐに分かる」とのことであったが、正しくアルジュナはその人物を発見する。

「やぁアルジュナ、待っていたよ」
「レオナルド――先生」

ダ・ヴィンチという名前を伏せたのは意図的なものではなかった。ファーストネームで呼ぶことに些かの抵抗が無かったかといえば嘘になるが、アルジュナの判断は正しかったらしい。レオナルドは、に、と口元を片方だけ上げて魅惑的な笑みを作った。
手招きをされ、アルジュナはレオナルドに近付く。一歩、二歩。とうとう、チェアに座るレオナルドの前までたどり着く。ぴんと伸びた背筋のままにレオナルドの言葉を待つと、その形の良い唇が動いた。

「久しぶりだね、アルジュナ」
「――」

今のレオナルドの言葉で確信した。アルジュナは、「この人生」でレオナルドに会うのは初めてだ。だが、レオナルドは確かに久しぶりだと言った。つまり、

「記憶が、あるのですか」

ひっそりとしたアルジュナの問いに、レオナルドはやはり笑みで返答した。
レオナルドがくるりと人差し指を宙でかき回すと、ぱちん! という音と共に講師室の中の照明が全て落ちる。アルジュナが唾をのむ前に、ひやりとした空気が室内を満たした。

「悪いね、少し私の陣地に入り込んでもらったよ。一般人が居ると厄介だからね」

見れば、室内にまばらに居た教員たちの姿が見えなくなっている。彼らの世界をずらしたのではなく、レオナルドとアルジュナの存在を一枚のヴェールでずらしたのだろう。アルジュナは背に落ちる氷のような汗を無視しながらレオナルドに問う。

「ダ・ヴィンチ女史、貴女は、」
「うんうん。分かっているよ。君の疑問に答える前に、ある程度の説明をしておこう」

レオナルドは足を組み、膝の上に肘を置いて、うっとりするようなポーズを取った。上目遣いで心を動かされるアルジュナではないが、居心地の悪さは未だ消えない。しかし、何故だろうか。例えばアルジュナの記憶にあるレオナルドであって、ここが特異点であれば、その修正のための助力は惜しまないだろうし、アルジュナのみを自分の陣地に引き込むような真似はしない。そう、今この瞬間、講師室外に居るマリーもナイチンゲールもロビンも、レオナルドにとっては部外者になり得ている。おかしい、とアルジュナは思う。しかし、そのおかしさを補う「何か」が今から語られるのかと思うと、知らず握った拳に力がこもった。

「ここは、特異点にもならない何か。時間の狭間なのかはたまた世界の気まぐれか。何にせよ、ここは閉じられた『箱庭』だ」

レオナルドの言葉は、ある意味でアルジュナの予想と違えるものではなかった。しかし、続く言葉たちに、アルジュナの喉がひりつくことになる。

「アルジュナ、私が君だけをここに呼んだのには意味がある。君のゼミ教授である、諸葛孔明が君たちをここに送り込んできたように。アルジュナ、いいかい、私の一万飛んで三十五日のループの結果、君がこの特異点の鍵である可能性にたどり着いた」
「私が……です、か?」

舌の根が乾き、目が見開かれる。
アルジュナに、その自覚は全くなかった。

「私がこの歪みを作ってしまった原因……なのですか……?」

声が震えないようにするのが精いっぱいになりながら、アルジュナは問う。
レオナルドの唇は、残酷でありながらも現実的な、リアリズムの体現者に相応しい薔薇色をしていた。


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