ジャンル:IT/イット “それ”が見えたら、終わり。 お題:シンプルなぬめぬめ 制限時間:30分 読者:30 人 文字数:1451字 お気に入り:0人

【ペニビル】赤い風船の部屋

以前からあったちょっかいという名の嫌がらせ行為が此処最近過激さを増してきた。自室のイス背もたれでは止まらず、その内通ってる学校や荒れ地、行く先々でふわふわ浮いてる赤い風船。半ばキレながら空に返していたが量が量なため何時しか空に返すのを止め無視を決め込む。不幸中の幸いでリッチー達には見えてないのが唯一の救い。流石にしかめっ面を見られた際、察した顔をされ静かに肩を叩かれたのは色々思うところがあったけど流した。

鬱陶しく視界端で揺れる風船を極力意識しないようにしていれば、風船製造本体が現れて完全に無視しているのをいいことに断りなく手に風船の紐を持たせきた。無論即放す気満々で握っていた手を開く。だが、風船は飛ばず彼の頭より高い位置で浮かび続けている。何故という疑問は抱く間もなく呆気なく消え、隣で自分の右手人差し指でニタニタ笑いながら指差す白塗り道化師に全てを悟った。
ご丁寧に結ばれた紐。結ばれた輪から抜こうにも食い込んでいて引き抜けない。鋏で切ろうにもその鋏が体よく見付からない。
一度気持ちをリセットして完全に隣で「探し物はこれかな?この鋏を探しているのかなビル?」と無駄に動いている”それ”を意識の外に放り出して読み途中だった読書を再開。文章を目で追い、文字から齎される情報で脳内に情景を思い浮かべ没頭した、したかった。したかったが、自室の天井いっぱいに赤い風船を飛ばす賑やか道化師の所為で折角のめり込んでいた本の世界観が台無しになった。

「い、いいい加減に、しっしっろ!な、な、なにがしたいんだ!?」
丁度一つ膨らませ終わった赤い風船を天井に浮かべさも当たり前だといわんばかりに”それ”はのたまう。
「知ってるかいビル。この風船は私の体の一部なんだ。その体の一部がこんなに犇めき合った空間に君がいる、つまり君は間接的に私の体たちに囲まれている。とても素晴らしいとは思わないかい?」
「ない!」
大量の風船が犇めき合ってる所為で本来の天井はすっかり覆い隠され風船同士がこすれ合う音がそこかしこから聞こえた。
「素晴らしく、ない?」
わざとらしく聞き返す声色に宿る物悲しさ。まるでこっちが悪者みたいな言い方にカチンとくる。
きっぱり「迷惑だ!」と言い切れば肩を落として視線だけを天井に向けた。おい、待て。その手に持ってるのは何だ。如何して徐に天井で犇めき合ってる赤い風船に突き立てようとする。
嫌な映像が高速で脳裏を過っていった。
「ひ、一つ聞きたい。その、ふ、風船割って、血とか、で、出ないよな?」
そうなったら大変だ。部屋中真っ赤に染まり大量殺戮現場と化す。でも、これが悪手だった。
何故、いい事を聞いたって風に笑う。やめろ。風船に針を刺そうとして離れては様子を窺がう悪趣味な行為をやめろっ。試しに針差したらうっかり割れて血が飛び出しちゃった、って意図的だろ。せめて笑うの我慢する素振りくらいみせろよ。
べっとりぬめ付く鮮血を頭から被る気分は如何だって?今年一番サイコーな気分だよくそ。
「嗚呼、やっぱり美味しくない」
じゃない。首を掴んで逃げられないようにした挙句、ぬめぬめした血塗れの勝手に舐めといて文句を言う。何様だ。
頬に押し付け舐め上げられる相手の舌腹のざらついた感触。何度も往復するのに思わず眉間に力が入り、口汚い罵り文句だって出る。
手足をバタつかせ脱出を試みたが、悲しく腹立たしいかな。全く意に介さない”それ”は顔に付着した血を全て綺麗に舐めとるまで拘束を緩ませなかった。

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