ジャンル:刀剣乱舞 掘安 お題:青い血痕 制限時間:1時間 読者:22 人 文字数:3912字 お気に入り:0人
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救いのない話

注意
※腐向け
※堀→安←清です
※審神者がクズ
※安定くんが情緒不安定だし壊れてます
※題名通り、救いのない話
※審神者殺害描写あり
※審神者が刀を殺害してます
※読み手を選ぶ話です
※審神者出てきます
※流血表現あり
※意味不明
※刀剣破壊描写あり

「僕を一番愛してくれる人は、誰だろう」
どこか遠くを見ながら彼はそう言った。
僕は何も言えずにただ下を向いて、伸びた彼の影を見つめた。

彼……大和守安定くんを好きになったのはずっと、ずっと昔だった。彼が沖田さんの刀になったその時に、僕は一目惚れしたんだ。
人間みたいだ。可笑しい。滑稽だ。
最初こそ、そう思っていたけど今となっては「好き」だと言えない自分が憎いくらいだ。
安定くんを使ってきた元主たちは皆、短命だった。
それ故に彼は自分を愛してくれる人への忠誠が深い。
でも、僕らの主は目も当てられないような酷い人間だった。
自分の鬱憤を晴らすために刀剣に暴力をふるったり、無理な出陣をさせて負傷しても手入れをしない。
それで何振りもの仲間が消えていった。
一番初めは主に永遠の忠誠を誓った長谷部さん。そして次は兄弟を守って消えた一期さん。
何振りも、何振りも。
逆らう刀は刀壊し、自分の気分が悪ければすぐに暴力。
そんな、人間らしいとは到底思えない主。
それでも安定くんは、主さんに気に入られようと必死だった。
今ではすっかり主さんに気に入られて、主さんは安定くんしか構わなくなった。
憂さ晴らしの暴力も一番手短な安定くんで済ませる。
だから今は安定くん以外の刀が暴力を受けることはない。僕はもう、短刀の子たちや兼さん、清光くんが暴力を受けることがないと思う反面、如何しても安定くんが傷ついていくのを見るのが嫌だった。
日に日に増えていく絆創膏や包帯。着物に染み付いた血の跡。光を失った深海のような暗い瞳。
もういっそ、主さんなんか死んでしまえばいい。そう思った。

僕は安定くんの部屋へと足を運んだ。ある話題を持ち出して。
「安定くん……あの、ちょっと話があって。……いいかな。」
彼はきょとんとした顔で僕を見て、それから頷いた。
「うん、いいけど。話って何かな。」
暗い目。僕を見ているはずなのに、安定くんの目は何も映していない。
「主さんの、ことで」
「主?うん、如何したの。」
「暴力……ふるわれてるでしょう。僕、君が傷つくのが嫌なんだ。政府に言えばきっと、あの人は追放される。君や皆が傷つかないで良くなる。だからっ……」
「駄目。」
「……え?」
安定くんは、にこにこと笑った顔で言った。
「そんなこと駄目だよ、堀川くん。絶対駄目。」
「なん、で……」
「なんでって、主は僕を愛してくれるんだ。いつも、愛してるって言ってくれるんだよ。」
にこにこ。にこにこ。
色のない笑顔を浮かべて、彼は言う。
「主は僕を愛してくれる。だから、そんなこと絶対駄目だよ。」
「でも、君……ぼろぼろじゃないか……」
「ああ、これ?」
安定くんが、するりと腕の包帯を解く。そこから現れたのは無数の醜い傷たち。何度も同じところを殴られたらしい、黄色い痣あざ。恐らく何かの刃物で切られた切り傷。
彼の白い肌に、酷く歪んだ主さんの暴行の証明が残されている。
「見てよ、これ。主がつけたんだ。いいでしょう?」
「は……」
いいでしょう?この子は一体何を言ってるの。これが、いいもの?
「これはね、全部主の愛なんだよ。主はいつも、僕に傷をつけながら、好きだよ、愛してるって言ってくれるの。」
「違うよ……そんなの、愛じゃない……」
「でも、愛は人それぞれ形が違うんだよ。主の場合は傷が愛なの。だから僕は、これからも沢山愛してもらうんだ。」
嬉しそうに、うっとりと安定くんは傷を見つめた。
(……そっ、か。君は)
君はもう、ずっと前に壊れていたんだね。

彼の部屋から戻った後。
「堀川、安定と話したんだって」
「……清光くん……。」
いつの間にか、僕の部屋の扉に寄りかかりながら爪紅を見る清光くんがいた。
「……うん。」
「ったく……すっかり主の《お人形》になりやがって。」
「清光くん」
僕は清光くんの目をしっかりと見て言った。
「僕……主さんを殺そうと思ってる。」
「……ふぅん。」
「許されないことだと分かってる。自分の主人を殺すんだから。きっと僕は刀壊確実だ。」
清光くんは赤い目を細めて僕を見る。
「俺は止めないよ。寧ろ手伝う。」
「え……」
「いくら主とはいえ、あいつを傷つけるのは許さない。」
「でも……君まで刀壊されちゃうよ。」
「そんなの知ったことかよ。刀壊でも何でもすればいい。これ以上、安定は傷つけさせない。」
ぎゅっと拳を握った清光くんが一言呟いた。
「あいつは、俺の一目惚れだから。」
「……そっか。」
「おいおい。なァに二人で話進めてんだァ?」
「っ!兼、さん……」
僕の部屋に入ってきた兼さんは、にっと笑った。
「なんだ、あんたも殺る気?兼サン。」
「大事な弟分が下衆主に良いように扱われてんのを黙って見てられるような性分か、俺ァ。」
「……二人とも、本当にいいの。壊されちゃうかもしれないんだよ」
「上等。」
「やってやらァ。」
僕は少し黙って、それから二人を見て笑う。
「ありがとう。」

主さんを殺す計画は、次の日には整っていた。
安定くんが主さんから離れた時を狙う。そう決めた。
彼を連れ出すのが清光くんと兼さん。そして主さんを殺すのは僕。
二時間後の丑三つ時に、計画を実行する。
失敗すれば僕らもろとも安定くんまで殺されるだろう。そんなの駄目だ。
殺される前に、殺さなきゃ。



丑三つ時。計画の時間。
僕と清光くんと兼さんは主さんの部屋へ向かった。
物音はしない。ゆっくりと木製の引き戸を開ける。
息を殺して、手の中の僕自身を握る。
大丈夫。失敗はしない。
彼を助けるためなら、愛した人を救えるなら。
鬼の副長と呼ばれたあの人のように、僕も鬼になろう。
そう決心して、一歩。部屋に足を踏み入れた途端。
戦場での、あの匂いが鼻腔をくすぐった。生臭い、僕らが何百年も昔から嗅いできた匂い。
誰の?
これは、誰のものの匂いだ?
どくどくと心臓が脈打つ。
違う。これは彼じゃない。ちがう。ちがってくれ。
少し足早に、部屋の奥に進む。
気配を消して、主さんがいるらしき居間をのぞき込む。
「……ぁ」
ぺたりと膝をついた。
床に広がった黒く、艶のある髪。雪のように白い肌。それを彩る紅……
「やす、さだ…くん」
ちがう。
そんなわけない。
だって。
じゃあ。
「あぁ、安定なら私が殺したよ。」
一振りの刀を手に笑う、悪魔がそこにいた。
「彼はいい子だったよ。君たちを守るために私を殺そうとしたんだ。」
「やすさだ……?」
後ろから着いてきていた二人も、彼を見て呆然としていた。
「だから、この子がいつも言うように殺してあげたんだよ。首を掻き切ってね。」
主さんが刀を床に投げ落とす。
ちがう。
この人は、主なんかじゃない。
「……は、はは」
乾いた笑い声が喉から漏れる。
僕は刀を握って、ふらふらと立ち上がった。
「……あなたは、人間なんかじゃない」
人間であってたまるか。
「今、ここで、彼と他の刀たちに償ってください」
あなたが壊してきた仲間に。
「あなたが審神者になったのは間違いだ。……いや、あなたは生まれてきたこと自体が間違い。」
僕が殺さなきゃ。
この歪んだ人間を。
もう一度刀を構えなおして切っ先をむける。
「死んでください」
その時だった。
僕の前で笑っていた主さんが、首から血を吹いて倒れた。
「え?」
ぱたり。
糸が切れた人形のように倒れた主さんは動かなくなった。
「———かはっ……」
主さんを斬ったのは、床に伏せていたはずの安定くんだった。
「安定くん!」
「安定!」
「安定ァ!」
僕らは慌てて駆け寄って、安定くんを支えた。
「……、じ、が……ほり、ゎ……ころ、す……て」
〈主が堀川たちを殺すって。〉
彼の口の動きを読む。
ごぽっという水音と共に、安定くんの口から大量に血が溢れ出た。
「ぼ、く……ほり、かわ……す、……だ……」
「……!」
〈僕、堀川が好きなんだ〉
ぱくぱくと口を動かして、彼が言う。
「……ご、め」
僕は安定くんを強く抱きしめた。
ごめん。ごめんね。
「安定、手入れしよう……。手入れして、また一緒に話そ」
「き、よ……みつ」
「安定、手合わせ、すんぞ。……早く治しちまえ」
「……う、ん」
握っていた彼の手が、指先から桜の花びらと化して消えていく。
「ごめんね、安定くん……。好きだよ、愛してるよ。ずっと、前から好きだったよ。」
「……くも、す……」
ぱきんっ。
握られていた一振りの打刀は、軽い金属音を立てて折れた。
腕の中の彼は花びらになって消えていった。
「……愛して、る。安定くん、愛してる。君がどこにいても、愛してる。」
涙なんて出ない。つくづく嫌な体だなと思う。本当に悲しい時に、涙が出ないなんて。
『僕を一番愛してくれる人は、誰だろう』
あぁ、今更だ。
「僕が一番、愛してるよ」


これは、救いのない話。








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