ジャンル:エリジュナ お題:コーヒーと小説修行 制限時間:15分 読者:186 人 文字数:1451字 お気に入り:0人

【エリ+ジュナ】昼は長閑で歩けよモデル

「そういえば僕、アルジュナのショー見たことないんだよね」

ビリーがそう言うと、アルジュナは手元のダージリンティーを一飲みして、「そうでしたか」と返した。そもそもアルジュナはビリーが自分のことをモデルと認識していると思っていなかったのだろう。随分と平坦な反応である。

「別にここでもやろうと思えば」
「えっそうなの!?見たい!」

アルジュナの意外な言葉に食いついたのは、喫茶店の奥でコップを磨いていたエリザベートだった。喫茶店のロゴの入ったエプロンを外しながらアルジュナへと近づいてくる。カウンター席のアルジュナとビリー以外に客は居ないので、平日の昼間とはとんだ優雅さである。

「どうせだから教えなさいな!」
「構いませんが」
「うわ、絶対後悔するよ」
「どういう意味よ!」

エリザベートがビリーに食って掛かろうとする中、アルジュナは自分の小さな鞄の中から、二つの鈴を取り出した。アルジュナの手のひらと比較しても随分と小さく見えるそれは、クルミ程度の大きさだろうか。それにはそれぞれ青と赤のリボンが着いており、長い輪になっていた。

「では、立っていただいて」
「えぇ!」

カウンター前の通路をランウェイと仮定し、二人は並び立つ。

「これを耳にかけます」
「へ?」
「最初ですし片方だけで」
「うん?」

アルジュナはリボンの輪の部分をエリザベートの耳にかけ、手を離した。鈴がチリンと涼やかな音を立てる。

「では最初に姿勢から。視線はまっすぐに。顎は少し引いてください。頭の上から引っ張られ、一本の紐でつられているイメージで背筋を伸ばしましょう」

アルジュナはトン、とエリザベートのつむじに触れ、次いで肩に軽く触れた。もう少し肩甲骨を前に、という言葉に従って、在りざべーとはぴんと姿勢を正した。

「はい、宜しいですよ。ではそのまま歩幅を五十センチに固定したまま」
「へっ!?ご、ごじゅっ!?」
「BPM120ですから、一秒に二歩出すスピードで歩きましょう」
「いちびょう…?」
「それからその鈴は鳴らさないように」
「ナニソレーッ!?」

エリザベートが怒涛の情報量に混乱を顕わにすると、アルジュナは顎に手をあててふむ、と首を傾げた。ちょっと、と思わず横からビリーが口を挟む。

「あのねぇアルジュナ、素人さんにポンポン求めてもできないって。それは君のトレーニング法だろ?」
「えぇ、まぁ」

さらりと頷くアルジュナに、ビリーは顔をしかめる。これはちっとも、何が悪いのか分かっていない顔だ、と思いながら。

「だからね、君は努力したからそういうことができるようになったわけ。最初からできてたんじゃないんだから、他人にもそういうのも止めちゃいけないと思う」
「えっ…あ、はい、そう、ですね」

アルジュナは何度か驚いたように瞬きをし、エリザベートに向き直して、すみません、と頭を下げた。エリザベートは自分よりも三十センチメートル定規くらい高いところにある旋毛が降りてきたのを見て、やけに心が浮き立った。

「いいわよ!世界のアイドルエリちゃんだもの、アナタを専属のトレーナーにしてあげる。光栄に思いなさい!さぁやるわよ、最初はなんだったかしら!」
「鈴を鳴らさずに歩きましょう」
「ねぇそれホントに言ってる!?」

本当なんですけど、と困るアルジュナにわんわんと姦しいエリザベート。ビリーはわりと面白い組み合わせだよねぇ、と思いながら、ぬるくなったコーヒーを啜った。









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