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幻だって悩むことは有る

幻が想う、と書いて「幻想」
それなら俺がいま抱いている思いは幻想なのかもしれない。と、加州清光は思った。
だってそうだろう。「沖田総司に使われたという刀」という逸話こそ持っているものの、清光自身は加州清光という刀工の作である何十と存在する「加州清光」うちの一振りであるという程度の、個の特定できない、名前のない刀である。その逸話のみを頼りに主に顕現された刀の付喪神を幻と呼ばずして、なんと言おうか。
「清光」
そんな思考を遮るように、かの刀の主が清光の名を呼ぶ。かつての主、沖田総司ではなく、審神者と呼ばれる今の加州清光の主が。
「どうしたの?難しい顔しちゃって。可愛い顔が台無しだぞ?」
そう言って、眉間にしわ寄ってるよ?と続けた審神者は清光の眉間を指でうりうりと小突く。
「わっちょっとーあるじー!何すんのさー!」
指に驚いて距離をとると、審神者は「にっしっし」と笑った。
「ちょっとは元気出た?」
「はぁ?元気って……」
人が悩んで居ると言うのに思考をぶった切っておいて、何を言うのかと思ったが、笑う審神者の顔を見ていたらさっきまで悩んでいたこととか、いろいろどうでも良くなってしまったので、元気は出たのかもしれない。
幻のようなはかない悩みだった。

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