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【モ+ジュナ】よろしくお姫様!3

モードレッドのバイクに揺られている間、アルジュナはカルナのことなど一切考えなかった。というよりも、考えられなかった。猛スピードで黄色信号を突っ切っていくモードレッドは背後を振り向くことすらせず。ただひたすらにバイクを走らせていた。
そしてしばらくバイクを走らせた後、急に減速し、一件の建物横で止まった。そこは赤レンガの外壁が珍しい小さなビルで、アルジュナを下ろしたモードレッドはビルの裏手側にさっさとバイクを止めて戻ってきた。そして地下への階段を迷いなく進み、ドアベルを鳴らす。その扉に「OPEN」というプレートが書かれていることで、ようやくそこが何かしらの店である、ということがアルジュナにもわかった。

「よう、邪魔するぜ」
「あらいらっしゃい!」

聞こえてきた声にはっとする。エリザベートが喫茶店用だろうか、赤いエプロンを着用しながらモードレッドに笑いかけていた。アルジュナに気付いたエリザベートは、ぱっと表情を明るくし、モードレッドに「彼氏!?」と聞いて殴られた。

「ちげーよ。次のモデル」
「ふーん」

一気に興味を無くしたらしいエリザベートは、慣れた様子で席へと案内する。喫茶店の中は、地下とは思えないやわらかな色合いと明かりに包まれていた。カウンターが十ばかり、テーブル席は二人席と四人席の混合だが、あわせて二十名程度がやっとだろう。小さな店内ではあるが、随所に置かれた小物や鉢植えが来店者の心を和ませることだろう。アルジュナはソファへ腰掛けながらモードレッドに向かって肩を竦める。

「私、貴方も知ってると思いますが無一文ですよ」
「知ってるっつの。オンナに財布出させるような真似はしねぇ」
「逆ではありませんか?」

アルジュナが頬に手をあてて、ほぅ、と息を吐くと、視界の端に見知った気配を感じた。視線をそちらに向ければ、エリザベートと同じデザインの、こちらは緑のエプロンをつけたロビンフッドが目に入った。思わずアルジュナの空気が固まるのを見逃すモードレッドではなかった。

「あ?知り合いか?」
「いえ……そこまで、親しくは」

ないです。と言いかけたアルジュナの唇を立ち止まらせるのはロビンフッドへの郷愁か、はたまた懺悔か。
ロビンフッドは過去に二度、アルジュナのことを救ってくれたことがある。サーヴァント時代ではなく、この人間の世で。
カルナと面と向かってやりあうことができず、雨の中へ逃げ出した先で過呼吸に倒れたアルジュナを拾い、服を与えてくれたのが一度目。校内でやはり呼吸困難になったとき、キスをして、人工呼吸だと言いくるめて温もりを分け与えてくれた。
アルジュナはロビンフッドの唇の温かさを知っているが、それだけだ。アルジュナはロビンフッドが恋多き男だという話くらい知っている。

「ふーん」

モードレッドはアルジュナの返答をどうとらえたのか、おもむろに立ち上がり、カウンターの奥でコップを拭いていたロビンフッドへ近づく。カウンターを挟んで対面する形になった二者の間に、静かな境界が生まれる。その境界を作るのは誰でもないアルジュナである、ということに、まだアルジュナ本人は気付いていない。

「オレの連れに何か用か?」
「……いいえ?」
「ならジロジロ見てんじゃねぇよ。見世物じゃねーぞ」

へぇ、とアルジュナは思った。おそらくロビンフッドも思ったのだろう。モードレッドはショー以外での評価は善し悪しに関係なく耳に入れたくないのだろう、ということは分かった。

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