ジャンル:Fate/Grand Order お題:騙されたぷにぷに 制限時間:30分 読者:153 人 文字数:1500字 お気に入り:0人
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罰当たり

 子を失った悲しみに泣き暮らす横顔にさえ見惚れた、これは罰だ。
 妻の作ってくれた巾着袋は、彼女の美しさをなぞったような美しい縫い目を並べて早数年が経とうとしている。手作りだというのに解れもしないで、毎週の洗濯に耐えている。おれは彼女の作った夕食をすこし分けてもらって弁当に詰め、一歳になったばかりの息子と、彼を無事に育てている彼女に見送られて今日も元気に出社した。夜泣きに付き合った妻を見送りに立たせるのは心苦しかったが、彼女はほとんど毎日欠かさず見送ってくれた。手の空いたときにお歳暮をどうするか考えておいてほしい、という連絡を受けて、弁当をつつきながら思案する。この前の頂き物の、牛肉の時雨煮はどうだろうかと返信する。あと、可愛い坊やの熱はどんな具合か。必要であれば帰るので、時間のかかる業務は家に持って帰って取り掛かれるように支度はしている。家業の貿易会社には決算月というものはあれど、時間も年間のスケジュールもあってないようなものだった。老体に鞭打つ会長の父親の補佐を任されてもう十年が経とうとしているが、孫の成人した姿を拝むまでは死ぬに死ねないと意気軒高である。ふむ、父と付き合いのある家や会社へ贈るものに、血圧が気になるものを贈るのは避けたほうがいいのかもしれない。他のものに――たとえば、ひと月ほど前に仕入れて、妻がいたく気に入ったバスボムはどうだろうか。卸した先からも次々に追加注文があり、なかなか面白いかもしれない。
 妻からは、既読の印がついたまま、定時になるまで音沙汰がなかった。妻はこんなやり取りを黙ったまま終わらせることの出来ない人だ。急かすのも悪いと放っておいた自分を罵りながら、端末を操作する。おかげで、会社のゲートにぶつかってしまった。コートを小脇に抱えながら駅へ走る。スーツはすぐに汗ばんだ。電話を呼び出しても通じない、妻の母親――つまり姑に連絡を取る。
『ああ、ヘクトールさん』
「すみません、妻から何か」
 電話口の姑は、安堵したような、しかし焦燥と怒りと悲しみを混ぜた声でおれの名前を呼び、病院にすぐ来てくれとマンションの最寄りの総合病院のことを告げた。たどり着いた駅前でタクシーを拾って、一万円を叩きつけながら「これで〇〇病院まで、お釣りはいいから」と生まれて初めてのセリフをとうとう言うことが出来てしまった。最悪のシチュエーションだ。
「子どもが入院したかもしれなくて、まだ一歳なのに」
「そりゃ大変だ」
 言葉にした途端、身体から血が引いていくようで、目の前が暗く、そして吐き気がした。出来る限り急ぎますよと、厳しい顔で頷いた運転手はナビを見ながら左折や右折を繰り返した。信号で止まったことはほとんどなかったのに、車窓からの景色が止まって見えるほど気が急いていた。いや、もしかしたら息子は無事で、妻が倒れたのかもしれない?タクシーの中での時間は悪夢を考えるにはあまりにも長く、頭をかきむしった手の中に焦げた土の色の髪が何本も残っていた。タクシーが病院のロータリーに滑り込むや否や、ドアを開けて転がり落ちるように走り出す。慌てた運転手の声が背中を追いかけてきたが、かまけていられない。家族の危機だというのに。
「ヘクトールさん!」
 姑がおれの姿を見つけて、看護師に何か説明しながら奥へ案内してくれた。消毒薬の匂いに混じって、いかにも病院らしい緊迫した空気を吸い込む。倒れそうな足取りで、妻のもとに駆け寄った。彼女の細い首はすっかり項垂れて、電灯に紙のように白く照らされている。
「アンドロマケ」
 彼女の名前を呼んだ。ああ、幽霊と目を合わせてしまった。

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