ジャンル:モージュナ お題:灰色のボーイズ 制限時間:30分 読者:157 人 文字数:1474字 お気に入り:0人

【モ+ジュナ】あらゆる世界に宣戦布告

「モードレッド、そこへ直りなさい」

唐突なガウェインの言葉に、は?と眉を寄せたモードレッドは椅子の上で足を組んだ姿勢のまま声の主を見た。小春日和とも言える太陽光が窓から差し込み、薄く開いたその隙間から入り込む梅の香りを辿る風に前髪を遊ばせたまま。
ガウェインは眉間に深い皺を寄せている。彼はこの専門学校を卒業し、短大の研究コースへと進学した。つまり学年に直せば三年生で、モードレッドの先輩にもあたる。が、先輩への敬意だとかを意図的に置き忘れてきたモードレッドはガウェインへの対応も塩味だ。モードレッドの態度が変わらないことを再確認しながらガウェインは口を開く。

「まさか貴方が抜け駆けをするとは思ってもおりませんでした。このガウェインの不覚と言えましょう」
「なんだそりゃ。オレはコソコソした真似はしねぇぞ」
「ネタは上がっているのです。褐色肌の別嬪モデルと朝帰りのドーナツを食べていたそうではないですか!更に、聞けばその方はどなたかの婚約者と!」

随分なパワーワードを盛り込んできたガウェインが、わっと泣き真似をして両手で顔を覆う。
モードレッドが一応記憶の皿をかき混ぜ、褐色肌の別嬪モデルと食べたドーナツを探せば、おおよその事態は把握できた。
確かに先日、アルジュナに着せるスーツを夜通し縫製しており、それに付き合ってアルジュナまでもが実習室で一夜を明かした。当たり前だが艶めかしい触れ合いなどこれっぽっちも無かった。朝日に瞳を擦りつつ、腹が減ったとモードレッドがアルジュナを連れ出し、駅前のドーナツショップに開店と同時に滑り込んでドーナツを食べたのだ。いつもカロリー制限をしているからと控えているらしいドーナツをいくつも取って皿に盛ってやれば、人の機敏に疎いと自覚しているモードレッドにもアルジュナの雰囲気が華やいだのが分かった。自戒を重ね続けるのも不摂生の一種である、とモードレッドは思っている。そのままドーナツを貪ることに夢中になっていたが、どうやらそれを誰かに見られていたらしい。誰が、というのはおおむね予想がつく。どうせ面白い話と聞けば頭はおろか体ごと突っ込んできそうなメイヴだろう。

ここでネタ晴らしをするのは簡単だが、そのまま伝えるのも惜しい。何の真意があるにせよ、ちらちらとこちらを伺ってくるトリスタンとランスロットも気にくわない。

「オレがオレのマネキンを連れ回して何が悪い。あの主席野郎だって、トルソーを持ち歩いて悦に浸ってやがるぜ」

カルナの話を持ち出せば、そういうことではないのです! というガウェインの声が続いた。

「じゃあどういうことだってんだ。噂の博愛シンドロームだってんなら、武器を出しな」

モードレッドの分かりやすい挑発に、渦中の外に居たランスロットが頭を抱える。その隣のトリスタンはむしろわくわくとした面持で話の行く末を見守っているようだ。武器、というモードレッドの物騒な表現が示すのはデザイン画のことだ。優劣は全て、結果で決まる。そこにどれだけの努力が積み重ねられていようが、デザインに落とし込めなければ意味はない。そのために戦っているのだ、皆、自分自身と。

「オレは口を開けて待ってるだけのテメェらとは違ぇんだよ」

モードレッドは椅子を蹴り倒す勢いで立ち上がる。腕組みをし、靴の踵が床を打ち鳴らす。

「オレの姫様に手ェ出してみやがれ、その首ぶったぎってやるからな!」

啖呵を切って三者を睨むモードレッドは、扉を一枚隔てた向こう側で頭を抱えるアルジュナのことなど知るよしもなかった。

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