ジャンル:テニスの王子様 お題:遠いパイロット 制限時間:1時間 読者:130 人 文字数:1920字 お気に入り:0人

仁王くんと空の話

「あ、流れ星」
「なんじゃ。見つけるの早いのう」


満天の星空。それでも空で瞬く星にも負けない綺麗な銀色の髪が視界の端でひょこひょこと跳ねる。


「仁王くんほんとは見つけてるでしょ」
「なんの事じゃ」
「とぼけなくてもいいよ」


じっと彼の瞳を見つめていたら、観念したのか気まずそうに目を逸らしてぴよ。と特有の返事が聞こえてきた。
全く彼は嘘をつくのが下手だ。
なんでも学校じゃペテン師だのなんだの呼ばれているらしいが、私からすると仁王くんはそんな風には見えない。
だって嘘があからさますぎるんだもの。まあ、確かにたまにぼんやりとしてて何を考えてるのか分からない時はあるけれど。


「ほんと、適わんぜよ」
「ふふ。別に仁王くんが先に流れ星見たっていいのに」
「いいんじゃ。俺は流れ星見つけてはしゃぐお前さんが見たい」
「なにそれ」


今日はなんとか流星群の日らしくて、久しぶりに体調がすこぶる良かった私は先生から外出許可を貰って仁王くんと近くの丘に天体観測をしに来たという訳だ。あ、先生というのは私の担当医の事で、もう10年近くお世話になっている先生だ。


「ありがとう、流星群教えてくれて」
「ふ、…ずっと病室じゃ治るもんも治らんじゃろ?」
「うん。最近退屈だった」
「気分転換は大事じゃき、ちょうど良かった」


彼と出会ったのは、以前同室だった幸村くんと私がお話していた時のこと。廊下がなんだか賑やかだなあと思ったところで病室のドアが開き、芥子色が目に飛び込んだ。
幸村くんが俺の部活仲間なんだ、と紹介してくれてぺこりとおじぎをしたら、銀髪の子がその集団から抜け出てきていきなり私の目の前に拳を突き出した。


「お前さん、今欲しいものあるか?」
「えっ」
「なんでもええ。言うてみい」
「え、えっと………。あ、ほ、星っ」


突然のこと過ぎてどもりながらもそう伝えると、了解だと言わんばかりに口の端をつり上げて彼はカウントダウンを始めた。


「よう見ときんしゃい。……3,2,1」


そうして開かれた掌には黄色の小ぶりな星がひとつ、入っていた。


「星だ…!!えっ、なんで、」
「折り紙じゃけどな。」
「でもすごいよっ」
「他に欲しいものあったら言ってみんしゃい」


出してやるぜよ、と隣で微笑む幸村くんや少々呆れたように見守る他の部活の人達そっちのけで仁王くんは私のリクエストに何個も答えてくれた。
それから少しずつ仲良くなって……っていうのが私と彼の馴れ初め。今じゃ軽口の叩けるかけがえのない友人だ。


「………ぃ。…おい、何にやにやしとるん」
「へ?」
「顔面緩みまくっとったぜよ。変な奴じゃ」
「うわ、失礼。仁王くんと初めてあった時の事思い出してたのっ」


そう聞くなり彼はまた星空へと目線を戻してしまった。聞いてきたのはそっちのくせに、反応もなしかい仁王雅治くんよ。
私も結局また星空を見ることになってふと手が暖かいことに気づいた。そこには他の誰でもない、隣の彼の手が重なっていたのだった。


「仁王くん?」
「……なぁ、今のお前さんの夢はなんじゃ?」
「夢?」


いちいち言うことなすことが突飛だなあと思いつつも、声の調子がいつもとは何だか違う気がしてつい表情が少しだけ引き締まった。


「夢かあ……。仁王くんは?」
「俺は相手次第ナリ」
「なにそれ」
「まぁいいから答えんしゃい」


こちらを見ずに彼は回答を急かす。
ちょっと考えを巡らせたところで具体的な私の将来は思い浮かばなかったけれど、その時は漠然とあるものだけが頭に浮かんだ。


「空」
「……は?」
「そら、飛びたい」

「空飛んで、いろんなとこ行ってみたい……かな」


そう言って彼を見ると、なんだか満足そうな顔で微笑まれて重なっていた手に力が込められた気がした。


「……じゃあそれが俺の夢じゃ」
「え」
「お前さんを空に連れてってやりたい。それを俺の夢にしちゃ、いかんか?」


驚きで目が点になる。どうやっても頭の理解が追いつかない。待って、待ってくれ。それじゃあ仁王くんは、


「じゃ、あ、仁王くんの」
「そうじゃ。俺の人生、全部おまんにくれちゃる」
「でも」
「俺のこと惚れさせたんじゃ。それくらい背負ってもらわんと困る」


なんて横暴な。なんて自分勝手なんだろう。


「つーことはパイロットかの。まあ、頑張るか」
「………仁王くん、てきとーすぎ、だよ」


振り絞って口から出たのはそれだけだった。
仁王くんは、私の答えなんて分かりきっているかのようににししと笑うと私の手を引いて病院へと歩き出した。

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