ジャンル:IT/イット “それ”が見えたら、終わり。 お題:許されざる夜 制限時間:1時間 読者:67 人 文字数:1154字 お気に入り:0人

帰ってきた相手は笑って出迎えるもんだろ?

27年の休息期間から目覚めた時、まず初めに感じたことは――胸の内に広がる空虚感だった。
意識をデリー町中に張り巡らせ隈なく探し回る。募る焦燥感につられ指先が悴み呼吸が乱れた。多寡だが27年と鼻で笑い飛ばしたところで強がりにもならない。顔を思い出したくとも一向に見えない。影が差した不明瞭な面影ばかり脳裏にチラつく。
夜の帳が下りた町は静まり返り闇夜を歩く者は誰一人いない。慣れ親しんだ下水道ではなく地上の道を通り目的の場所の前に辿り着いた瞬間、27年の月日を生まれて初めて呪う羽目になった。住む者がいなくなった建物の劣化は早い。乱雑に打ち付けられた板が玄関と窓を塞ぎ、庭先に立てられた看板の文字に夜空が回る。
一滴の雫が大きな波紋となり広がるにつれ頭蓋奥に犇めく数多の言葉。裏切りにも近い計り知れないショックが足元をふら付かせた。
休息期間中デリーの町からいなくなる事自体予想の範囲内。よくある。問題はさもデリーの町から離れないと無意識の内に決め付けていたことだ。
不意に風に吹かれ一枚の新聞広告が足首に巻き付いた。何となしに見下ろした先、目を見開き知らず笑い声が零れだす。
空に向かって伸ばした手が星を掴んだに近しい感覚が体中を駆け巡る。踊り出した胸が止まらない。握りしめ食い入るように魅入る広告にはこう謳っている。



人気ホラー小説家ビル・デンブロウ
 生まれ故郷のデリーに近々帰郷予定

此処最近のスランプを考えての休息か
 期間は今のところ不明





先程まで滞留していた重苦しく澱み切った感情がものの見事に霧散。代わりに空いたスペースに他のモノが滾々と沸き上がり満ちる。夜明けに似たそれの正体は未だ分からない。
売りに出され荒れ放題だった空き家。売約済みの立て看板に変わり人が再び住める程度に改築が進む光景を日に日に眺めては彼の者の帰りを待った。根拠も確証もない。違う場所に居を構えるやもしれない考えは確かにあったが見て見ぬ振り。
実際、予想に反して目立たぬよう帰省する相手の顔を漸く見れた。
運転していた車から降り玄関を眺めようとしていた視界にわざと目立つ形で映り込む。驚愕した顔に入り混じる理解し難い感情が全てを物語っている。後ろに組んでいた手を解き、顔横で開閉を繰り返せば引き攣っているものの相手が笑いだす。
「ハ、ハハ。これは驚いた」
デリーの町に入った時点で気付いていた。可能なら視界端に入り込み盛大に出迎えたかった。だがしなかった。あえてしなかった。
27年前と違い眼鏡を掛け長く伸びた髪を後ろに一括りにした姿。少年ではなく大人になり目の高さが近くなった相手が近付いてくる。
「まさかデリーの町で昔の知り合い第一号があんただなんて」
「そいつは光栄だ」




おかえり、ビル。

同じジャンルの似た条件の即興二次小説


見つかりませんでした。

チクチク目打ちの即興 二次小説


ユーザーアイコン
作者:チクチク目打ち ジャンル:ゼルダの伝説 お題:哀れな祝福 制限時間:1時間 読者:47 人 文字数:1126字 お気に入り:0人
そう遠くない、なるかもしれない未来。と、いったところでそれが一体何百年、何千年後なのか、もしかしたらすぐ近い未来なのか、はたまた別次元の過去なのか分からない。皮 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:チクチク目打ち ジャンル:ONE PIECE お題:栄光の殺し 制限時間:30分 読者:96 人 文字数:487字 お気に入り:0人
どこまで本気で、どこまでが冗談なのか。ふざけているとしか思えない行いは常に割り切っていなければ振り回されるのがオチだ。今更ながら掻いた胡坐の中で高いびきをして眠 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:チクチク目打ち ジャンル:IT/イット “それ”が見えたら、終わり。 お題:黄色い接吻 制限時間:30分 読者:43 人 文字数:627字 お気に入り:0人
くすみ切った白い夢がひたひた足音を立てやってくる。熱が入り過ぎて役になり切っているのか。それとも別の何かが憑依して体を操り心を支配しているのか。撮影の合間。次の 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:チクチク目打ち ジャンル:ポケットモンスターBW2 お題:栄光の殺し 制限時間:30分 読者:56 人 文字数:1226字 お気に入り:0人
朝露滴る緑の絨毯が屋根一面を覆い隠し、朽ちるか朽ちないかの瀬戸際で鬩ぎ合っている石柱の間を潜り抜け、昔は人の活気で賑わっていただろう廃れた町並みを歩く。耳を澄ま 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:チクチク目打ち ジャンル:IT/イット “それ”が見えたら、終わり。 お題:遠いガール 制限時間:30分 読者:62 人 文字数:604字 お気に入り:1人
白い手袋が頬を包み撫ぜる感触はどちらかと言えば嫌いじゃない。少し毛羽立った布地が耳の縁をなぞる。こそばゆくて首を竦めようとすればその隙間に白い手袋が先回りして肩 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:チクチク目打ち ジャンル:IT/イット “それ”が見えたら、終わり。 お題:振り向けばそこに深夜 制限時間:1時間 読者:71 人 文字数:908字 お気に入り:1人
足元で蠢いていた黒い靄がビルの感情に共鳴して彼に群がり纏わりついた。憎悪、怒り、果たせなかった無念が糧となり勢いを増した黒い靄が白銀色の衣装を真逆の色で覆い隠す 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:チクチク目打ち ジャンル:約束のネバーランド お題:彼が愛した快楽 制限時間:1時間 読者:53 人 文字数:1109字 お気に入り:0人
変わり映えのない日々、手応えの全くない日々をたった一瞬で塗り替える鮮烈と期待に心が躍る。突如現れた一人の子供。その的確な指示が手緩い狩猟の終わりを告げる。待ち望 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:チクチク目打ち ジャンル:IT/イット “それ”が見えたら、終わり。 お題:清い壁 制限時間:30分 読者:91 人 文字数:709字 お気に入り:1人
糞尿が入り混じった汚水の匂いと屍肉が放つ腐臭のブレンドは一度服に染み着いたら中々取れない。触っただけで火傷するネバネバした糸に触れぬよう一定の距離を保つ。一本で 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:チクチク目打ち ジャンル:IT/イット “それ”が見えたら、終わり。 お題:許されざる夜 制限時間:1時間 読者:67 人 文字数:1154字 お気に入り:0人
27年の休息期間から目覚めた時、まず初めに感じたことは――胸の内に広がる空虚感だった。意識をデリー町中に張り巡らせ隈なく探し回る。募る焦燥感につられ指先が悴み呼 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:チクチク目打ち ジャンル:ジョジョの奇妙な冒険 ストーン・オーシャン お題:恥ずかしいブランド品 制限時間:1時間 読者:64 人 文字数:1293字 お気に入り:0人
鏡に映し出される気合入った格好。首を捻り後方も念入りに確認。鏡に顔を寄せ前髪を撫で整え、更に角度を変え左右もチェック。窓辺から差し込む陽光に照らされキラキラ輝く 〈続きを読む〉