ジャンル:おそ松さん お題:光の小説合宿 制限時間:4時間 読者:103 人 文字数:1221字 お気に入り:0人

閃光


 愛の物語は一松には書けない。砂を吐くようなでろでろの粘膜の擦りあいは他の有象無象にまかせておけばよい。……などと言える立場ではなく、今回も締め切り間近にうんうんと唸りながら、脳を雑巾絞りにするような作業に没頭しているわけである。たまたま書いた話が一発あったてしまったばかりに、こんな責め苦を受けているのだ! 一松はいまにも叫び出しそうになるのをこらえてペンを握る。時計の針がどんどん進んでくのに、頑なに動かないペンに、一松は業を煮やした。
このままではまずい!と気づいたのは担当編集の松野カラ松という男であった。会社としても、一松のような稀有な才能の作家を放流するわけにはいかず、かといって原稿を落とさせるわけにもゆかず、最後の手段をとったのである。
そう、古き良き拘束、旅館への缶詰であった。

 作戦は完全に功を奏した。山奥の質素ながら静謐な空間、自由に入れる温泉、カラ松の献身的な体調管理とちょっかいによって、締め切りのわずか1時間前にあわやと思われた新鋭作家松野一松の新境地が完成した。容姿端麗魅力的なキャラ造形、少女の心をつかむ歯の浮くようなセリフ、読者の涙腺を焼く悲哀、アッと言わせる急展開、すべてが完璧に仕上がった。

「じゃあ、これでデータを本社に送りますので、先生、お疲れさまでした!」

 カラ松の快活な声を聞きながら、一松はほとんど失神するように畳に転げ落ちた。慣れない作風の小説は、精神を下ろし器でガリガリやられているような疲弊をする。意識しなくともだらしなく降りてくる瞼に、一松は身を任せた。

「先生!テ、テレビは見ましたかッ!?」

 静寂を破るカラ松の絶叫に、なんだうるせェな、締め切りには間に合わせただろうが。畳の上で一松は機嫌悪く呻いた。今だけは鈍痛のする目も、キリキリ差し込む胃も、背骨から全身に走る倦怠感に体を任せていたかった。何も考えず目を瞑ることができるとは、なんて素晴らしいんだろう!ああ、とろとろと眠れるならば、おれはなんでも差し出そう。魂を売っても、ひと時の睡眠を!
「先生、起きてください! テレビをつけますよ!」
とんでもない力でゆすり起こされ、半纏の首根っこをぐいとつかまれてカラ松はテレビの画面を突き付けた。
巨大な隕石が、まっすぐに地球に向かっている映像が延々と流れていた。軌道は完璧に地球の芯を狙っていること、どうやっても回避できないこと、それではみなさまお元気で、いつかどこかでまた会いましょうと泣き出すキャスター、阿鼻叫喚の現場、不安定な通信、やがて砂嵐だけになっても、カラ松と一松は画面を見つめ続けていた。

「げ、原稿は… 連載され、ない…?」

 世界の破滅に瀕して心配することがこれか。一松は働かない頭で人生の最後を共にするはずの男に聞いた。
鳩が豆鉄砲を食ったような顔で紡ぐ返事。

「た、たぶん……」

強烈な閃光が目を焼いて、世界は一瞬にして灰燼に帰した。

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