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靴職人とお菓子

 靴職人さんが寝ている間に、妖精さんが靴を仕上げてくれたことがあったらしい。そのことに気づいた職人さんはたいそう喜んで、毎晩机のうえにお礼のお菓子を置くようになったそうな。
 その妖精さんはティンクではないけれど、どこか住処を変えたのかその妖精さんはお菓子には手を付けない、だからティンクがお菓子を失敬していた。毎晩の贅沢、職人さんの家に忍び込めば腹いっぱいの甘美を味わえる。そんな時間をティンクは享受していた。
 来る夜も来る夜も、職人さんはお菓子を置く。来る夜も来る夜も、ティンクがそれを頂戴する。そんな日々が続いていた。
 ところがある日、ティンクは異変に気付いた。なんだか、飛ぶのが億劫になってきた感じがするのだ。足も少し重い。体がだるかった。
 不規則な生活を続けて、お菓子ばかり食べていたからだろう。ティンクは少し反省し、それでも誘惑を断ち切るのは難しいもので、職人さんの家にやってきた。
 職人さんは寝床でぐっすり眠っている。机のうえにはいつも通り甘美が用意されていた。誘惑にあらがおうとするも、お腹が空くので、やっぱり食べた。
 するととうとう、異変は確実なものとなった。
 ティンクが叫び声をあげる。妖精の体は小さいので、いくら叫んでも人間の耳には届かない。体中に激痛が走る。ティンクは身を縮こまらせてうずくまった。ぐう、ぐうと息を吐くことしかできない。震えて手を見ると、みるみるうちに茶色く変色していた。
 どうにかその場を立ち去ろうと羽を動かす。しかし羽は硬化して動かない。まるで、まるで革にでもなったみたいだ。
 そのまま、地獄のような痛みがひとしきり続いた後、朝になると痛みは引いた。
 ホッとして立ち上がろうとするも、足どころか、手も羽も顔だって動かない。
 それもそのはずで、ティンクは革靴になっていたのだ。
 起床した職人さんが、机のうえに置かれた革靴を、にやにやとした顔で手に取る。
 妖精が仕上げた上質な靴は、その日のうちに売れ、職人さんはまた新しくお菓子を机に置くのだった。
 

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