ジャンル:おそ松さん【腐向け】 お題:光の動揺 制限時間:30分 読者:87 人 文字数:2884字 お気に入り:0人

陽の光が照らすもの



【おそカラ】---------------------------------------------------------------------------



 人の心を動かすものは、些細で身近なものであったりする。常より見ているものや、受け入れているものでも、ほかの要素が加わって衝動的に人を動かす。おそ松の瞳孔がぐわっと開いたのも、特段偏見のない、昼間の陽の光だった。土曜の午後、学校から帰宅したとき、居間で昼寝をするカラ松に陽の光が差していた。ただそれだけのことで、おそ松は突き動かされてしまった。カラ松が、普段は六人で寝ている長い布団が畳まれている上に、折り重なるように寝ていたというのもある。いつも眠るときに、カラ松とは弟一人分離れたところで眠るおそ松が、常の夜に何を考えていたのか、はっきり自覚したのは昼間の陽の光のせいであった。カラ松の寝顔を明るいところで見て、初めてこの弟を犯したいのだと自覚したのだ。
 半ば無理矢理の始まりではあったが、カラ松はすんなりおそ松を懐に入れてしまった。俺を好きなのか、と聞かれたときに、おそ松は気恥ずかしくはぐらかした。そうしても、カラ松ならば自己愛が突出しているのだし、わかるだろうと踏んだのもあった。カラ松は眉間に皺を寄せて「じゃあなんで、」と言った。おそ松は気まずくなって、本当のところは自覚しているはずなのに「わからない。」と答えてしまった。
 それから十年余り、彼らは曖昧なまま過ごした。けれども、おそ松は自覚があったので、内心でヒヤヒヤすることが多々あった。カラ松がフリーハグに赴いたり、逆ナン待ちに繰り出したりすると、頭を抱えたくもなったし、時にはやんわりと阻止しようとすらした。カラ松は聞く耳を持たぬというより、おそ松の心をわかっていなかった。最初と同じように「どうして?」というような顔をして見てくるものだから、決まっておそ松は気まずくなって、はぐらかして行かせてしまった。自分の知らぬところで知らぬ女や男に触れたり声をかけたりしているのだと思うと、おそ松も気が気でなく、帰ってきたカラ松にはきつくあたった。それは幼稚な無視であったり、乱暴なセックスによるものだったが、言葉にせぬのでひとつもカラ松には伝わらなかった。
 おそ松も、このままずうっと一生行くとは思わなかった。どこかではっきりせねばなるまいと思うのは、将来どうのこうのではなくて、心のもやもやに耐えられなくなってきているのだった。カラ松と身体を重ねれば重ねるほど、馬鹿みたいに想いが強くなった。しかも、カラ松が最中に幸福いっぱいと言うような顔で微笑みながらおそ松の名を呼ぶのだ。いったいなんだ、とおそ松は問い詰めたくなった。けれども、おそ松は自分の心をどうやってカラ松にぶつけたら良いのかわからなかった。
 一緒に家を出ようというのも、結婚しようというのも、約束しようというのも、違う気がして留まっているのだった。おそ松は、カラ松との関係を恋人だの夫婦だののような「確固たるもの」にしたい一心のくせに、そうするには切り出しも言葉も見当がつかなかった。何しろカラ松は弟で、愛して好きでセックスをして独占をしたくとも、弟であることには変わりなく、弟を辞めさせるなど一番にいやなのだ。弟のカラ松が好きなおそ松は、彼を弟以外の何にしたらよいのか、漠然としていて考え始めると途方に暮れてしまうのだ。
 ついに限界だ、とおそ松が思ったのは、セックスの最中に自分が口走った言葉がきっかけだった。
「お兄ちゃんって言えよっ。」口に出してからおそ松ははっと我に帰った。
 そのとき、自分はカラ松をどうしたいのか、いよいよわからなくなった。けれども、カラ松はなんの躊躇もなく、おにいちゃん、と言った。それからはお互いが最後を迎えるまで、律儀にこの弟は「お兄ちゃん」と繰り返した。罪悪感に似たようなものを感じながら、おそ松はたしかに特有の快感をひしひしと感じた。終わってから、荒く呼吸をついてカラ松を見下ろし、おそ松は少し腑に落ちるような感覚があった。自分と同じもののようで、同じものではなく、格下の弟で守るべきカラ松を蹂躙し、支配し、畏怖されることが快感であるということを、しっかり言葉にして理解したわけではなかったが、感覚としておそ松は理解した。自分の大きすぎる愛情が怖くなり、整理しようと思うも、上手くゆかず言葉にできなかった。簡単に説明ができたなら、カラ松に面と向かって言うことができて、事が済むのに。おそ松は悩む性分でもなかったので、時折頭を抱えては、考えぬようにして、ふとした瞬間に思い出して苦悩するのを繰り返した。

    ◇

 おそ松がパチンコに負けに負け凹んだ状態で帰宅すると、玄関にはカラ松の靴のみだった。いちゃいちゃできるかな、と心が浮上して、いそいそと居間に入ると、縁側のほうでカラ松が昼寝をしていた。彼は、畳んだ布団を枕にしていた。昼間に外に干された布団を取り込んでそのまま寝たのか、取り込まれていた布団を枕にしたのか知らぬが、おそ松にはふと思い出される光景があった。
 最初のときだ。おそ松がカラ松に手を伸ばした最初の瞬間、同じようにカラ松は昼間の陽の光を浴びながら、居間で、布団を枕にして眠っていた。そのときは、おそ松は若気の性欲に突き動かされたというのもあったが、このときは違った。おそ松は頭をぐわんと揺さぶれるような心地になった。
 陽の光を浴びながら眠るカラ松は、やけに神聖で、清いもののように見えた。おそ松は自らの抱く愛情が大きすぎるあまり、衝動で彼を蹂躙し、嬲るような行為を繰り返し、ときには「お兄ちゃん」と呼ばせ支配したが、ついに大きく静謐な感情に打ちのめされた。本当は、こいつを連れてしがらみのないところへ連れ去りたいのだった。フリーハグやら逆ナン待ちやらカラ松ガールやら、そんなものよりここに大きな愛があるよと、呼び寄せて包んでやりたかった。上手く言葉にできぬだけで、正直に伝えれば、一番大きな愛に一直線についてくる男だとはおそ松もわかっているのだ。おそ松は、誰よりお前を愛しているのは俺だよ、とカラ松に伝えるべきだと、このときようやくわかった。

   ◇

 照れくさいからと曖昧な言葉で誤魔化すのは致命的な失敗だ。おそ松はもごもご口を動かし、身体を強張らせる。目の前ではカラ松が首を傾げている。何か悪いものでも、拾い食いでもしたんじゃないか、などと言っている。心配気な弟の顔に、情けなさを感じながらおそ松はやっと口を開いた。
「俺が絶対、一番、お前のこと愛しちゃってるからっ!」
 カラ松の目がじわじわと見開き、輝いてゆく。その光は、おそ松の頭を新しくしたあのときの陽の光にも似て眩しかった。こんなに大きな愛情をどう受け止めればよいのか、と揺らめいているようにも見え、おそ松はなんだか得意気になった。どんな好意でもしれっと受け止めるナルシストな弟が、動揺するくらいの巨大な愛なのだと。(終)

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