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時をかける

三月三日か、と緑間が呟いたので、赤司はふと、昔を思い出した。
お前はあのタイミングでいつも年月日を聞いてきたな
あのタイミング?
俺に想いを漏らしそうになるタイミング
緑間は新聞から目を上げた。店員が珈琲を運んできた。豆の香りが辺りに満ちる。珈琲とモーニングセットのトーストとゆで卵を置いた。
以上でよろしいでしょうか
はい、と緑間が答え、赤司も頷いた。
あれは、お前のせいだろうが
俺の?
……気づいていないのか
何を?
気づいていないのか、と緑間はため息をついた。
世界は同時に複数存在しているという
……ああ
突然、多世界解釈が始まった。今、読んでいる新聞に載っている話題なのだろうか。
俺はお前によって、何度も別の世界に飛ばされた
緑間はタイムトラベルの話をしたいのだろうか。だとすると、新聞に載っているのSF小説の何かか。
俺がお前に想いを伝えようとするたび、お前は俺を別の世界に飛ばした
……俺が?
緑間は頷いた。
そういえば、お前が俺を飛ばしたことを覚えているのかどうか、確認を怠っていた。――まあ、覚えていなかったんだな、その様子では
これは寸劇なのだろうか。
俺は世界を飛ばされるたびに、確認しなくてはならなかった。自分がどういう世界にいるのか。俺の家族はすべて存在しているのか。この世界で自分は何歳なのか。そのときの世界の年齢が、元の世界より下なら問題なかったが、上の場合は学業の方でだいぶ苦労をした。ある時など、医者になっていたからな。大人になったお前を見つけて告白するまで、かなり急いだ
SFか?
SFね、と緑間は新聞を畳んだ。
覚えていないお前にはそう聞こえるのだろうな
まるで本当の話のように、緑間は言った。やれやれ、といった様子だ。
証明のしようがない
……そうなのか?
もう、お前に飛ばされることはないから、証明しようがない
緑間はトーストを取り上げる。乾いた音がした。
ここにいる緑間はどの緑間なんだ
さあな
緑間はトーストをほおばりながら、言った。
俺ももう、自分がどの世界にいたか、覚えていない
何回告白したんだ?
覚えていない、と緑間は再び答えた。


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