ジャンル:血界戦線 お題:忘れたい冥界 制限時間:1時間 読者:56 人 文字数:2597字 お気に入り:0人
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死んだ先に三途の川はない


 おはようございます、と見覚えのある糸目に眺められながら目覚めは中々に悪くてげんなりする。あー、と短く吐いた言葉は決して返事なんかでは無かった。というか返事をする必要もないのが分かってた。怪我一つない身体を擦って見ればわかる、そう無いのだ。さっきまであったわき腹のでかい穴が。
 ついに死んだんだなって一人納得する俺を眺めて糸目がまたおはようございますと続ける。なんだコイツNPCかよ、村人Aかよ。
 死んだらサンズリバーとかが見えるなんて言ってたのは多分生きてるうちに読んだ本で、俺もてっきり死んだら川を渡っていくんだと思ってた。ところが蓋を開けてみれば見えるのは見慣れた陰毛頭で案外死なんて理想的なもんじゃねえんだなあ、と実感する。
 殺風景な部屋は昔どっかの映画でみた真っ白な正方形の部屋みたいだった、その映画はたしかどこまでもその白い箱が続いていくような映画だったきがする。
 「どこだとおもいます、ここ」
 「……どこって、アレだろ俗に言う死後の世界ってやつじゃねーの」
 「そうですね、そうなんですよ」
 あ、そこはあっさり認めんだ。いつまでも寝転がるのもこいつに見下ろされるのも気分が悪くて、身を起こして改めて見なおる。
 「つかなんでお前がいんの」そう投げかけた言葉に返事は期待してなかった。でも普段会話するみたいにスムーズに答えが返ってくるのでそれには思わず拍子抜けしてしまう。
 「僕は死んでないんで、いえばアンタの妄想なんですよね」うわー、ぶっちゃけてくれるわこいつ。やめてくんねーかな、まあ恥ずかしがったところでどうせ死んじまってんならいいや。にしても、妄想ってな。痛いやつじゃん、痛みレベルで言うなら致命傷レベルの。頭を抱える俺を優しく慰めて、寝癖がついた俺の頭を撫でてんのはいわば俺の妄想、願望そのままらしくてますます居たたまれなくなる。どうせなら裸とかとびきりの姿で出てきた方がましだったレベル。
 「だってアンタこういう俺が好きだったんじゃないですか」
 「うるせえ、声に出してねえのに勝手に会話すんなよ」
 ええーと笑うそいつの生意気さもいつも通りで、本当にいつも通りのレオだった。そうだったな、俺コイツのしょうがなさそうに仕方なさそうに笑う顔がすげえ気に入ってたんだ。
 
 「僕好きでしたよ、ザップさんの事」「妄想なんだろそれも」それもそうなんですけど、ちょっとは付き合ってくださいよ。だってどうせ死んじゃうんでしょ。それもそうだけどな。俺も好きだったよお前のこと。
 知ってますと言う向かいのやつを思わずぶん殴りたくなった。なんで知ってんだよ、俺だって死ぬまで知らなかったのに。
 「まあ僕、ザップさんの妄想ですし」
 妄想、妄想な。ならまあ、いいや。
 実際のレオの気持ちなんてさらさらわかんねんーけど、俺の中ではそういうことになってんだろうな。

 で、と切り出したのはレオで俺の妄想の中なのに予想外の行動をとるそいつに驚いてしまう。
 「キスしますか、それともベッドでも出しましょうか?」
 うげえ、俺キモイじゃん。体調なんて悪いわけないのに吐きそうになってくる。どうします、と分かりやすく小首を傾げる姿だって今まで見たことがないし。大体死にかけてんのにそれどころじゃねえだろ。あ、もう死んでんのか。
 「しておきます?ほらあれですよ冥土の土産ってやつですよ」
 どこでそういう言葉覚えてくんだ、いや多分俺の知識とかの影響なんかな。しねえよ、キスとか。
 白い部屋の遠くの方でベッドが現れるのも無視した。
 「いいんですか、後悔しますよ」「するかな、俺」「すると思いますよ」
 断言されても目の前のそいつに顔を近づける気にもならなかったし、ましてやいつものトレーナーをまくり上げてやろうなんて気にもならなかった。俺の妄想がこういってんだから後悔するんだろうけど俺はそれでいいよ。そう笑ったら向かいのアイツも頷いて笑ってじゃあ、と切り出す。じゃあそろそろお開きにしましょうか。
 お開きといった言葉の通りに白い壁から扉が出てきて開く、本当に昔みた映画のワンシーンみたいで。だからか俺は迷わず立ち上がって扉に進んだ。足を進める様子のないソイツを振り返ってもただ一言、僕は妄想ですからと言うだけだった。そっかまあ妄想なら仕方ねえな。んじゃ、また来世で。軽く手だけふって俺は扉の外に足を踏み出した。







 「おはようございます」そう言って目覚めた俺の目の前には見知った陰毛頭がいた。無限ループってやつだと思った。昔俺が見た映画のオマージュそのもので、自分の発想の安直さにげんなりする。でも二度目ぶりのNPCの目は腫れていた。
 「なんで泣いてんのお前」そうやって言っただけなのにレオはついに目を少し開けて泣き出してしまった。咄嗟に自分にかかっていた白いシーツで目元を拭ってやる。鼻水も付いたけど後でナースにかえてもらえばいいだろう。
 「だって、あんたが死にかけてるからじゃないですか」ぐずぐずに泣いたレオが言うことには俺はどうやらまだ死んでなかったらしい。そういえばと擦ったわき腹にも確かに傷があって、痛みに今度は俺が泣きそうになる。
 「もう死んだかと思って……スティーブンさんとか花手向けようとしてましたよ」まじかよ。いや後で文句言っても許されるレベルじゃんそんなの。
 あ、そうだ。泣くソイツの涙を拭って思い出したことがあった。鼻を啜るレオにそのまま顔を近づける、カサついた唇は若干しょっぱくて。顔を離すとさっきとは違う意味で赤い顔のレオがいて、その顔は俺の妄想の範疇外のものだった。そっかお前そんな顔すんだな、へー。
 「俺お前の事、好きだわ」
 そういうと目の前のやつは、精いっぱいの様子で一度だけ頷いたのでやっぱ自分の妄想力の浅はかさを呪うしかない。記念にともう一度顔を近づけてもさっきみたいにスムーズにはいかずに、俺の顔にはシーツが押し付けられた。
 

 「そう言えば意識ない間、ドクターが言うには半仮死状態だったらしいんですけどなんか夢とかみてたんですか」
 「あー……、忘れたわ」
 ただあの妄想とやらだけはマジで墓場まで持っていくことに決めた。ご都合主義のハッピーエンドには似つかわしくないし丁度いいだろう。うん。
 

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