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【カルジュナ】ショタスナイパーxボス4

本当にあいつは私の護衛にでもなりたいのだろうか。
私の脳内の問いに答えてくれる人間は居ない。それこそ神であったとしても、私のこの問いに答えてくれたところで事態が好転するわけではないのだろう。
私も室内で事務ばかりをしているわけにもいかず、そこかしこへ顔を出すことが多い立場である。しかしあいつは、カルナはそのどれもについていきたがり、私は何度もそれを却下する。

ビリーの元から戻ってきたカルナは、二か月という短期間集中コースをものの見事に満点で合格したらしい。ビリー直々のサインの入った卒業証書までわざわざ作らせてきたのだからよっぽどだ。最後に「アルジュナへ。君の未来の番犬を」と但し書きが無ければ、私はそれを感慨深く見てしまっていただろう。
カルナは銃の扱い方だけではなく、身体の作り方もそれなりに習ってきたらしい。あの、雨の日に見つけた襤褸切れなどに包まれなくなった身体は、若くしなやかな、成長途中の植物を思わせる曲線が残っている。それと同時に、栄養が行き届いているからか、髪は緩やかな弧を描きながらふわりと靡き、綺麗に切りそろえられた爪先は愛らしいピンク色をしている。
そのどれもが、まだカルナが両手の指の数にも足りぬ幼子であるということを私に知らしめてくる。
同時に、この小さな命を、私という日の光の下を歩けぬ人間の側に引き留めてしまっているという罪悪感が私の足首を掴んでくるのだ。

「アルジュナ」

せめて敬称を、という言葉は聞き入れられた試しがなく、私は最早注意することを諦めていた。
何処かしこから、あのボスのお気に入りが、とうとう自分の猫を飼い始めた、という噂話が耳に入っても、私はひたすらに無視を決め込む。カルナの耳にだけは情操教育上よろしくないという観点から、口さがない言い分をする者は始末させてもらっているが。
私の前に立ちはだかるようにして姿を見せたカルナは、糊のきいた赤いシャツを身に纏っている。サスペンダーで吊られた半ズボンから覗く膝小僧は健康的な丸さを形作っており、彫像もかくやという白磁の肌は、まだ発展途上特有のみずみずしさを表現している。そのカルナの胸には、似つかわしくないホルスターと、そこに収められるベレッタがあった。
この銃を与えたのはビリーであり、卒業祝いだから、とのことだ。
私は密かに、ビリーのところにカルナを放り込むことで、またもカルナが逃げ出せばいいと思ったのだ。私の職業が何かを知っていたとしても、実際にそこに立つ苦悶、苦悩、困難を知らぬとすれば、それは正しく理解できているとは言い難い。十にも満たぬ子供ならば、痛めつけられれば逃げるだろう。あの孤児院から逃げ出したように。私はそう考えたのだ。
しかしカルナは泣き言一つ言わなかった。何故、と私は声にならぬ声で何度もカルナに、防音ガラス越しに問いかけた。

「何故、オレを傍に置かない」

私は、何故カルナがここまで私に執着するのか理解できない。
同時に、カルナも何故私がカルナを拒絶するのかを理解できない。
私たちは未だ平行線を歩いている。それは酷く危うく、また曖昧で、まるで波打ち際で、引いては返す波の上を歩いているように。

「貴方のような子供を置くほど、人手に困ってはいませんよ」

私は倫理的にも至極正当な言葉を口にする。これが分別のつく大人であれば、自分で選んだ道ならば後悔するなと念を押すだけで済む。しかしカルナはまだ子供であり、大人の庇護を必要としている存在だ。私の手をもってしても、簡単にその首をくくることができる。
私の返答を聞くカルナは、ただただ不服そうに見えた。私はカルナに向かって少しだけ口角を上げる。

「それよりも勉学に励みなさい。ペンは銃よりも強し、という言葉がありますでしょう」
「しかし、それは礼節と倫理と衣食住が揃ってから初めて機能する言葉だ」

私はカルナの胸元のホルスターから銃を抜き取ろうとする。しかしカルナは、この時ばかりは私から距離を取り、激しく威嚇するように眉間の皺を深くした。

「だめだ。これが無ければお前を守れない」

私はカルナの言葉にただ首を振り、呼ばれるがままにそこを立ち去った。だからカルナがどのような瞳で私の背を見ていたのかも分からなければ、カルナに注がれる視線たちの刺々しさにも知らぬふりを決め込むことができていたのだ。

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