ジャンル:刀剣乱舞-ONLINE- お題:青い結末 制限時間:1時間 読者:76 人 文字数:2226字 お気に入り:0人

髭膝習作「片恋だと思い込み」

髭膝習作

兄者、兄者と僕を呼ぶ弟の声が好きだった。どうしても自分の名や弟の名が今何なのかを思い出すのは苦手だったけれど、弟が泣いてしまいそうな様子をだすと、思い出さなくてはと毎回焦った。

何に変えることもできなく弟が好き。それは、鶯丸と縁側でお茶をしているときに聞かれたとあることで名前をもった。その気持ちは恋情、愛情だと。弟にそんな思いを抱いてしまったことは、最初は夢にも思わなかったし、自分で信じられなかった。
けれど、弟が他の刀と一緒にいるとつい間に割って入ってしまったり……なんとなくいつも弟を見てしまったりするのは確かに恋なのだろうと自覚した。
「嫉妬はだめだよ、鬼になっちゃうからね」
いつも僕が言っている言葉。まさか自分に向けて言うことになるとは思いもしなかった。弟と話してる弁慶の薙刀や義経の守り刀を見てるだけでいらいらする。だめだなぁもう。
こうして部屋で寝転がりながら物思いに耽っていると僕より軽いくらいの足音が聞こえて、部屋の前で止まった。
「兄者? 非番とはいえだらけ過ぎだぞ。そろそろ夕餉なので起きてくれ」
開け放たれた襖から暗く染まった空が見えた、もうこんなに時間が経っていたのか。昼餉が終わってからからここにいて、ずっとお前のことを考えてたなんて言ったら弟は喜ぶだろうか、喜ぶだろう。兄の内情など知りもしないで。
「兄者?」
「ん、あぁ。起きる起きる」
思考に溺れると黙りこくって止まってしまう癖はなんとかしなくてはなと思いながらよいしょと起き上がった。弟が僕の髪に櫛を入れてくれた。それからじゃーじの上着を払ってシワを伸ばしてから僕の肩に羽織らせた。
弟はそれから大広間に向かって歩き出して、時折僕の方を振り返っては、離れていると立ち止まった。些細な気遣いに喜べばいいのやら、兄として不甲斐ないと思えばいいのやら。でも、弟との時間を長くしたいからぎしぎしと足元の木の音を立てながらわざとゆっくり歩いていたのは弟も気がついていた。
太刀なのに妙に軽い足音をしている弟もそれに習って普段よりもゆっくりと床を踏みしめて重い音を出しながら僕に合わせて歩いた。

慎ましやかな夕食が終わってからは兄弟二人で部屋でごろごろしていた。
「そういえば弟も今日は非番だったよね。今日はどうしてたの」
弟の口から語られたのはやっぱり義経主従の刀達の事で。僕には弟しかいないのに、弟には僕以外がちゃんといて……こんな、恋情なんて抱いてはいけない感情を抱いてるのは僕だけなのかなと思った。
僕以外と居たと言うことに存外気分が削がれたのでふぅんと素っ気なく返したきりその日は会話もなく二人とも寝床に入った。

しばらく経ったある日、弟が出陣で折れて帰ってきた。幸い、その時共に出陣していたお守りを持たされていた刀の機転で、折れそうな弟にお守りを貸し渡していたらしい。折れる寸前の状態までに刀はぼろぼろだったけれど、確かにまだ折れてないと言える状態だった。
生存が一になっていた弟は療養……というよりも休暇も兼ねて、手伝い札を使わずに手入れ部屋に入ることになった。一日と少しの時間を暇そうにしている弟のところに通ったけれど、はじめ半日くらいは眼を覚ますことなく、静かすぎるくらいに微かな寝息を立てている様子を見るしかなかった。
誤算だったのは寝てる弟に話しかけてて、途中起きたのに狸寝入りされたから聞かれる予定じゃなかったことが聞かれた事だ。
「弟、好きだよ。兄はお前がいないと他に居ないんだから、はやく起きておいで」

弟は狸寝入りを決め込むつもりだったみたいだけど、僕の好きの一言で驚きに目を見開いて簡単に起きていることを教えてくれた。
それで、聞かれてるとは思ってなかった僕は混乱してしまって、これは次の日に思い出した事。あまり記憶にないけど確かに、顔を赤く染めあげて。
「俺も……兄者の事をお添い申し上げる……」
聞こえるか聞こえないかの微弱な声。下手をしたら布団に声が吸われてなんにも聞こえなかったかもしれない。でも僕の耳にはたしかにお添いと聞こえた。
僕が驚いた視線を向けたときの、ふにゃりと緩んだ弟の笑顔を見て、抱きついて……まだ体の修繕が終わってない弟を倒してしまって。

それから長谷川? に怒られたんだけど、その後に部屋で弟と話した。手入れ部屋のことは殆ど記憶にないからと僕が言ったらまた同じくだりをした。僕が弟に好きだと言って、弟が僕に俺もだと言う。こんなことで喜ぶなんて千年も刀やってたのに可笑しなものだと笑いがこみ上げた。

兄者? と不思議そうにしている弟を抱きしめて好きだよと言いながら名前を呼んでやる。はにかみながら喜ばれた、可愛い。
「弟……僕から離れてはだめだからね」
「……俺が兄者から離れるわけ無いと知っているだろう」

それを知ってなかったから僕はこんなにも思い悩む日々を越したのに、知りも知らずにそんなことを言う弟の方をすりと手で撫でた。猫みたいに顔を僕の手に押し付けてもっととせがんでくる様子を見ると、あぁたしかにこれは僕のものなんだなと思った。


これはそんな、拙い恋の話。子供のように好きだと言って抱きしめて、たかがそんな事に心を躍らせる兄弟の話。未熟な、けれど兄弟にとってはたしかに幸せな恋。

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