ジャンル:しんけん!! お題:緩やかな失踪 必須要素:化粧水 制限時間:2時間 読者:132 人 文字数:1891字 お気に入り:0人

細かい日常

(刀匠いるよー)

【緩やかに、緩やかに】

斎庭白秋はこの屋敷町では地位としては上位に入るというか、真剣少女のお守り役とも取れる刀匠だ。
刀匠ではあるが、真剣少女通しの喧嘩などはよっぽどではない限り、仲裁には入らない。
のだが。

「あーしの化粧水知らない?」

「へちまのあれ? 知らん。お前の鞄の中にないのか」

自室である二階から一階に降りた白秋は真剣少女の芦葉ごうに聞かれ、答えた。
真剣少女も常日頃からツクモとの戦闘ばかりしているが女の子である。
身だしなみには気をつける。
芦葉は常に大きい肩掛け鞄をかけていて、その中に入っているのではないかと
白秋は想ったのだが、

「それが、使おうとして出してたらさ。消えちゃって。先生、物探しとか得意でしょ。
探せない?」

芦葉の話を聞きつつ白秋は懐から煙草を取り出すと、ライターで火を付けた。
ヘビースモーカーである彼は常日頃から、煙草を吸っていないと落ち着かない。煙草の煙を肺に吸い込む。
これでも、目の前で吸っても良い相手や吸う場所は選んでいる。

「やってもいいが、その代わり、掃除とか手伝えよ」

「先生の部屋の」

「自室は自室で解るんだよ。他の部屋のな」

「よろしく」

芦葉はその条件を飲んだ。白秋は懐から和紙を取り出す。煙草をくわえながら、折り紙を始めた。
出来たのは折り鶴だ。
指で弾けば勝手に鶴が羽ばたき出す。

「こっちだ」

「簡単にやるよね」

「やれるしな」

細かい条件は必要ではあるのだが、この屋敷も白秋の術が使いやすいようにしてある。
煙草を携帯灰皿でもみ消すと白秋は芦葉と共に化粧水のありかを辿った。



屋敷の軒下にネコが居た。
ネコの周囲には屋敷から取ってきたようなものがいくつもいくつもあり、その中には、

「あーしの化粧水!」

「……コイツが犯人か」

猫はすぐに逃げてしまった。芦葉はがらくたにみえるものの中から化粧水の瓶を取るが、
瓶だけとなっていた。中身が無い。
芦葉がどうにか下に入っていた。そこから外に出る。
今日の天気は晴れていて、寒くはない、

「物、取り出しておくけど、先生……」

「別の処は見てるから」

「えー」

「どういう反応をしろと」

面倒そうに白秋が返す。妹の一人を思い出した。活発な方の妹だ。
この世界には居ない白秋の身内である。
芦葉が軒下に入るとスカートの中身が見えるからとかそういうのかもしれないが、白秋は興味が無いというか
あってほしいのかとなりつつこの年頃の子は扱いが共なっていたが、

「軒下の掃除ですか」

「あつみとらでんか。らでん……」

「真っ直ぐ歩いていたつもりなのに迷ってしまって」

「自分が連れてきたのです」

籐四郎あつみと毛抜らでんが白秋に話しかけてくる。
らでんの方はどうせいつもの方向音痴だろうなとなっていたが実際の処、そうだった。

「毎度、助かる」

「先生が探しものが上手くなったのってらでんちゃんのお陰?」

「……前から使えたが精度は上げた」

探すのは大変と言うか、屋敷町は安全を確保するようにしているが、この世界はポストアポカリプスまっしぐらだ。
滅びかけていて、常日頃から失踪者も珍しくはない。
人捜しを依頼されて探してみたら死体になっていたなんて話もそうだ。

「聞いてよ。あーしの化粧水、ネコに取られて」

「それは大変でしたね」

「化粧か……」

「お前の場合、髪の毛の手入れの方がきつそうだけどな」

ライオンの髪の毛というかどうみても縦ロール系ドリルというかそういえばネコとか入っていた気がしないでもない
らでんの髪だ。ボリュームがありすぎる。

「先生は男だから女の身だしなみの整え方とか配慮がないんだ」

「するときはするって。それに男も大変なんだぞ」

「棚に上げた」

「まあまあ、刀匠殿、それと話しておきたいことが」

芦葉の話をあしらっているとあつみが真剣な表情で言ってくる。

「……事件か?」

「失踪と言いますか、あるようで」

「部屋に戻るぞ。それから聞く」

「はーい。らでんちゃんはあーしたちに着いてきてね」

「手を握っておけ」

そのままにしておくとらでんは何処かに行ってしまう。芦葉が、らでんの手を握りしめた。
ポストアポカリプスになろうとも人間は生きているし、生きるしかなく、
騒動も含めつつ時間は進む。
そのことを噛みしめながら、

「がらくたどうするの」

「あつみ、手伝ってくれ。運んで欲しい」

「解りました」

日々を,過ごしている。

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