ジャンル:刀剣乱舞 お題:裏切りの笑顔 必須要素:3000字以上 制限時間:1時間 読者:62 人 文字数:3342字 お気に入り:0人

本丸の休日

【とある宗教の撲滅】

明石国行は決意した。
必ず、必ず、この宗教は消し去らなければならないと。

「……ヒツキさん……」

「主、おはようございます」

審神者のプライベートスペースの境目の部屋、通称、屏風の部屋……境目の屏風が置いてありそう呼ばれる……で、
眠そうに寝間着姿で出てくる茶髪を長髪にした少女、明石国行の主である審神者だ。
おはようというかもう昼時なのだが、休みだからとだらだらと山姥切国広と他の刀剣男士と
アニメやらドラマを見ていたのだろう。
くつろぎタイムだ。

「パンケーキ……」

「ふわふわの方が好みですよね」

「好み」

ふにゃあ、と力がないような笑顔を見せる。気が抜けている表情だ。
明石国行が持っている白い丸皿には焼きたてのパンケーキが置かれている。粉が特別製で油と
豆乳を入れて焼けば美味しいパンケーキが出来るしろものだ。
それを適当にちぎってあり、味を変えるためのジャムが側にある。

「今日は粟田口派と来派でパンケーキを焼きまくるんで。主は食べるだけで」

「包丁とか握りたくない気分だったんだよね。ありがたいんだよ」

「予定は。きちんと進め取ります」

「助かるよー」

皿を審神者の少女が受け取る。
明石国行と審神者の少女はそのまま別れた。用事があれば呼ばれるし、そのままにしておけばいい。
問題は。

「強火の方が良く焼ける気がするんですよね」

「国行は止めるんだぜ? なんでだろうな」

「焦げるからや!!」

台所に入るとパンケーキが焼かれていたが、案の定、強火教の信者である一期一振と
愛染国俊が弱火で蓋をして焼かれているパンケーキのガスの火を強めようとしていた。
速攻で止める。

「心配なさらずとも、調整はしますよ。ヒツキ殿」

「お前のソレは信じられんから。信じ取らんから」

「皆の分が速く焼けないでしょう」

「焦げた物食わす気か!?」

ヒツキとは明石国行の呼び名だ。明石の明を分解してヒツキ、そう呼ぶのは主と一期一振ぐらいというか、
その二人以外には呼ばせたくはない。ヒツキは彼女から貰った自分だけの徒名だ。
エプロンを着けた一期一振の笑顔はそれだけで他の女子とか魅了をするかも知れないが問題がある。
彼は、メシマズなのだ。
強火教という強い火で焼いておけば何とかなるよねという宗教の一員でもある。
かつてのことでそうかもしれないと明石は想ったこともあったが付き合いによって、
性格の問題や、と訂正が入った。

「パンケーキをつくるなら、じっくりやいたほうがおいしい」

「小豆、丁度良かった。手伝えや、主のパンケーキは作ったけど他の分がまだや」

エプロンを着けて台所に入ってきたのは小豆長光、長船の一派だ。

「そのつもりだった。いちごどのは、つよびきょうのしんじゃだから、きをつけろとみながいっている」

「……気をつけろだなんて。私がそんなに信用できないと」

「出来んから」

何でもかんでも強火で焼けば良いよね理論を振り回す一期一振によってどれだけの食材が犠牲になったか、
明石国行は何も無い空間で左手を動かし、術式陣を出す。本丸内のシステムによって起動できるシステムで、
本丸内に誰が居るのか、出陣はどうなっているかなどを一括管理出来る。
居るメンバーを数えたりしながら、

「どれだけ、やけばいい」

「沢山焼こうぜ! みんなで食えば良いんだしよ」

「大ざっぱやで。国俊」

パンケーキミックスを準備し始める小豆長光に焼くだけ焼こうとしている愛染国俊をさりげなく止めながら、
明石国行もパンケーキ作りに加わる。
面倒ごとは嫌いだが、面倒ごとを放置することによってさらに面倒なことが起きるのも
彼は、嫌っていた。




自室にて審神者の少女はパンケーキをつまみながら、ごろ寝に入っていた。
今日の活動時間は午後からだ。午後にするんだとなっているが、夕方ぐらいまでごろ寝したい。
最近は概ね平和なのだ。

「切国は……山かぁ……初期刀の極、いつ来るんだろう」

術式陣を広げて位置だけを確認しておく。
亀甲貞宗と村正に飛んで極が来たのが驚いたというか、初期刀というのは審神者の八割ぐらいが、
歌仙兼定、加州清光、山姥切国広、蜂須賀虎徹、陸奥守吉行なのだが、彼等の極が来ない。
審神者関連については残りの二割は諸事情で別の刀剣男士という者も居る。

「主? 出てこられる?」

「小竜さんだ。出られるよ」

傍らに置いてあるグラスに入った水出しの紅茶を飲み干して審神者の少女は自室から出る。
部屋の前に居たのは小竜景光であった。

「気だるそうにしていたけど、散歩でもどう」

「そうだね。散歩の後はハーブ園とか手入れするのも良いかも。花壇とか」

本丸内にはハーブ園や花壇もある。食料については外から仕入れているのもあるが本丸で作られる物は
作るようにしていた。

「日向正宗がそろそろ梅干しが作りたいって」

「美味しかったよ。梅干し、好きな酸っぱさ」

日向正宗は最近来たばかりの刀剣男士だ。梅干し作りが好きであり、来たときに本丸内操作をして、
梅干しを作って貰った。きちんと付けた梅干しを審神者の少女は好む。
大量に作っても刀剣男士の人数的にすぐになくなってしまう。

「彼も喜ぶんじゃないかな。梅干し、主が好きって言ってくれるんだから」

「梅干しも好きだけど、日向君も好きだよ」

「俺も?」

「小竜さんも好きだよ。みんな好き」

審神者の少女によって刀剣男士は大事な存在だ。戦闘関連を抜かしても好きである。
そう答えれば小竜景光がそっと審神者の少女を抱きしめるようにもたれかかってきた。

「好きで良かった。もう、主は探したくないからね」

寂しいことでもあったのかなとなりつつ審神者の少女は小竜景光の背中を軽く叩いた。

「主でいるようにはするよ」

「それで、構わない」

小竜景光が強く抱きしめてきたので、そのままにしておいた。



顕現したときに見た光。それが小竜景光にとっての今の主だ。
終わらない戦いの中に身を置きながらも、幸いでいることを忘れない少女、この主でずっと居て欲しいと
小竜景光が願った存在。
構わないと良いながらも、

(離れたりしたら……)

主関連の派閥はいくつかあるが、小竜景光としては別れを惜しむ気にはなれない。
ずっといてほしいのだ。

「お外、いこ。手伝って欲しいな」

「手伝うよ」

抱く薄暗い想いを押し殺して小竜景光は笑っておく。
大事な主、離れて欲しくない存在、
こうしていられることを小竜景光は嬉しく感じた。

「あるじさま、パンケーキの追加があります」

「今回はアイスを挟んであるぜ」

外に出ようとすると五虎退と厚籐四郎が呼び止めて,白い皿を出す。分厚く焼かれたパンケーキの間に
バニラアイスとチョコレートソースがはさまったパンケーキのサンドウィッチ形式の菓子が出て来た。
審神者の少女が一つ取る。

「小竜さん」

差しだされたものを小竜景光は受け取る。

「台所はどうなの」

「無事だ」

「……無事って」

第一声が無事というのがこの本丸だ。

「焦げてないならいいかな……」

「明石さんがついていますから」

「……あとでヒツキさんに……夕飯に好きなものでも作るか……」

何となく苦労していることを察したらしい。審神者の少女は呟く。

「主」

「外にいるから用件があったら呼んでね」

小竜景光は審神者の少女を促した。彼女は五虎退と厚籐四郎に手を振ると、玄関から外に出る。
広いようで箱庭である本丸。
閉じ込められた状態の主、別の職業で出られることには出られるが、

(いつまでもここに居て欲しいというのは高慢かな)

「美味しい」

気楽に食べている彼女を見て、小竜景光はその考えを脳裏に留めておく。
一段落したら別の職業に戻ったりしているが今は、

「今日はパンケーキづくしかな」

「みたい。たまにはいいよ。小麦粉万歳」

「クレープとか、良いよね」

彼女の側に居られる幸福を噛みしめた。


【Fin】

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