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春の美 ※未完

桜の花びらが舞う。ほのかに甘い香りが鼻腔に辿り着く。体感する温度は寒気とは違い、温く巨躯を包んでいく。なるほど、これが春か。
「とうとう一巡りしたな」
弾んだ声。それに反応して顔を下げれば、隣の頭一つ分低い白い頭髪が花弁と共に泳いで行くのに見惚れる。
「これは山桜だ。色が白いだろう」
泳ぐ花弁を目線で追えば、確かに白い。彼の言葉に頷くが、桜の木の種類など御手杵にはさっぱり分からなかった。
「どれも白いんじゃないのか」
「桃色もあるんだ、これが」
「桜なのにか」
「桜なのに、だ」
そういえば、と思い出す。昨日、お八つ時に出された桜餅は確かに桃色だった。歌仙兼定の思い付きらしいが塩漬けにされた桜も乗っていて、甘いものがより一層際立ってとても美味しく頂いた。あの桜は仄かに桃色がかっていたような気がする。ぼんやりと桜の造形を思い出すが、桜餅の方が印象強く残っていて色までは詳細に鮮明に思い出せない。あれは甘くて美味しかった。違う、そうじゃない。
「桜の木というだけで、こうも美しく儚く幻想的なものもないな。……いや、秋の紅葉も捨てがたいが」
桜餅に思いを馳せていた御手杵は、はっと我に返り桜の木を仰ぎ見た。近くで見ようと思ったが、桜の枝が顔に当たりそうな位置にあったため断念して一歩下がった位置からに留めた。それでも十分に大樹である。
「君よりもはるかに大きいな」
「木には流石に勝てねえよ」
細い腕が木に巻き付く。なんと羨ましい。御手杵は苦笑した。
「そうやってると、消えそうだなぁ」
「何が」
「鶴丸。色も白いし」
「そんな馬鹿なことがあるかい」
実に楽しげに笑んだ。ああ、良いなあ。彼が楽しそうだと、此方まで楽しい気分になる。それにこの光景は、実に、
「こういうのを美って言うんだろうな」

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