ジャンル:メギド72 お題:トカゲのダンジョン 制限時間:30分 読者:74 人 文字数:1531字 お気に入り:0人

トカゲ

 13階。
 今の戦力では、ここまでが限界だろう。ヴァイガルドを貫くようにそびえたち、果てしなくどこまでも続いていそうな塔。
 まだまだ終わりが見えないとはいえ、これほどまでの深部に至れたのは初めてのことだ。
 ここに来るに至って、すでにメギド達の大半は退却している。最も、塔の探索は、ハルマゲドンの阻止というよりは、合間に行われる演習の意味合いのほうが大きい。……余裕を見て退却しているため、重傷者もない。
 今回の作戦のリーダーとして前線に立ち、見事に探索隊を悩ませてきた強敵の眉間を撃ちぬいたマルコシアスは、ふうと珠のように浮かぶ額の汗をぬぐった。戦闘の様々で汚れているが、晴れやかな顔をしている。それは仲間たちも同様で、しかし、やはり探索が成功した日には、満足感というか、充実感というものが漲っている。

 階段を降りるまでが探索だ。
 撤退命令を受け、良い報告ができるだろうと意気揚々と戦果を抱え込んだメギド達は、ふと見覚えのない階層に至って足を止めた。
「どうした?」
 殿を務めていたガープが、前方を行く者たちに声をかける。視線だけは、じっと油断なく背後を守っていた。
「ここはどこでしょうか?」
 マルコシアスがつぶやく。
「んだこりゃ……見てねえな」
 あたりを確認したブネにも、またその階に見覚えはなかった。本来であれば蹴散らしてきた幻獣の死骸の一つや二つあるはずだが、そこには全く、何もなかった。
「おい、迷ったんじゃねえか」
「マジかよ、まずいんじゃねえの?」
「ま、出られないってわけじゃないさ。今まで戻れなかったことはないわけだし」
 これが一番最初の「戻れなかった事態」かもしれないでしょ……とは、ウェパルは言わなかった。バルバドスの言葉には、大いに希望的観測が含まれてはいたが、本人は計算して言っているわけだ。事実、やや険を増した空気はいくつか和らいでいた。「だねだね!」と、頷いているシャックスはたぶん本気で言っているのだろうが。
「早く水浴びしたいわね……」
 とげのある言葉を飲み込んで、ウェパルはあたりを調べ始めた。警戒を行う仲間を除き、各々がそれに加わる。
(このまま閉じ込められるということはないと思うがな……)
 ガープは見張りをしながら、ちらりと壁をねめつけた。
 「塔」の内部はなかなか複雑な作りになっていて、入るたびに微妙に様子を変える。また、人工的で規則的なばかりに自分たちの位置も見失いやすい。壁を叩くと、塔はゴンゴンとこっちの事情も知らないように高らかな音を鳴らした。
 蹴飛ばしたくなるくらい軽やかな音だ。
 暫く辺りを調べていたガープの目の前を、不意にトカゲが横切っていった。ただのトカゲだ。だがどうも気になって、ちらりと追う。視線の先には、ちょうど、がれきに埋もれた下への階段らしきものがあった。
「おい、こっちになにかあるぞ」
「おっ、階段かい?」
「お手柄お手柄!」
 舌打ち交じりに仲間たちを先にいかせながら、トカゲを探した。だが、小さな影はもうすでにいなかった。
「おい」
 呼び止めると、怪訝そうにブネが振り返った。
「いや」
 問題ないと伝えれば、そうか、と階段を降りていく。ガープは既視感の正体を思い出した。この石積の階は、少し在りし日の闘技場に似ていた。

 剣闘士として過ごしている合間、生き物を飼う余裕など到底ありはしなかったが、トカゲと出くわすこともあったかもしれない。
 なんとなく構ってやって、叩きだされるところをそっと救ってやったこともあった。
 うんざりだ。そう思ったが、一度振り返る。トカゲはやはりいなかったが、代わりにちろちろと備え付けられた松明の火が揺れていた。

同じジャンルの似た条件の即興二次小説


見つかりませんでした。

ぽつタイプライターの即興 二次小説


ユーザーアイコン
作者:ぽつタイプライター ジャンル:メギド72 お題:かっこ悪い豪雨 制限時間:30分 読者:31 人 文字数:995字 お気に入り:0人
※舟渡ししながら旅してるサレオスさんとモブのヴィータ「なあ、あんた、おれの傷は深いのか……」「いや、そんなことはないさ」 舟渡しはあっさりとそう言ってのけると、 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ぽつタイプライター ジャンル:メギド72 お題:君と裏切り 制限時間:15分 読者:43 人 文字数:645字 お気に入り:0人
「今日は荒れるなぁ……」 6月のある日、サレオスがそうぼそりとこぼした日は、透き通るような快晴の日のことだった。何気ない一言を、仲間たちはさして気にも止めてはい 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ぽつタイプライター ジャンル:メギド72 お題:不屈の医者 制限時間:30分 読者:43 人 文字数:1529字 お気に入り:0人
※アンドラス追放前 追放裁判 ホラーチック 人を掻っ捌いてるので注意してください それは何? ウソ発見器? へえ。初めて見たよ。そんな便利なものがあるなんて知ら 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ぽつタイプライター ジャンル:メギド72 お題:日本教室 制限時間:30分 読者:64 人 文字数:1230字 お気に入り:0人
※現パロにしたかったけどよくわからなくなってしまった ソロモン転校生 2学期の半ば。 2000年に世界が終わるだの、マヤ文明だの、世界滅亡の予言がいくつもなされ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ぽつタイプライター ジャンル:メギド72 お題:闇の笑い声 制限時間:15分 読者:69 人 文字数:1139字 お気に入り:0人
※メインパ、ソロモン王を探す道中「ソロモンってどんな奴だろうな」 モラクスが雲を眺めてふと言った。 ソロモン王を探して旅をしているが、今のところあまり収穫はない 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ぽつタイプライター ジャンル:メギド72 お題:ありきたりなサラリーマン 制限時間:30分 読者:72 人 文字数:1424字 お気に入り:0人
※モブ注意 死の間際の父が、ふと後悔を漏らした。「あんな遊び、教えなければよかった……」と。 兄が行方不明になって、もう10年が経つ。 たぶん、もうとっくに死ん 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ぽつタイプライター ジャンル:メギド72 お題:間違ったアレ 制限時間:30分 読者:78 人 文字数:767字 お気に入り:0人
「治してやれ……」 ブニがアンドラスのもとに運んできたのは、実に奇妙な急患だった。 深い手傷を追ってはいるが、ブニの態度は仲間に向けるそれではない。 ケガをして 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ぽつタイプライター ジャンル:メギド72 お題:かたいガール 制限時間:30分 読者:126 人 文字数:1371字 お気に入り:0人
生まれて初めて死体を棄てた。それも殺人未遂をした男のだ。 父親と兄は私のびりびりに破けた服装を見て何も言わずとも察してくれたし、黙って藁をかぶせた荷車を運ぶの 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ぽつタイプライター ジャンル:メギド72 お題:きちんとした別居 制限時間:15分 読者:74 人 文字数:1193字 お気に入り:0人
※モラクスくんキャラストバレ + そんな明るい話ではない「モラクス、あなたのおうちはあっちよ。みんなと寝なさい」 少女の服の端を掴んだモラクスは、なんだか離れが 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ぽつタイプライター ジャンル:メギド72 お題:かゆくなる「えいっ!」 制限時間:30分 読者:84 人 文字数:1324字 お気に入り:0人
「へくし! へくし! へくし! えっきし! ぺくし! べっくし! へくし! へくし! へくし! えっきし! ぺくし!」「うるさい」 シャックスがひっきりなしにく 〈続きを読む〉