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あの人の名前は

※モラクスくんキャラストバレ + そんな明るい話ではない

「モラクス、あなたのおうちはあっちよ。みんなと寝なさい」
 少女の服の端を掴んだモラクスは、なんだか離れがたくてそのままでいた。旅人を始末したときのさび付いた匂いは嫌いではなかったが、なんだか無性に不安にもなる。
「モラクス?」
「俺、マリーと一緒にいたいよ。あっちはだめなのか?」
「駄目よ」
 こっちとあっちの線引きを引くとき、少女の声は鋭く割れたガラスみたいにぴしゃりと響く。モラクスはとっさに服の端を離した。
「モラクスは物分かりが良くて助かるわ。また明日ね」
 マリーはにっこり笑った。

 明日になってもマリーはこなかった。たぶん、忙しかったのだろう。旅人の始末やら、いろいろな雑事やらで。そうじゃなかったら……。その先は考えなかった。
 いつものことだった。
 モラクスら、町の少年がぎゅうぎゅうと一緒になった住処は、だいぶ古い建物で、隙間風が吹き込んでくる。
「マリー、来ないな……」
「せっかく追い払ったのにな」
 すっかりけば立った毛布を握りしめたモラクスは、昼中ごろくらいになったところで「今日はこないな」と直感していたが、それは胸にしまっておいていた。
 年少の少年は、日がとっぷり暮れた今になってもまだあきらめがつかないようで、ちらちらと窓のほうを見ている。
「ちぇっ、マリーがいないとつまんねえよな」
「訓練の成果、見せてやりたかったよな」
 今日は肉はない。モラクスは野菜の入っていた、すっかり空になった木箱をじっと眺めていた。
「どうした?」
 別の少年が尋ねる。
「これ、なんてかいてあるのかな」
「書いてある?」
「形に規則がある」
「だから何だよ?」
「んー……だからさ。いや、分かんねえ」
 モラクスはにっこり笑って、あはは、と笑い声に流した。それから床にたまったほこりに模様を諳んじた。この模様には規則がある。模様。マリーはたぶん知っているが、知っていても何も教えてくれない。ぐう、と小さく腹が鳴った。水、食べ物、肉。肉が食べたい。旅人の荷物――別に、とったわけではなくて、転げ落ちたのを拾っていて、ポケットにしまっただけだが――手帳だった。模様がたくさん書いてある。なぜだか、とっさに隠してしまったが。
 署名があった。読めなかった。模様を描く。そして、消す。何度も何度も。

***

「アニキー」
「ん?」
「これって、なんて読むのかな?」
「ああ、これは――」
 返答を聞きふうん、と頷いたモラクスは、何年か越しにあの旅人の名前を知った。
「知り合いか?」
「いや、そういうわけでもねえけどな!」
 ふうん、で終わってしまうわけだが。手帳は見つかって取り上げられてしまったので、もう手元にはなかったが、あの規則正しい模様は、ほこりでなぞった感触と共に、指先にずっと残っている。

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