ジャンル:イナズマイレブンGO お題:幸福な雑草 制限時間:1時間 読者:86 人 文字数:2629字 お気に入り:0人

ではおれの気持ちを20文字以内で【京天】

 おれ、おまえに見つけてもらってよかったなあって。蹴ったボールにあわせて言った言葉に、剣城は首を傾げていた。


 風がからだをなぞって入り込んで、血液をめぐるようになる季節。2年生を迎えてクラス変えをして、信助と葵と一緒になった。狩屋は輝と同じで、剣城は1人だけ。ただ、剣城のクラスは隣だったから体育が一緒になった。1年生のクラスでは体育も授業の先生も違くて、あっちの方が内容が進んでるクラスだった。だから数学のわからなかったところを信助と一緒に聞きにいくのがテスト前の恒例になった。テストの前に聞きに来いって飽きられるんだけど、サッカーでいっぱいのおれたちにとって授業内容の理解なんて二の次。

 ああみえて真面目な剣城は、テストの点数がサッカー部一年生のなかで一番の輝と並んで点数がいい。社会が一番よくて、英語がその次で、国語が他の教科より低い。おはなしの読み取りは時々間違えてるけど、漢字や授業でぜったい出るって言ったところを抑えているから平均点は越している。自分のテストは放り投げるとして、剣城のでこぼこしたテストの点数が好きだった。そんなこと、テスト明けにざわめく部室で狩屋がこっそりと剣城の鞄から取り出した、きれいにクリアファイルに挟まれた回答用紙を見なければ知ることはなかったのだけど。

「……うわっ、みて。剣城くんチョー頭いい」
「おい、」
「なにしてんのさ狩屋……あっほんとだ、輝と同じくらいあるね」
「えー、すごーい。剣城って優等生じゃん」
「て、天馬、西園!」

 覗き込むおれたちに阻まれて、剣城が後ろからも前からも取れないと長身を活かせないことにいらついていた。その様子が面白かったから、今でも思い出せる。テストの点数で盛り上がるのなんて恒例行事だと思うけど、もしかしたらこういう経験が少なかったのかもしれない。それのせいで、テストの前には3つもクラスの離れた教室に駆け込んでは紫の学ランを探すことになった。今年からは隣のクラスにいくだけで済むね、なんて信助と盛り上がっていたら、クラス発表の後ろにいた噂の人物が現れる。

「剣城、今年もクラス離れちゃったね」
「……どうせ毎日会うだろ」
「そうだけど、一緒に授業受けたかったなーって」

 だって授業中の剣城、ほとんど見たことないもん。付け加えた言葉に、剣城は「そうか」と空に浮いた声で返した。うーん、ここまでヒントあげてわからないかなあ。登下校中にときどきランニングして鍛えてるのも、部活の真面目な姿も、おれのいえに遊びに来たときのリラックスした顔も知ってるけど、クラスにいるおまえがどんな風にしてるのか知らないんだよ。好きな人がいつもどうしてるか、ぜんぶしりたいなって思うのはよくある気持ちだって思うんだけど。人がたくさんいる下駄箱付近ではそんなこと言えないし、言葉を飲み込んで三人で教室に向かう階段へ向かった。マンモス校だから下駄箱は三年間同じで、教室だけが変わっていく仕組み。去年より階数がひとつ上がって、寝坊したら駆け上がらないとねって話をする。朝練がある日は大丈夫だろうけど、練習終わったあともだらだらすると遅れるからなあ。なんてことない短い会話をして、また部活でねって別れる。剣城は微笑んで手を振ってくれた。いい朝だなあ、ほっぺがゆるゆる緩んじゃいそう。

 始業式とオリエンテーションが終わってサッカー棟の前へと向かうと、10人くらいで出来た人だかりが見えた。たぶん新入生。そっか、新入生!おれが駆け足で近づくと、囲まれていたのは剣城だった。クラスメイトと関わることもなくまっすぐ部室に来た剣城は、エースストライカーさまなのもあってすぐさま捕まったらしい。

「剣城先輩ですよね、オレ入部希望です!」
「デスドロップ見せてくださいっ」
「エースストライカーってどうやったらなれるんですか!?」
「……」

石になってる。もうちょっと眺めてみたかったけど、かわいそうだから助けに行った。おれもキャプテンやってるから、剣城から興味が移ったみんながこちらに寄ってくる。剣城にアイコンタクトをすると、申し訳なさそうな顔をしておれと一緒に来たサッカー棟に入って行った。「えーっと、あの、サッカー部の入部希望のみんなは、とりあえず円堂監督が来るまでおれについてきて中に待っててね!」人の前に立って話すことに慣れてよかったと切に思う。おれは10人近くいる新入生を引き連れて中に入った。


「大変だったけど、円堂監督がさっそく部員が増えた!って自分のことみたいに喜んでてよかったね」
「……まあ、そうだな」

 部活もまだ始まらず身体がむずむずしたのもあって、夕方剣城にメールして河川敷でサッカーボールを蹴っていた。後輩たちから逃がしてくれたお礼の意味でもあるらしい。そんな律儀じゃなくてもいいのに。見せてとせがまれていたデスドロップも、監督を待つ間にリクエストをされたマッハウィンドもお互いゴールに叩き込んだ。サッカー部に入ったばかりのころ覚えた技は、一年経てば熟練したものになっている。必殺技は使えば使うほど強くなる。今年から先輩になると思うと、ボールを蹴る足にも気合が入っていく。

「おれたち、これから先輩って呼ばれるんだね」
「調子にのると、神童さんに怒られるぞ」
「そんなことしないって。狩屋あたりは、霧野先輩に気にされそうだけど」

 狩屋が後輩をパシらせそうって、信助も心配してたなあ。そこまで悪いやつじゃないから杞憂だと思うけれど。風が強く吹いて、草木がざわざわする。春と初夏の合間の風はうっとおしくなくて、背中を優しく押すような。ほっぺたにはっぱが張り付く。剣城がボールを抱えてベンチに座るから、おれもそれに習った。
 先輩になったわくわくと、剣城とまた離れたクラスと、座るベンチのゼロ距離を考える。おれたち、たぶんお互いに好き合ってて、こうして2人でいる時にそっとくっついて手を繋ぐんだけど、これ以上になれるのかなって不安になる。一応付き合ってるけど、2人で家にいてもなにもおきないし。これから先輩らしいことできるのかな。ふと地面にある雑草を見た。雑草ってどうやって受粉するんだろう? もしかしたらおれは剣城と雑草より恋愛ごとをしてないかもしれない。そうしたらなんだかこいつのほうが大人に見えてきて、ちょっとくやしくて地面を蹴った。









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