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バカめ。騙される奴が悪い。

「はぁ……はぁ……」

ここまでくれば大丈夫。

たった数分走っただけなのにこんなに息が切れるなんて、ちょっと運動不足でしょうか?

装填のために腕立て伏せは欠かしていないのですが、どうも持久力は向上していない、どころか衰えているようです。

ですが、その課題はまた後日。今はなんとしても逃げ切らなくてはいけません。

ダージリン様に捕まりでもしたら……それはそれは恐ろしい結末が待っているのです。

「どうしたの?オレンジペコ?」
「うわっひゃい!……あ、ああ、ルクリリさんでしたか……」

私に後ろから声をかけてきたのはルクリリさん。一つ年が上の、サイドテールの似合う大人っぽい先輩です。

「驚きすぎよ。何かあったの?」
「いや、ダージリン様が……ですね……」

ダージリン様がすべての原因です。あの人、いきなりアイドルをやるとかいいでして、どこから持ってきたのか超絶フリフリのアイドル衣装を私に着せようとしてきたのです。

ご自身はプロデューサーをするそうで、ターゲットになったのは私とアッサム様。

ですが、私はあんな服を着て歌って踊るなんて絶対に耐えられません。大洗のアンコウ踊りの方が……まだ、ましかどうかはわかりませんが、いい勝負だと思います。

とにかく、死んでもやりたくないと意見が一致した私とアッサム様はダージリン様からの逃走を図ったのです。

全力疾走で逃げて逃げて、今に至るというわけです。

「ということでして……」
「あー……、あんたも大変ね」

ルクリリさんもこめかみを抑えて、私に同情の言葉をかけてくださいます。

先輩であるルクリリさんは、私より一年多くダージリン様とお付き合いがありますので、その辺の苦労はみにしみて知っているのでしょう。

「いいわ、しばらく匿ってあげるわ。どっか学校の隅でジュースでも飲んでましょ。おごってあげるから」
「え!?いいんですか?」

思いもよらぬ助っ人の登場に、私のテンションが若干復活します。これでにげのびる道が少しは見えてきました。

「じゃ、行くわよー」

そういってルクリリさんが私の肩に手を回します。

それはもうがっしりと……。

「ルクリリさん?」

ルクリリさんはにこにことわらいながら、私の肩に回した手に力を込めます。

「バカね……。簡単に人を信用しちゃダメよ?」
「なっ、ど、どういう……」
「ダージリン様ー、ペコを確保しましたー!」
「え、ちょ、裏切りですか!?」

ルクリリさんが呼びかけると、先の衣装を手に持ったダージリン様が物陰から現れました。

「ごめんねぇー。ペコを捕まえないと、私があれを着ることになるのよ。流石に、この歳でアレはきついでしょ?」
「そんな!?一つしか変わらないじゃないですか!」
「やっぱ、若い子の方が似合いそうじゃない?あのフリフリ」

にこやかに、一歩一歩ダージリン様が近づいてきます。私に衣装を見せつけるように大きく広げながら。

「離してください!ホントに!ルクリリさん!」
「ぺこ。そんなせつない顔しないの。あんたはアイドルなんだから。笑わないと良いアイドルにならないわよ?」
「どなたのせいだと思ってるんですか!?」

ついにダージリン様が私の目の前にやってきてしまいました。

「さ、着替えましょう、オレンジペコ」
「い……嫌で」
「全部このダージリンPに任せなさい。貴女を私の最高傑作にしてあげるから」
「ひぃ……」

そんなせつない作品、誰がなるものですか!

「ま、安心しなさい。どんな悲しい結末になろうと、私だけはお腹を抱えて大爆笑してあげるから」


ルクリリさんのばかぁ!



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