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怪物は守り人足り得るか

「サリ

「サリエリ」
「アマデウスアマデウスアマデウスゥゥゥ……!」
「サ・リ・エ・リ!!」
「……マスター」

 召喚以降姿を見せない彼を探しに来てみれば、シャドウ・ボーダーの隅で慟哭礼装を纏った彼がひとり蹲っていた。

「どうしたの、サリエリ」
「……私はサリエリではない」
「でも元になったのはアントニオ・サリエリって人間なんでしょ。ならサリエリで良いじゃないか」
「そうも単純に行くものでは無いのだ」
「私そういうの素人過ぎてわかんないからさ、サリエリって呼ばせてよ。それにあなたみたいな人はほかにもいたよ?私にとっては今更だって」

 その言葉に、どうやら興味をひかれたのか彼は礼装を解いた。細身のスーツに身を包んだその人の、普段ちらちらと行き場のない恩讐が揺れている赤い目は今はなりを潜めていた。

「ほかにも、私のような反英霊が……?」
「必ずしも反英霊、ってわけじゃなかったよ?例えばエミヤなんかは、“正義の味方”の概念の守護者だかナントカとかで『無銘』とか呼ばれてたりしたし。モデルになった人間の名前とって真名エミヤ」
「……霊長の、守護者……」
「最もサリエリみたくワタシハダレ状態じゃなかったけど。元気にご飯作ってくれてた」
「そ、そうか」
「あー、エミヤママのご飯懐かしい〜……」

 じゅる、と無意識に涎を垂らしていた私に、サリエリは少しだけ哀れみの目を向けた。

「……」
「あっ何その目!!ひもじい子みたいな目で見ないで!!!ねえ!!」

 ……おっといけない。私のことじゃない、サリエリのために話していたのだった。

「ごほん。えっとね、他にはアルターエゴっていうクラスもあってね、その子達は人工サーヴァントだったんだよ」
「人工……!?英霊を、造ったというのか」
「そのあたりは私にもよくわかんないんだ。でも彼女らは彼女らとして元気にやってた」
「そう、か」
「だからねサリエリ、……アヴェンジャーのサリエリ。あなたもそうしてみたらいいと思うんだ」

 気休め。わかってる、けど、傍観するだけは嫌だった。「自分は誰だ」と慟哭する彼に、私のサーヴァントとして現界している間だけでも、ただのサリエリとして居て欲しかった。例えそのカタチが、無辜の怪物なのだとしても。

「私は……死なのだ。死を与えよと、かの男を死せしめたと、そう、私は定義づけられたのだ」
「そうして“灰色の男”、アントニオ・サリエリはサーヴァントとなった。そうだね、わかってるよ、でも……」

 それでも、それでもあなたはサリエリだ。私にとってはサーヴァント、アントニオ・サリエリはあなたなのだ。

「……今だけ。ね、軛……じゃないけど。それが存在意義だと言うんだろうけど。私のサーヴァント、今だけは……私を守ることを意義にしてほしい」

 ──殺すことよりも、守ることの方が幾分か気持ちがいいでしょう?

 その言葉にサリエリは美しいその目を見開いた。そして、迷うように、苦しむように眉根を寄せる。

「お願い」

 手を、出す。その手袋を外した指先に目を落として、もう一度私を見て、それから彼は目を閉じる。





「……全く、難儀な観客も居たものだ」

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