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オンシジュームに手を引かれ

 夕暮れ時、落ちる陽を背にこちらを振り返って呼ぶ声。風に揺らぐその長い金髪が、波打つように光に透けてきらきらと煌めいた。
「花音っ!」
 楽しげに瞳を瞬かせる少女に。どうしたの、こころちゃん、と名前を呼んで返した。黄色より少しばかり薄く見える肌の色。パーツの一つ一つの整った具合が、まるでそういった人形や、ファンタジー世界のイキモノのような浮世離れした雰囲気を醸し出している。けれど。きっと彼女――こころはそんな事気にしていないのだろう。もしかすると、気にした事すら無いかもしれない。だって彼女は、自由だから。
「今、花音は夕陽の方を見ているでしょう? そうすると、目に光が入って、あなたの瞳が夕闇みたく輝いて見えるの!」
 とっても素敵だわ。私、ずっと見ていたいぐらいだもの! 何の衒いも無く告げるこころの瞳の方が、花音には素晴らしいものに見えていたと言うのに。
「え、と……。そんな事ないよ。だって、こころちゃんの方が、ずっと綺麗だし……」
 これは謙遜でも卑屈でも無く、花音の本音だ。元々備え持つ容姿。着物であろうと、ドレスであろうと、決して劣らず、着せられていない着こなし。それに加え、教えれば教えるだけ吸収していく学習力の高さ。迷わずに決断し実行出来る行動力。分け隔てなく他人と関わっていける思いやり。"こころ"と言う抽象的で壮大な名前に恥じることの無い要素を内外問わず持っている彼女に対し、花音は悔しがるでも無く、本当にそう思っていた。
「何を以てして、綺麗って言うのかしら。人によって綺麗だと思うことって違うんだから、人の数だけ綺麗は有ると思うの」
「う、ん……?」
「でも、少なくともあたしにとっては、花音。あなたの瞳がすごく好きなの、あなたが持ってるものだから好きなのよ」
「私の、持ってるもの?」
 そう、持ってるもの! 弾むように目を輝かせて、言葉の熱を上げるこころ。
「あたしの見た事の無いものを見てきた目。あたしと違う、陽の沈んだ空みたいに優しい色。それって、きっとあたしには出せない色だと思うの」
 確かに、こころにはあまり自分の目の色のような寒色系はあまり似合うとは思えない。以前着ていた薔薇のように赤いドレスや、髪の色に近い黄色や橙のような暖かい色の方が、とてもしっくりくる、と花音も頭の中にイメージを巡らせ、心の中で僅かに同意していた。私とは、少し色合いは正反対かもしれない、と感じる。
「だから、"そんな事"なんて言っちゃだめよ。花音にしか出来ないものだって、沢山有るんだから」
「私にしか出来ないこと……?」
「この間のペンギンさんを笑顔にすることだって、きっとあたしだけじゃ出来なかったわ」
 水族館から迷子になったペンギンを、紆余曲折の末無事送り届けることが出来た騒動。あれからこころは人間以外の動物ともコミュニケーションを取ろうとしたが、如何せん物怖じしなさ過ぎる性格が小動物には少し恐怖に映ったらしく、中々懐かれることが無かったらしい。
「最近はね。振り返ると皆が居るの。美咲に、ミッシェルに、はぐみに薫、そして花音。ライブの前や皆で休日に冒険する時、あなたが後ろから追いかけてくれてるって思えるから、前へ進むことが昔よりもずっとずっと楽しいのよ!」
――そうしたら、もっともっと笑顔を皆に届けたくなるの!
 これってすごく素敵な幸せじゃないかしら、と年齢よりも幼い笑顔がこちらへ向けられる。不思議だ。何故だか、こころが言うと本当にそうだと思えてくる。それは洗脳でも刷り込みでもなく、こころ自身が今までの行動で築き上げてきた信頼故のものだ。いつも、暗闇や人の雑踏に紛れて、潰されそうになっていた私の手を引いてくれた人。
「だから。さあ行きましょ、花音! あなたと一緒が、あたし大好きだもの!」
 差し出されたしなやかな手が、遠慮無く花音の手を握り、引っ張る。風を切って、なびく髪も、はためくスカートも気にせず走り出した。あの時、こころと出会わなかったら。元々予定していた通りドラムは止めていただろうし、こうやって過ごす事も、きっと無かった。一人じゃ見つけられない音。今なら見つけられる気がする。

 ねえ、こころちゃん。こころちゃんは女の子だけど、王子様みたいだね。魔法を使える王子様。皆を笑顔にする、素敵な魔法だけ使える王子様。元々王子が格好良いのに、魔法も使えるのは少しズルいと思うけど。こころちゃんなら、どうしてどっちも出来ていたらダメなのかしら、って言いそうだとも思った。あの日、あなたの言葉の魔法を掛けられてここに居るんだよ。勇気の出る掛け声で、一歩踏み出せる私になれたんだよ。
――ありがとう、こころちゃん。私も、こころちゃんが大好きだよ
 音の花が咲く。陽だまりの魔法に染められて、温かさに触れて。花音は、手を引かれるままに、そう小さく呟いた。

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