ジャンル:ロビジュナ お題:静かなお天気雨 制限時間:15分 読者:48 人 文字数:1151字 お気に入り:1人

【ロビ→ジュナ】置いてはいけない

思えば、こんなレイシフト場面は今までにも少なくなかった。
天候は雷雨。視界は不良。足場は崩れやすく、敵は魔獣たち。しかし今回はどうにも運が悪かったと言わざるをえない。まだ実地経験の少ないジャンヌ・オルタ・サンタ・リリィと、ナーサリー・ライムを連れて地に降りたまでは良かった。魔獣たちを陽動して、その弱点の突き方を教えているうちにどんどんと天候が移り変わっていったのだ。
そして激しい雷雨に身を打たれている間に、いつの間にか、自身たちが崖を背にして立っていることに気付いた。私はこの中でも練度が最も高いため、引率役としてマスターに同行を依頼されていた。それはもちろん、私の宝具であれば森を更地にすることも容易く、何かあってもうまくこなすことが可能だと踏んだ上でだろう。
しかし、度重なる襲撃で手負いになってしまったジャンヌ・オルタ・サンタ・リリィが震え、ナーサリー・ライムはうまく調整を行えなかった魔力の放出バランスの不得手により、既に本の形を取って沈黙している。ここで宝具を放っても、いたずらにマスターたちまでをも巻き込むだけだ。
私は、ちら、と豪雨の中にも輝く瞳を見る。銀糸の奥で、空色の瞳が瞬いた。
背後は崖。その下には、大地でも川でも、何かしらは存在する。

「マスター! ご容赦を!」

私の呼応に応えたのは、共に前線を駆けた経験の多いマリー・アントワネットだった。咄嗟に宝具を私用し、マスターと幼い二騎を共にその背へと引き上げる。
瞬間、私は足元の大地に、容赦の無い一矢を放った。

「アルジュナ!?」
「安全な場所でお待ちください!」

足元を崩し、崖の崩落に合わせて地面を蹴る。空中で背をしならせ、きりりと弓を引いた。一つ、二つ。目標は、違えない。
つがえた矢で魔猪を射り、雨粒に叩かれる木々へと足をかける。
徐々に大地が崩れる音も、マスターの声をも遠くなる。マリー・アントワネットならば大丈夫だろう。彼女は防御に特化したサーヴァントであり、私とは長らくのパーティ編成での付き合いでもあるため、私の霊基が破壊された場合でもすぐに察知できるだろう。
独りで屠るには限度がありそうだが、時間稼ぎさえできればいい――そう考え、再び雨に打たれるため飛び出そうとした私の足元から、巨大な猿の形をした影が迫った。咄嗟の反射が遅れた私の真横を、軽い軽いワイヤー音が通過する。
パァン、とこれまた重さの無い音。

「何故、」

振り向いた先に、緑の外套が見える。
フードを上げ、苦々しい顔を隠しもせず。
彼は、私のいる木の枝に難なく降り立つと、私の胸倉を掴んで、たいそう不機嫌そうな声で叫んだ。

「――惚れた相手残して行けっかよ!」

轟け閃光、瞬く春雷。

貴方の言葉は、そうして私を射ったのだ!

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