ジャンル:ゼノブレイド お題:どす黒いセリフ 制限時間:2時間 読者:60 人 文字数:2511字 お気に入り:0人

長い不在は恋を滅ぼす

「ライン」
フィオルンがラインを呼ぶと、ラインは宿舎への道のりへの歩みを止めて、フィオルンを振り返った。
「どうした?」
ラインはフィオルンを視界に入れると、嬉しそうに笑ったが…フィオルンがどこか沈んだような、思い詰めたような表情をしているのがわかると、すぐに顔を曇らせる。
「おい、フィオルン。顔色‥悪くねェか?」
「そうかしら?」
「なんか、調子悪そうに見えるぜ。やっぱりまだ、ホムスの身体に戻ったばっかだからか?」
心配そうに歩み寄ってくるラインに、フィオルンは「うん」と小声で返事をした。
「ねぇ、ライン」
「なんだ?」
「私、半年経ってやっとこの身体に戻ったじゃない?」
「ああ、そうだな。…シュルクも、俺も、スッゲー長く感じて待ってたんだぜ?」
「イチジツセンシュウ」、ってヤツだっけ?
珍しくラインが正しい言葉を使用したが。フィオルンはそのことにあえて触れないまま、ラインへ微笑みかける。

その微笑みは一見、キレイに見えたのに。
ラインにはとても恐ろしいものに感じて…背筋が寒くなった。

それは、幾度となくラインを生命の危機から救った本能からの「警告」だった。

(フィオルンだって大事な友達なのに。…なんで、こんな…)

だがラインは「警告」を、瞬きをしながら「あり得ねェだろ」という小さな呟きとともに自分の中から追い出してしまった。

「その間。私、ずっと見ていたの」
「『見ていた』‥って、あの装置の中にいる間は目を瞑っていたのに?」
「そうなの。不思議よね」
フィオルンはラインへ背を向けると、歩き出した。
するとすぐに重装備の金属が触れ合う独特な音が聞こえ始めて。フィオルンはラインがちゃんと自分の後ろを歩き始めていることがわかった。
「フィオルン?」
「ちょっと、行きたいところがあるの。付き合ってもらえる?」
「あぁ、良いぜ」
フィオルンが一度ラインを振り返ってみると。ラインは特に何も疑問に思っていないのか、普段と変わらない表情をしていた。
「もう夕方だけど、大丈夫?」
「この後は寮に戻るだけだし、俺は構わねぇけど‥」
「私? 大丈夫よ、お兄ちゃんにはもうごはんを作って、置いといてあるから」
「そうか」
再びラインに背を向けると、フィオルンは目的地へ向かって歩き出した。



2時間も歩けば、空には月明かりが浮かんでいた。

「エーテル灯がないのにこんなに明るいのって、なんか不思議だな」
「ええ」
ラインに短く相槌を打つと。ようやく目的地へたどり着いたフィオルンは、ラインを振り返った。
「地形が変わったから、スキップトラベルができなくて…。長く歩かせちゃって、ゴメンね」
「気にしてねぇよ! これぐらいだったら、いつも歩いているし」
目を伏せるフィオルンへ、ラインはニッと口の端をつり上げて爽やかに笑った。
「ラインって、ホントにあきれるほど丈夫なのね」
「『あきれるほど』って! ‥俺、それぐらいしか取り柄がねぇんだから」
「あら、褒めてるのよ?」
「‥あんまり、褒められている気、しねぇんだけど」
他愛のないやりとりだったが、自然と互いに笑顔になってしまう。
それは「大切な幼なじみとの会話なんだから、当然だろ?」と、ラインは答えるだろうが。

(私の場合は、『コレでようやく、何度も想像していた場面を、今ようやく実現することができるから』かな)

表情にはおくびにも出さず、フィオルンは心の中だけで独りごちる。

「それにしてもよくこんなとこ、見つけたな」
「いろいろ探していたの」
「えっ?」

少し早口でフィオルンが言った事を聞き取れなかったため、ラインは少し驚いた顔をしながら聞き返そうとすると。

「ここなら流石のラインでも、落ちたら……戻って来られないわね?」

隣同士、二人並んでコロニー9から大分離れた崖の少し広い部分に立っていたのに。いつの間にかフィオルンはラインの背後にいた。
フィオルンはラインだけが崖っぷちを背にするように、プレッシャーを掛けてにじり寄る。

「フィオルン。俺、今まで気づかなくて。…すまなかったな」

フィオルンがラインに向けているものは、憎悪だった。
ラインは、なぜかとても哀しくなった。

どうして自分は、フィオルンがこうなってしまうまで、気づかなかったのだろう。

月明かりを背にしたラインは、自分の足下へ落ちている短い影を後悔と共に見つめた。

「シュルクが、ね。…ラインじゃないと、ダメなんだって…」

涙が、月明かりを反射する。
ラインはその輝きを、とてもきれいだと思った。

「私、元のホムスの身体に戻ったの。シュルクのためなんだよ?」
「あぁ、知ってるぜ」

涙声のフィオルンから目を逸らさず、ラインはまっすぐ見つめた。

「なのに…なんで、シュルクが好きなのは……」
「‥フィオルン‥」

フィオルンは涙を指で拭うと。ラインを見る。
フィオルンからラインはちょうど逆光で見えづらくて。フィオルンは少し、目を目を細めた。

「…ラインも、シュルクが、好きなんでしょ?」
「ああ。俺もシュルクを、愛してるぜ」

噓偽りのない、ラインらしい告白に。フィオルンの流れる涙が止まった。

「やっぱり、そうだったんだ」
「『やっぱり』って、フィオルン‥知ってたのか?」
「『ずっと見ていた』って、言ったじゃない」

ラインは何か言いたげに何度か口を開けたり閉じたりしていたが…それは言葉にならなかった。

「でも──」
「そうね。二人とも、想いは伝え合っていないわね」
「だって…フィオルンの想いを知っているのに…言えねェよ……」

俯くラインに、フィオルンは苦笑した。

「ラインは友達想いすぎるのよ」
「……」

図星で言い返せないラインの元へ、フィオルンは歩み寄る。
そうして耳元で囁くためにフィオルンが背伸びをすると、ラインは察してフィオルンの口元へ顔を寄せた。

「         」

ラインは驚きに目を見開いたが…すぐに優しく微笑むと。

「フィオルンを、人殺しにはしたくねぇから」

呟くと、後ろへ跳んだ。

同じジャンルの似た条件の即興二次小説


ユーザーアイコン
希望の時計 ※未完
作者:匿名さん ジャンル:ゼノブレイド お題:希望の時計 制限時間:1時間 読者:158 人 文字数:996字 お気に入り:0人
もし、時間を巻き戻すことができたなら。何度夢見たことだろうか。戯れにベッドサイドに置いた時計の針を巻き戻してみても、ーー当然と言えば当然だがーー決して時間は戻っ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:梗乃 ジャンル:ゼノブレイド お題:消えた蕎麦 制限時間:15分 読者:1143 人 文字数:1219字 お気に入り:0人
「……無ぇ」呆けたようなディクソンの声がして、どうしたんだと気にかけてやった。「俺の打った蕎麦がねぇんだ」「…………蕎麦?」蕎麦というとあれか。麺類の。天ぷらな 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:梗乃 ジャンル:ゼノブレイド お題:ちっちゃな絶望 制限時間:15分 読者:1775 人 文字数:1350字 お気に入り:0人
「……あ」「どうしたんだよシュルク」突然、間の抜けた声をあげた親友を見て、ラインは思わず声をかけた。それに呼応して慌ててシュルクは顔をあげ、ラインの目を見ながら 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:梗乃 ジャンル:ゼノブレイド お題:スポーツの百合 制限時間:15分 読者:1785 人 文字数:1222字 お気に入り:0人
「メリア! そっちに行ったわよ!」「ま、任せておけ! ……ていっ!」コロニー9に差し込む日差しは明るい。人々の笑い声はより一層の明るさをもたらし、この平穏な日常 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:梗乃 ジャンル:ゼノブレイド お題:幼い団欒 制限時間:15分 読者:753 人 文字数:966字 お気に入り:0人
幼い頃は、いつだって家族の温もりを感じていたように思う。食卓を囲み、食事を終えればリビングでくつろぎ、他愛のない話をしてそして眠る。朝が来ればまた同じような日々 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:梗乃 ジャンル:ゼノブレイド お題:調和した小説 制限時間:15分 読者:719 人 文字数:1108字 お気に入り:0人
彼女が『面白いから是非読んで』と言って持ってきた一冊の本。どこにでもありふれたようなごくごく普通の大衆小説。僕はその本をぱらぱらと捲りながら、少しだけため息をつ 〈続きを読む〉

青井草の即興 二次小説


ユーザーアイコン
作者:青井草 ジャンル:ゼノブレイド お題:最強の僕 制限時間:30分 読者:49 人 文字数:1198字 お気に入り:0人
シュルク達は、「神様」と呼んでいた存在をついに倒した。「シュルクが神様、か‥」シュルクがアルヴィースに対しての「返答」を迷っていると。突然ラインが自分以外誰もい 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:青井草 ジャンル:ゼノブレイド お題:どす黒いセリフ 制限時間:2時間 読者:60 人 文字数:2511字 お気に入り:0人
「ライン」フィオルンがラインを呼ぶと、ラインは宿舎への道のりへの歩みを止めて、フィオルンを振り返った。「どうした?」ラインはフィオルンを視界に入れると、嬉しそう 〈続きを読む〉