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夢遊病ジュナ1

ひときわ大きなガラス窓の前で降りしきる雪を眺めているアルジュナの横顔は、まるでそこが世界の終わりのように静かだった。




カルデアでは、電力を魔力として代用している。それは周知の事実であったが、実際のところ、力のある英霊を呼ぶことがどれほどの電力を消費するものなのか、はっきりと把握できていなかったように思う。ロビンフッドが召喚された頃も、そこにはまだ、人懐っこく召喚に応えやすい英霊しか居なかった。アンデルセンなどは自身を非戦闘要員と称しつつ、自分のエコさに胸を張っていた。
だから、飛びぬけて魔力を必要とする英霊を喚んだ時、その反動はすさまじかった。

「サーヴァント、アーチャー。アルジュナと申します」

綺麗に礼をした彼が召喚された瞬間、バチンッ! と、非常電源を残して、一気に電気が落ちたのである。ただならぬ騒ぎに、呼ばれた早々で目を丸くするアルジュナに、ドクターはパチンと手を合わせ、叫んだ。

「ごめん! 霊体化してくれるかな!?」

その一言で状況を理解したアルジュナは、はっとした顔になり、すぐさま空気に溶けた。ドクターとダ・ヴィンチが電源の確保に勤しむ中で、マスターはごめんね、ごめんね、とおそらくアルジュナが居る方向に謝っていた。
しかしどうにか電気が復帰し、カルデアの中に灯りが戻ろうとも、アルジュナは姿を現さず、マスターはほとほと困り果てていた。召喚した直後の彼の様子からいって、へそを曲げて出てこないという訳ではなさそうだったが、初対面でいきなり「姿を消せ」と言われては、不快に思うのも無理はない。
なにせ、千分の一の確率で出会えるかどうか、といった英霊だ。持つ能力もずば抜けて高い代わりに、必要とする魔力も多い。今回召喚したアルジュナがアーチャークラスであり、比較的とはいえ、魔力消費量が少ない方に入るために電力復帰も早かったのだ。

マスターとドクターが虚空に必死に説得を続けて、ようやくアルジュナは姿を現した。極寒の地、カルデアにおいて正反対とも感じられる肌の色。深い色の髪。均整の取れた体躯と目を引く目鼻立ち。洗練された所作。それらすべてが、本来、彼が「使い」とされる立場ではないことを示していた。だからといって、英霊として、サーヴァントとして呼び出されれば、やることなど皆同じだ。アルジュナもそれを理解していたのだろう。

「私が姿を現していると、不都合が生じるようです。必要時以外は姿を消していましょう。では」
「待って!」

咄嗟にマスターが、髪の毛を結わいていたリボンを取る。そこについていた鈴が小さく鳴るのを確認してから、アルジュナに押し付けるようにして渡した。

「持ってて、お願い!」

マスターの懇願を受け入れ、アルジュナは鈴を持ったまま霊体化した。チリン、と僅かに残る音が、アルジュナがまだそこに居るのだという現実を実感させる。マスターはそれに小さい安堵を見せ、もう一度、ごめんね、と言った。
この騒ぎを、ロビンフッドは召喚室の扉からじっと見ていた。今日のマスターの護衛役であったから、付き添いで来ただけだったのだが。アルジュナと共に消えた鈴が、彼の影を踏むように、微かに鳴る。アルジュナはその音色を、どんな風に受け取ったのだろうか。

電力のリソースを再分配すべく計算に追われるスタッフたちに頭を下げながら、マスターは自室へと戻っていく。その途中で、ここがアルジュナの部屋だよ、と紹介されたのはロビンフッドの隣室だった。特に英霊の中でもアーチャーはとびぬけて数が少ないため、同じクラスで固めてしまうとどうしてもこうなるのだ。ロビンフッドは虚空とおぼしき場所に向かって「よろしくお願いしますよ」と言ったが、鈴の音が僅かに返ってくるだけだった。音声出力にも魔力および電力は消費されるのだろう。
マスターが今度こそ自室へ送り届けた後、ロビンフッドも戻って自室のドアを開けた。鈴の音は、どこからも聞こえない。慣れ親しんだ、静かな夜だった。
一夜、二夜。
そうして深まる夜ごとに、アルジュナの気配は薄れていくように思えた。

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