ジャンル:イナズマイレブンアレスの天秤 お題:限界を超えた野球 制限時間:2時間 読者:56 人 文字数:1461字 お気に入り:0人

応援試合

「運動できるんなら野球でもできるんだろ?」
「サッカーと野球はぜんぜん違うだろ」
 むっとして言い返したが、目の前の男はヘラヘラした顔で「そこをなんとか!」と食い下がってくる。ろくに名前も覚えてないクラスメートの、「頼む!」と大げさに手を合わせてくる動作がむかつく。一体、何が楽しくて得意分野以外のスポーツを手助けしないといけないのか。
「お前、足速いんだろ? 明日人から聞いたぜ」
 気安く幼馴染の名前を呼ぶところにもイラっとくる。とにかくやらないから、と短く告げて自席を立つが、クラスメートはまったく諦める様子もなく。
「今度の日曜日! 10時から河川敷で尾刈斗中との試合! 待ってるからな!」
 返事の代わりに教室のドアを勢いよく閉めて、雄一郎は部室へと足を向けた。
 野球部の人数が足りないから助っ人として参加してほしい。クラスメートの話を要約すると、そんな感じだ。ふざけるなと思う。田舎島出身はおおらかで人がいいのだろう、人の頼みは断れないのだろうと言外に滲ませてきた不遜な態度を思い出して腹が立った。
「FFに向けた練習で忙しいのに、手伝ってる暇もクソもあるか」
 独り言を呟いて、廊下の窓からグラウンドを見下ろす。貴重な練習場を占有できるだけの力も学校からの支援もあるだろうに、なんでわざわざ“田舎島”の人間に助けを求めるというのだろう。
「雄一郎!」
 聞きなれた声がして、教室から明日人が顔を出す。水分の多い笑顔にいくらか癒されたものの、腹のそこにわだかまった苛立ちはしばらく収まりそうになかった。
「もう部室いくのか? おれも一緒に行くよ」
「ああ」
「……なんか、疲れてる?」
 そっと伺ってくる明日人に、先ほどまでの話をかいつまんで伝える。人に話すといくらか気分がすっきりして、まあアイツも転校生と話すきっかけがほしいのかな、と思える程度までには落ち着いた。
「そっか、野球の助っ人かぁ。昔はおじさん達と一緒にやったよな」
「ああ、懐かしいな。草野球の、下は8歳上は81歳までのチーム」
 応えると、明日人は「そう!」と嬉しそうに笑った。
 東京にいると、ふとした瞬間に島での思い出話で盛り上がることがある。それは楽しくもあったが、島の外にいるのだということを自覚させられて、すこしだけ寂しい気持ちになる。
「雄一郎が嫌じゃないなら、出ればいいよ」
「無理。サッカーの練習でそれどころじゃないだろ」
「それもそうかぁ……」
 残念そうな口調で納得する明日人が意外で、思わず隣の幼馴染を見やる。野球がしたいのかと問えば、ものすごい勢いで否定された。
「明日人みたいなサッカー好きは、他のスポーツには興味ないんだって思ってた」
「サッカーが一番好きなのは本当だよ」
 でもさ、と明日人は言葉を続ける。
「おれ達、島でもこっちでも同じチームだから、いつも一緒に戦うだろ? だから、仲間が出ている試合を応援するっていうのを一回やってみたかったんだ」
 確かに、と雄一郎は頷く。練習でチームに分かれて戦うことはあるが、明日人も自分もいつだってプレーをする側で、お互いを応援したことはなかった。
「あと、雄一郎のユニフォーム姿も見たいし、塁に走っていく雄一郎も見てみたい!」
「勝手にはしゃぐなよ」
「試合はいつ? おれ絶対見に行くから!」
 すでに明日人の中では自分が試合に出ることが決まっているらしい。まだ助っ人をすると決めたわけじゃないから、と明日人をなだめながらも、まんざらでもない自分がいた。


 

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