ジャンル:暗殺教室 烏イリ お題:12月の私 制限時間:30分 読者:50 人 文字数:1273字 お気に入り:0人

師走の頃に

この季節を「師走」と呼ぶのだと教えてくれたのはカラスマだ。お坊さんが忙しく駆け回る季節だからだとか、普段は落ち着いている先生という存在ですら忙しく走り回る季節だからとか諸説あるけど、つまりはそれぐらい忙しいっていうことなんだ、と。

それを聞いたのは、冬休みに入ってガキどもがいない、がらんとしたE組校舎。過去の自分について告白したあのタコはおらず、その話を聞いてしまい、迷っているガキどももすっかり言葉をなくして、訓練や暗殺の相談に訪れることもない。あたしとカラスマだけが取り残されたようにそこにいる12月のE組校舎で、あたしとカラスマは自分たちのことも、E組のことも、あのタコのことについても関係ない、単なる同僚どうしの雑談みたいなものをぽつぽつと繰り返していた。
普段は無駄口を叩く気配なんかないカラスマにとっても、あの告白には衝撃を受けたのだろう。あたしも、カラスマも、沈黙が怖かったのかどうでもいい話ばかりした。

ガキどもの話をすると、いつも「心配だ」という感情ばかりが堂々巡りを繰り返し。
暗殺の話は、特に大きな動きがなかったからすることは出来ず。
タコの話は、なんだか怖くてお互いに切り出せなくて。
その時点では不透明でしかなかった未来の話は、一切することができなかった。

まさか、その次の12月にこんな日々が待ち構えてることなんか、あの時のあたしは一切知ることもなく。


地球は爆発せず、無事に暗殺ミッションは完了し、ガキどもはみんな希望の進路へと歩みを進め。
てっきり暗殺者としての日常に戻るかと思っていたあたしは、カラスマの家に同棲して、同僚というポジションと、恋人というポジションを得てしまった。

人を殺さなくてもいい、自分の積み上げてきたスキルが活かせる職場で、あたしは目まぐるしく日々を過ごしている。
時々ガキどもに会って懐かしい思い出話をしたり、月を見上げてはあのタコに想いを馳せたりするような日々を。

そして——去年のあたしからはまったく想像もつかないことなのだけれど、今年の12月のあたしは、去年とはまったく違う、幸せな悩みごとで頭を悩ませている。

「ねー。今やってるこの計画って、実行いつだっけ?」
「今月の……22日だったか」
「ってことは、クリスマスの頃には片付いてるのよね?」
「安心はできんぞ。計画なんか簡単にズレが生じるものだし、この計画が終わったからといってもまだ別の仕事が山積みだからな」
「もー! 日本にはクリスマス休暇とかないわけ!? クリスマスを愛する人と一緒に過ごすってゆーイベントをまっとうさせなさいよ!」
「残念ながら日本は神道と仏教の国だからな、キリスト教由来のイベントは期待するな」
「カラスマとのクリスマスディナー! 高級ホテルでラブラブな一夜! プレゼントはあ・た・し!」
「そのシュプレヒコールやめろっ」



哀しいかな、年末に忙しい盛りを迎える公務員。
イリーナが夢見るような「恋人たちのクリスマス(はぁと)」の実行は、なかなかに遠い未来の話になりそうだった。

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