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とかげの窓 ※未完

大倶利伽羅は書庫にいる。
それは周知の事実で、姿が見えなければそこにいるだろうと本丸の皆が知っている。
本丸の書庫はそこだけが洋風の造りで、陽の光が不必要に射し込まないようにできている。蔵書が痛むのを防ぐためだ。
たとえば気に入りの絵本を破いてしまったとき。
たとえば借りた漫画にヨダレを垂らしてしまったとき。
たとえば繰り返し繰り返し読んだ図鑑がバラバラにほどけてしまったとき。
たとえば知りたい内容がどんな本に載っているかわからないとき。
本丸のみなは書庫に行く。
書庫の入口から覗きこんで姿が見えるギリギリのところに、読書灯を頼りに何かしらの書籍のページを繰る大倶利伽羅が大抵いるからだ。そこで邪魔をしてはいけない。すぐさま声をかけてはいけない。彼の手が止まり、栞を挟むまでの数秒から数十秒、静かに待つことが重要だ。待てば必ず、彼から訊いてくれる。
「どうした」
訊かれたならば答えれば良い。
「主君にいただいた大切な本でしたのに……」
「頼む! これ不動から借りたやつなんだよ!」
「いやーさすがに酷使しすぎたか」
「先日主がおっしゃっていた、江戸の話なんだが」
訊かれたら各々の伝え方で伝えれば良い。さすれば翌日か翌々日には、希望の本が手元に届く。壊れた本は修理され、知識を求めていた者は必要な情報をを得ることができる。
「あの声で蜥蜴食らうか時鳥。トカゲではなく龍であるうえに、食う方だがね」
そう引用して揶揄したのは、大倶利伽羅との仲が微妙だった時期の歌仙兼定であったか。
しかしその歌仙をもってしても、"書庫にいる大倶利伽羅"を信頼している。
そういうことなのだ。

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