ジャンル:あるじとしつじ お題:君と虫 制限時間:1時間 読者:32 人 文字数:2306字 お気に入り:1人

クラルのお誕生日大作戦

君と虫

クラルのお誕生日大作戦!


「ひぃぇ、虫さんいっぱい…」

テレビの前で息を飲むあるじをチラリと見やり、小さくため息をつく。
怖いものを見て夢見が悪くならないと良いが。奇天烈な事件や事故、あるいは海外の番組を紹介するテレビ番組では、庭に百足が大量発生してしまった男の話をしていた。

「…ビオラ様は虫が苦手なのですか?」

「苦手…かなぁ?そういうわけじゃないけど…いい虫さんもいるし」

「いい虫?今のところ出会ったことはありませんが」

「そうかなぁ…確かに刺す虫とかはこわいけど」

まぁ、画面の中のショッキングな映像は私もこわいです…。

「あまり怖いものを観ると眠れなくなりますよ」

「えっと、もうちょっとだけ…」

するとまたコーナーが切り替わり、海外のフラッシュモブを紹介する映像が流れ始めた。
結婚式、プロポーズ、誕生日…様々なサプライズが繰り広げられていた。

「すごいね…!」

これにはビオラ様も目をきらめかせながら観ていた。

しかし、不意に目線を落としてこうつぶやいた。

「でも、サプライズってこわいね。誕生日とか、素敵な日にしたいけど、サプライズを期待しちゃうのってこわいな。何もないってわかってるけど、ストンと心が落ちてしまう気持ちになっちゃう」

ああ、寂しげなその瞼に何か私にもできることがあればーーー。


そう思ったのがひと月前の出来事である。


「完璧ですね…」

パリッとノリのきいたテーブルクロス、その上にはビオラ様が好きな食べ物、傍には綺麗な花とケーキ。
BGMにと借りた音楽は、明るい雰囲気が出て良い感じだ。
これであとは、帰ってきたビオラ様をこの部屋にお連れしてクラッカーを鳴らすだけだ。
このひと月、サプライズパーティーについて勉強してきてよかった。

近しい人を驚かせるにはまず騙すところから始めなければならない。
本当は今日朝一番に「おめでとうございます」と声を掛けたかったのですが、そこを堪え、協力者であるハイン様に遊びに連れ出されるまでいつもと変わらない風を装ったのだ。

こちらをチラリと気にするビオラ様に心が痛みましたが、ここは心を鬼にしてこのサプライズを成功させるのです!


ピンポーン。


おや、いよいよビオラ様が戻られたようだ。
いそいそとクラッカーを後ろのポケットに隠して迎える準備をする。


玄関のドアを開けるとビオラ様とハイン様、それから黒い執事が飛び込んできた。

「ただいまクラル」

おかえりなさいませ、そう言おうと思った瞬間固まる。ビオラ様が服の上から掛けているタスキ、『本日の主役!!』が目に入ったからだ。思わず黄色いハムスターを見た。サプライズの情緒をわかっていない!!!

それどころか2人揃って部屋に入ろうとしているではないか。

「お待ちください。なぜあなた方が家の中まで入るんですか?私が頼んだのはビオラ様を連れ出すところまでですよ?」

「誕生日会するんだろ!大丈夫!プレゼントはまだ渡してないから」

小声でひそひそとやり取りしたものの、黒い執事が抱えている大きなラッピングされた箱を見てまた頭が痛くなる。まさかそれを持ったままビオラ様を連れ出していたのか…

フラフラになりながら仕方なく案内しようとした時だった。


ピンポーン。

「よっ」

「オーッス」

イバラくん!ファントムさん!嬉しそうなあるじの言葉に何も言えなくなりながら、招かれざる客を再び招き入れた。

「まったくあなた達は、せめて来るなら連絡してくださいよ」

「ご存知かと思ってました」

「大丈夫!俺たち食いモン持ってきたからよ」

そういう問題じゃなー。


ピンポーン。


またか!?今度は誰だ!?


「…来t「「来たよーん」」

「被るな!」


「そ、ソレイユ君まで…!」

ああ、やれやれ。玄関が手狭になったところでようやく、移動することになった。

部屋に入った瞬間にクラッカーの音が鳴り響く。私のではない。ビオラ様々をエスコートするのに気を取られた。
後ろから3人が笑いながら紐を持っている。
「「「お誕生日おめでとうーーー!」」」

先を越されたことに怒りを通り越して脱力してしまう。

「…お誕生日おめでとうございます」

結局小さく囁くような声になってしまった。

さぁ、願い事をしてロウソクを吹き消して!はい!これプレゼントー!すごーい!これ怪獣ネコのぬいぐるみだー!ごはんおいしいね!

ワイワイと楽しそうにしているあるじを見て、サプライズらしいサプライズはうまくいかなかったが、ビオラ様が楽しそうでよかった。

暖かい気持ちで空いた皿を片付ける。

「く、クラル!」

パン!と小さくクラッカーが鳴る。私が後ろのポケットに入れておいたはずのクラッカーだ。

自分で引いておきながらびくびくしているビオラ様がこう言った。

「お誕生日おめでとうクラル…今日はステキな一日をありがとう」

それからこれ、と小さな箱を渡される。
開けると可愛らしいてんとう虫のカフスが入っていた。


「この前クラル、いい虫に会ったことがないって言ってたでしょ?てんとう虫はね、太陽の使いで幸せを運んでくれるいい虫なんだよ」

クラルに幸せが舞い込みますように。最後にそう言ってはにかんむビオラ様。

「ビオラ様みたいに赤くて可愛らしいですね…大切にします。ありがとうございます。」

まさかの大きなサプライズに、誕生日はなんて素敵なんだろうとしみじみ感じた。
ビオラ様も同じ気持ちだと嬉しいですね。

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