ジャンル:アイ★チュウ お題:私の映画館 制限時間:1時間 読者:38 人 文字数:1090字 お気に入り:0人

共有すること

 朝陽には行きつけの映画館があった。
 学園から近く、帰りがけに寄って映画を見ることがたまにある。
 演じた時をきっかけに通い始めたのだが、学ぶべきところが多くあると感じていた。演者の表情、動作、ひとつひとつが「魅せる」ことに繋がっている。前までとは違った見方だった。
 それに映画館には不思議な魔法があると思った。暗闇の中、スクリーンが映し出す物語に包まれ、一体化する。
 この感覚を誰かと共有することができたらいいのに。一人で物語について議論していても、幅が生まれないような気がしていた。だが誰かを誘おうとしても寸前で言葉を止めてしまう。悪い癖だ、と少し落ち込んでしまう。
 でも今日こそは誘ってみせるんだ。今上映されている映画がとても好きなので、紹介したい。みんなの感想を聞いてみたい。決意を胸に、口を開く。
「あの」
 楽器を片付ける手を止めて、みんなが振り返った。緊張が胸を締めつけるが、ここでやめてしまえば、またいつもと同じだ。
「おすすめの映画がある、のですが……一緒に、行きませんか」
 語尾が消え入りそうになる。でも、ちゃんと言えた。見渡すと、みんなは嬉しそうに笑った。
「ぜひ行ってみたいね」
 ノアの言葉に続けて、口々に賛成する。
「いこーぜ! みんなで!」
「映画音楽には学ぶべきところがある」
「朝陽のおすすめなら、きっと面白いんだろうな」
 それを聞いて朝陽は目を輝かせた。自分の誘う言葉に応じてくれるというのは、幸福なことだ。
 片付けを済ませて映画館へ向かう。最近はシェアハウスにまっすぐ帰ることが多かったから、寄り道をするのは久しぶりな気持ちがした。
 朝陽のおすすめの映画はアクションシーンが多く、主人公が何度も訪れる困難に立ち向かっていくストーリーだった。いつもは一人で物語の中に入っていくが、今日は違う。気の知れた仲間と観ることは新鮮で、高揚感がずっと大きかった。
 映画を終えて暗闇から脱出した彼らは、映画の前より生き生きとした表情をしていた。
「すごかった! 主人公かっこよすぎ!」
「主人公もよかったが、ヒロインも毅然としていて」
「そうそう、ヒロインのおねーさん綺麗だったよな!」
「最後まで喋らせろ!」
「ヒロインが主人公の心の支えになっているのも良かったなあ」
「同感だよ。関係性がうまく描かれていたね」
 彼らの声を聞きながら、朝陽は目を細めた。やっぱり、この映画を紹介してよかった。帰りながら、もっと話をしよう。お気に入りのシーンはどこだったか聞いてみたい。結末について話したい。そんな思いを胸に、朝陽も話しだすのだった。

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