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将棋 ※未完

長考に入った時、周囲に気が回らなくなるのは当然だった。しかし、今日は勝負を始める前に日本酒を二合ほど飲んでいた。そんな状態で勝負をしようなどと思わないが、やるぞ、と言い出した赤司は、いくらこちらが拒否しても、いいからやるんだ、と子どものように言い張った。酔いが深いからそんなわがままを言うのか、それともただ単に甘えてそう言っているのか。勝負をするなら、負けるのは嫌だ。そして赤司はそんな状態だというのに、やはり勝つつもりでいるのだろう。こちらも負けるつもりはない。だから、やるなら、素面の時がいい。それならば何一つ、勝負するにあたって、後悔することはない。
そんなわがままで、こどもじみた赤司を目にするのは、おそらくここの家で、自分だけのことだった。それはわかっている。わかっているからこそ、そんなわがままを受け入れて、勝負を受け入れてしまう。
終わったか?
赤司が縁側へ戻ってきたのか、声を掛けてきた。
(戻ってきた?
長考に入った自分を置いたまま、赤司が席を外すのはしょっちゅうあった。茶を準備していたり、家に遊びに来る猫と戯れていたり、洗濯物を取り込んでいる時もあった。長考が終わる前に、必ず戻ってくる。丸でこちらの考えが読めているかのようだった。
まだだ
もういいだろう?
まだだ
考えが及ばないわけではない。まだ次の手はあった。その次の手も、その次も。しかし、あと何十手か先で、その先が見えなくなる場所があった。赤司がミスをすれば、その先はあった。だが、赤司がミスをする確率は低い。
(酒は二合
疲労度によって、酔いが回る速さは変わる。赤司はこのところ働き詰めだったらしい。玄関まで出迎えると、こちらの顔を見て、はぁっと大きなため息をついた。
何なのだよ、それは
ただいま
そう言って赤司は靴を脱いだ。玄関を上がると、額をこちらの肩に乗せ、体重をかけてきた。そうして、疲れた、と呟いた。いったい何日働き詰めだったのだろう。
熱燗を用意したのは、ねぎらってやろうと思ったからだ。


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