ジャンル:暗殺教室 烏イリ お題:群馬の囚人 制限時間:30分 読者:107 人 文字数:1236字 お気に入り:0人

また、日は昇る

「——これで、本当に終わったのかしらね」
「さあな」
元はと言えばあの超生物の暗殺計画に端を発した、今回の鷹岡——黒幕である組織は「被験者T」と呼んでいたらしいが——彼の超生物化と、それに伴う暴走の阻止。烏間らを筆頭とした超国家的プロジェクトのメンバーと、あと極秘裏に参加していた椚ヶ丘中学校の元3年E組の面々によってめでたく彼らの目論見は阻止された。
鷹岡は再び捕縛され、おそらくはもう二度と「普通の生活」を送ることができないような立場に。黒幕として暗躍していた組織はとりあえずの資金源が潰され、メンバーは散り散りに。もし復活するとしても、気前のいいスポンサーを見つけない限りは相当の時間を要することだろう。目覚ましい活躍を見せた防衛省・統合情報部特別海外調査室は組織内で大きな発言権を得ることになり、「烏間伝説」はその妻の活躍も合わせて、尾ひれが一部ついた状態で——しかし一部は尾ひれかと思いきや本当のことが、まことしやかに囁かれることだろう。

「事実、技術としてあの超生物のデータは存在してしまっている。あの『死神』のような強靭な知力体力がないことには難しいとされていた超生物化も、今回鷹岡が達成してしまったことによって証明されてしまった。……『狂人』ならば、あの地獄のような超生物化の苦しみをやり過ごすことができるのだと」
最終決戦が行われた場所から、ようやっと脱出できた烏間は、さすがに疲れた表情を浮かべながらも、自らの妻の独り言のようなつぶやきに答えてみせる。悪路でガタガタと揺れる車の中、ボロボロな烏間夫妻はひとつの毛布にくるまって、ぽつりぽつりと話を続けていた。
「……お前も、いつだか言っていたろう。この世で一番強い殺意は、愛を巡って産まれたものであると」
「……そう、ね。鷹岡はその点で言うと、その強く歪んだ殺意を、独房でひたすら磨き続けていたのかもしれない」
「……殺してやった方が、ある意味慈悲だったのかもしれないな」
「そうかもしれない」
毛布の中でゆるく握っていた手を、イリーナはきゅ、と改めて握り返した。
「……でも、あたしは、あんたが“人殺し”にならなくて、良かった」
「イリーナ……」

がくん、と大きく車が揺れる。烏間の方に倒れ込んできたイリーナを支えてやると、イリーナはそのまま烏間の体にもたれかかった。

「死ぬことが償いになるとは限らない。罪に対する罰の重さが、死で贖えるものばかりだとも限らない。……あたしに言えることなのかどうかは、わからないけど」
「イリーナ」

少し押し黙ったあと、烏間はイリーナの肩をぐいっと引き寄せた。
「……またあいつが暴走するようなことがあったら——その時はまた、俺たちが止めればいい話、か」
「ええ、きっと。……今度はもっと、うまくやってみせるわ」
「……そうだな」

揺れに身を任せているうちに、次第にふたりのまぶたもゆっくりと下がってくる。
すぐに毛布の塊から、静かな寝息がこぼれはじめた。

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