ジャンル:バンドリ!ガールズバンドパーティー! お題:フハハハハ!それは昼食 制限時間:1時間 読者:27 人 文字数:2273字 お気に入り:0人

Afterglowと夜明けの歌 ※未完

 卒業式の日、野外ステージでの卒業ライブを終えて。蘭以外の4人が散々泣いた後のこと。段取りから当日のPAまでお膳立てをしてもらったんだから、せめて撤収だけは手伝おうとまりなさんに声をかける。
 「あの、まりなさん。あたしたちも片付けを…」
 「いいっていいって!今日は巴ちゃんたちの大事な日なんだから、私達に任せて」
 「でも…」
 申し訳ない、という表情でつぐみが俯く。
 「つぐみちゃん、これまで生徒会のみんなの為にいっぱい頑張ってくれたでしょ?そのお返しでもあるんだから」
 目を細めながら、まりなさんは言う。
 「それに」
 「それに?」
 「もう片付けるもの、無いんだよねー」
 「え、そうなんですか?!」
 ひまりが驚きの声をあげる。
 「CiRCLEのスタッフだけじゃなくて生徒会のみんなも手伝ってくれたから、すっごく早く終わったよ。後は機材持って帰るだけ」
 「すげー…」
 ぽかんとした表情で巴が言う。
 「ふふ、どういたしまして。私はこのまま帰るけど、みんなはこれから打ち上げ?」
 「そうですね。何も決めてないですけど」
 蘭がさらりと答える。輝くような笑顔と、迸るようなエネルギーを放っていたライブ中の様子とは打って変わって、すっかり落ち着いている。


 「あんまり遅くならないようにね。今日はお疲れ様」
 言って、まりなさんが2tトラックの助手席に乗り込む。
 「ありがとうございました!」
 巴を中心にして横並びに立つ5人全員で、お礼を言い頭を下げる。ちょっとして、トラックはゆっくりと発進していった。
 「……さて、これからどうしますかねー」
 ぐっと背伸びをして、わたし青葉モカが疑問を宙に放った瞬間。ぐう、とお腹が音を立てた。そのタイミングの良さに、5人の間で小さな笑いが起こった。
 「…とりあえず、飯にするか!」
 くつくつと笑いながら、巴が威勢よく言った。

 いつものファミレス。いつも通り、他愛のない話。
 「あたしはー、このハンバーグとパンのセットに単品でガーリックトースト」
 「あれ、モカちゃんってご飯の時のパンは味がないのがいいって、いつも言ってなかったっけ?」
 右隣に座ったつぐみが、メニューを覗き込みながら問いかけてくる。
 「ふっふっふ、それはお昼ご飯であって、晩御飯は味のついたパンがいいのだよ~」
 「え、そうなの?」
 「…それ、今考えたでしょ」
 思い付きで言った説明に、左隣に座る蘭が突っ込みを入れる。
 「あ、バレた?」
 そんな、いつも通りのやりとり。
 「うう~~~ん…」
 「ひまり、どうしたの?」
 「こうしてみんなでファミレス寄るのも最後なのかなって思うと、じーんときちゃって…」
 「はは、ひまりは大袈裟だな」
 「外国に行くわけじゃないし、またいつでも会えるよ」
 蘭がひまりの眼を真っ直ぐに見て、言う。
 「ら、蘭~~~!」


 自分達と同じような、制服姿の高校生がファミレスから一通りいなくなるのに合わせて店を出た私達5人は、ただ黙り込んでいた。帰らないといけない、だけど。
 「帰りたく、ないよ…」
 ひまりがぽろりと零したのは、みんなが抱えているであろう気持ち。そろそろ補導も始まるだろうし、いつまでも店の前に溜まっているわけにもいかない。やり場のない気持ちを抱えたまま、立ち尽くしている。そんな沈黙を破ったのは、つぐみだった。
 「わ、お父さんからだ…」
 手に持ったスマートフォンを見るその表情は、僅かに唇を噛み締めているように見える。固唾を飲んで見守る4人。猶予時間は、たぶんそんなに長くない。ふう、とつぐみがひとつ息をつく。
「---えいっ!」
 押したのは、端末の右上にある電源ボタン。ぐっと力を入れて、暫く長押し。つまり---。『え』とも、『あ』ともつかない声が4人から漏れる。
 「つ、つぐ…!」
 「おー、つぐがグレた」
 「…ツグってる、じゃないんだ」
 「マジかー…つぐってさ、妙なところで思い切りいいよな」
 「そりゃ、Afterglowの発起人だしねえ」
 「…つぐみ」
 スマートフォンを持った右手をだらりと垂らしたままのつぐみに、蘭が声をかける。
 「ど、どうしよ」
 声をかけられたつぐみは慌てた様子で、蘭の顔を見る。
 「何も考えてなかったのかよっ」
 巴の軽妙な突っ込みが可笑しくて、思わず笑ってしまう。
 「きょ、今日くらい大丈夫だよ!」
 「…珍しく自信満々だね」
 蘭が微笑みながら言って、ちょっと後。誰が言うでもなく、4人とも手持ちのスマートフォンをつぐみと同じようにした。


 結局、その後のことはよく覚えていない。あてもなく歩いて、ただ歩いて。何気ない会話を交わして、時々目頭が熱くなって。たまたまたどり着いた公園。東屋のテーブルにみんなで腰を下ろした。
 「…今、何時なんだろ」
 「さーねー」
 誰も腕時計をしていない以上、スマートフォンが無いと時間の確かめようがない。疲労と眠気がピークに達したのか、散発的な会話が生じては沈黙が5人の間に満ちる。
 「お」
 ふと、巴が何かに気付いたような声を上げる。
 「夜明けだ」
 巴は立ち上がって、屋根の下から出てそのまま空を眺める。その視線の先、さっきまで真っ暗だった空の下端が白み始めているのに気付く。
 私達5人は黙って横並びになって、ただ空を眺めていた。
 「…帰るか」
 意を決したように呟く巴の眼の端に光る涙が、朝焼けに反射して眩しかった。

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