ジャンル:Fate/GrandOrder お題:愛、それは挫折 制限時間:30分 読者:76 人 文字数:1366字 お気に入り:0人
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天草とマスターの共通点

 誰かを愛してしまうということが、どれほど自分を苦しめることかを彼女は知っている。
傍にいてくれる人たちを「仲間」と呼び、信頼し、頼り、大事に思うこと。その一線を越えてしまえば、あとは苦しみしかないことを、彼女は知っているのだ。だから必死に心の中で繰り返す。何度も何度も、反復しては自分の中に刻み込む。
 誰かを愛してしまったら、きっと一番大事な瞬間に、前に進むことが出来なくなってしまうと。
「――つまりそれは、個を愛することが己を最大限に苦しめることとなる…ということですか?」
 ゆっくりとテーブルに飲んでいたお茶を置いて、天草は目の前で複雑そうな顔をしている己のマスターへと尋ねた。
洗練されたその動きは、ゆったりとしてはいるが隙はなく、けれど一見無防備に見えるものだ。流石は天草だ、などと他人事のように考えてから、彼女は天草の言葉に頷いた。
「みんなことは大好きなんだ。でも、もしもそれが誰か一人になったら……わたしは多分、苦しくて、堪えられない」
「そもそも、何故その好きだという対象を一人にすることでマスターが苦しむことになるのですか? 貴女は確かにマスターですが、一般人とほぼ差異のない人だ。普通の少女のごとく、誰か一人を愛してもいいのでは」
「あはは、そんなの無理だって」
 天草だってちゃんとわかってるでしょ。そう言ってどこか、遠くを見つめるようにして彼女は手元にあるお茶を見つめた。
 何もかもが終わったあと、彼女はマスターではなくなる。それは確実だ。そして、彼女が「愛すまい」としている「誰か」はそんな彼女がマスターとして召喚した英霊の一人。そう。つまり英霊である以上、相手は未来を進む生者ではなく――過去を映し取った仮初めの命を持った死者なのだ。
「わたしには何の力もないし、出来ることなんてたかが知れてる。それでも、わたしじゃなきゃ出来ないことがある。生きてる限り、生きていける限り、わたしはずっと前に歩いて行かなくちゃ」
「世界のため、ですか」
「天草だって人類のために前に進み続けてるでしょ。君にとっては、待つことだって進むための準備だったんだから」
 天草は微笑んだ。否定はしない。出来るわけもない。その通りなのだ。
 天草はすでに死んでいる。彼女とは違って、もう未来へは進めない死者だ。だけど彼の全ては死んでから始まった。だから終わらせるために、前に進み続けている。その歩みを止められる日が来るように、歩き続けている。
「ははは、そう言われてしまうと返す言葉がありません。確かに私も、マスターと同じです。個を愛することは出来ません。人類という種を愛するために」
「ほらね。やっぱりだ」
「おや、何がですか?」
 彼女は少し呆れながらも、予想通りだったことに少しだけ嬉しそうな声をこぼした。
「誰か一人を愛したら、苦しいだけだよ。わたしも、天草も。進み続けるその目指すものを、失うことになるんだ」
 だから天草に話そうと思ったと語りながら、彼女は目を細める。天草はその視線に、少しだけ驚いてから「ああ、なるほど」と頷いた。

 彼女も天草も、誰か一人を愛すること――それは、それ以外の全てを挫折することに等しいのだ。

 だから出来ない。彼女も彼も、お互いを愛することがどうしたって、出来ないのだ。

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