ジャンル:東方Project お題:混沌の作家デビュー 必須要素:手帳 制限時間:30分 読者:65 人 文字数:1436字 お気に入り:0人
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映姫さまはミステリーがお好き。 ※未完





 白黒ハッキリ分ける閻魔様――。

 そう、彼女は呼ばれていた。自らの持つ能力とその生真面目極まりない性格上、果たしてこの世界にこいつ以上に閻魔らしい人物などいるのか、と。巷の妖怪たちの間ではそうまことしやかに囁かれている少女がいた。事実として彼女は、幻想郷区域を管轄する閻魔様として実在していた。人妖たちに等しく罰を与える審判役として、君臨している。
 すなわち噂ではなく、その逆。嘘偽りのない、誰しもが認める事実として。

 四季映姫・ヤマザナドゥは、正真正銘の閻魔様なのだ。
 ところで噂とは、時としては彼女の名を幻想郷中に知らしめる有効な手段であったのだが、それは噂を扱う上での単純なメリット――すなわち、表面的な利点に過ぎない。その内面に潜むデメリットに、彼女は気が付いていなかった。
 デメリットもまた、単純明快。 
 

「なあお前おい、知ってるかよ? あの堅苦しくて気難しい閻魔様が、それと兼業で作家もやってるんだってよ!」

 
 ――こんな根も葉もない、人里の童子が考えたようなくだらない噂話でさえも、先の閻魔様事情と同様にポンポン勝手に広まっていってしまうのである。
 作家を始めた覚えなど。もっと言ってしまえば、そういった大衆文学や物書きの文章そのものにすら、映姫は触れたことが無いというのに。
 






 

 あなたはどんなジャンルが好きか、と問われれば。
 きっと自分は探偵ものやミステリーものが、特に性に合っているのだろうなと、映姫は思う。持ち得ている能力もそうだが、そもそも映姫の性格として、白黒はっきりつけなければ気が済まないのだ。読み進める先にはっきりとした結末が、つまるところ犯人の正体やミステリーの謎の仕掛けなど、答えのある話でなければ、映姫はとてもではないが好きにはなれない。

 敢えて答えを出さずに、読者に考えさせる文章。
 伸ばしに伸ばした結果、けれど犯人は見つからないまま、迷宮入りとなる文章。
 筆者からの問いを投げかけられる文章。

 どれも映姫は好みではない。なんなら趣味趣向が合わない。
 曖昧な考えや推論でそういうものを書くんじゃないと筆者に説教をかましてやりたくなって、体がむずむずしてくるのだ。

 だから映姫は、自著に探偵ものを選んだ。

「ううむ......こっちにした方が筋が通っていますかね.......?」

 今まで閻魔になるための修行しかしてこなかったのと、映姫自身あまり興味無かったが故触れてこなかったこともあるだろう。まさかここまで文章を書くのが難しかったとは、と映姫は感服していた。物書きという連中は意外と凄かったのだな、と。
 
 噂話が広まってから、もうすぐに三か月が過ぎようとしている。具体的な数字に表せば、八十日になろうというところか。人の噂も七十五日ということわざがあったが当然それは間違っていて、映姫が物書きをしているという噂は留まるところを知らなくて。というか、もっと広まっている気がする。
 もういい、だったらやってやろうじゃないかと。そう映姫が奮起したところから、机に座ってペンを握り締めて作業をしている今に至る。
 ちなみに小町に書いたものを見せてみれば、大層なダメ出しをされてしまった。

 曰く、
 ちょ、映姫さまこれ白黒つけすぎ! と。

 
 けれど、それも直した。
 いいだろう見せてやろう。混沌の作家デビュー

 
 






 

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