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中庭とテストとリコーダー。

上手くもなく、かといって悪目立ちするほどの下手さでもない、いたって平凡なリコーダーの音色にあくびが出る。こっそりしたつもりだったのだが、「眠いなら保健室に戻って寝たらどうですか」と、音色を出した張本人である摂津に睨まれてしまった。そうしたいのは山々だが、あいにく今は終礼が終わった後の掃除の時間。保健室にいたところで、掃除の現場監督をさせられるだけなのは目に見えている。そういう面倒くさいことを率先してやるほどの熱意など微塵もない俺からすれば、中庭のベンチに寝転がって、退屈なリコーダーでも聞いていた方がマシというものだ。

「俺が起きてようが寝てようが、関係ねえだろ。集中しろ、集中」
「…………」

じろりと俺を睨みながらも、摂津は再びアルトリコーダーに指を当てて、軽く吹き始めた。音楽の課題に向けた練習といったところなのだろうけれど、この演奏で合格点に届くかは怪しいと俺は思う。まあ、それはあくまで俺が音楽教師として採点をしたらの話であり、一生懸命さを加点してもらえれば問題ないだろう。
掃除時間とはいえ、その担当に当たっていない生徒は各々もう帰宅や部活の準備を始めていた。目の前を慌ただしく走り去って行く男子バスケ部の生徒や、数人で連れ立って歩きながらテストに向けた話をしている女子生徒たち。摂津のように呑気に中庭でリコーダーの練習をするような生徒はもちろんいない。何せ、あと三週間後には期末試験だ。授業を担当していないとはいえ、サボりの生徒が減って行くという意味では俺の仕事の増減にも影響する。頑張れ青少年。

「お前って、テスト勉強してんのか?」

少し吹いては手を止めて楽譜に見入ることを繰り返している摂津に一応聞いてみると、「してます」と素っ気ない答えが返ってきた。こいつの普段の態度からして、授業には真面目に出ているようだし、その答えに意外性はない。むしろ、それこそこういったテストが近づいてきている日の放課後に、図書館や家で勉強をするでもなく中庭でリコーダーを吹いている姿の方になんとなく違和感があった。

「さっさと帰って勉強しろ、って言いたいんですか?」
「全然。お前が赤点取ろうが親に怒られようが、俺の仕事に関係ねえからな」
「……怒られることなんか、ありません」
「へえ」

そりゃあ優等生だな、と皮肉交じりに言ってやっても良かったのだが、摂津の表情の暗さを見てやめた。思春期には誰だって、他人に話しづらい事情の一つや二つを抱えている。毎日保健室で生徒と接しているおかげで、他人のデリケートな領域に踏み込まないように引き際を見極める能力は否応なしに身についてしまった。あくまで教師でしかない俺が深入りしたところで何のメリットもない。向こうから相談された場合以外は、基本的に受け身。それが数年の教師生活を過ごしてきた俺なりのポリシーだ。

「…薬指だな、問題は」
「え?」
「低い音から高い音に行くとき、無意識か何か知らねえけど、薬指に力が入りすぎてる。今も」

さっき音だけ聞いていたときから感じていたずれと、ちらりと様子を盗み見たときの記憶から適当に助言をしておく。全く俺のキャラじゃない、何なら時間外手当を要求したいくらいのスペシャルサービスだ。狐につままれたような顔をしている摂津にもう少し付き合ってやっても良かったが、掃除の時間を終わらせるチャイムが鳴り響いたので、俺はさっさと退散することにした。ベンチから下りて、歩いて30歩程度の距離の保健室までゆっくりと向かう。さて、今日の掃除のクオリティはどれくらいのものか、確認させてもらうこととしよう。

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