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ピロートーク

ほんとうの意味でのピロートークをこんなにもするようになったのは、どう考えてもカラスマがはじめてだ。

それは職業柄、ピロートークのタイミングにはさっさと服を身につけてその場を去っていたり、話をしようにも物言わぬ肉塊になっていたり、したとしても嘘と虚言にまみれた「すっごいよかったわ」という歯の浮くようなセリフだったりしたからだ。
仕事もメンテも関係なしに、そして性欲100%のドーブツみたいなファックでもなく、そこに確かに感じられる愛情みたいなものが入ったセックスというものをするようになった、ということらしい。最初のうちはどうにも慣れなかったけれど、いつしかあたしはその時間すらもとんでもなく愛しく感じるようになった。

穏やかな表情だったり、少し疲れのにじむ表情だったり、眠そうな顔だったり。
ゆったりとした声色だったり、今にも眠ってしまいそうな声色だったり、まだ少し物足りない、みたいな色を秘めた声色だったり。
カラスマのそんな顔と声を間近に感じながら、時に腕枕をされ、時にゆっくりと背中を叩かれながら、時に頭をゆっくり撫でられながら。
普段は聞けないこと、さっきまでの激しいセックスが嘘みたいな穏やかな話題、明日の予定。そんなことを話す時間は、1日の最後に用意されたボーナスタイムみたいな時間だった。

胸の上に乗せたあたしの髪をゆっくりと梳きながら、その時間が訪れる。今日のカラスマは最近の激務のせいか、今にもまぶたが閉じてしまいそうなおねむモードだ。
「……ね。あんたってあたしのこと、いつぐらいから好きだったの?」
「……急に、なんだ」
眠そうな時ほど、意外なワードが引き出せる率が上がるから、普段は聞けないことを聞く。あたしが最近見出したカラスマの攻略法だ。
普段ならバカを言うな、と返ってきそうな質問も、案の定眠そうなカラスマはいきなり否定にかからない。
「ずっと気になってたの。あんた、最初はあたしの気持ちに気付いてても、意識的に距離を置こうとしてたじゃない」
「ああ……お前はずっと、教室の仕事が終わったら、暗殺稼業に復帰するもんだと、思ってたからな……」
「実際そう考えてたけど……」
「お前自身でその結論が、確固たるもんであるらしいと思っていたから……引き止めるようなことを、してはいけないと……思ってたんだ」
「じゃあ、なんでそれを急にやめて、防衛省の就職口を用意してくれたわけ?」
「……暗殺の仕事を続けていたら、おまえはいずれ内側から、壊れてしまいそうだと思ったから……」
くわ、と大きくあくびをして、カラスマの言葉がしばらく途切れる。少し経って、思い出したようにあたしの髪を梳く動きを再開した。
「……殺し屋以外の仕事を、生き方を、お前に提示してやりたかったんだ」
顔が赤らんでいるのがわかる。が、たぶん今にも眠ってしまいそうなカラスマはそれに気付いていないだろう。
「……なるほどね。でもそれって、確かにあたしにとってありがたい申し出だったし、実際あたしはそれを選択したし、その選択に後悔はないんだけど——あたしが大きなお世話よって言って、それを拒否したらどうする気だったわけ?」
「……考えて、なかったな……」
「結局これって、カラスマのエゴでもあるんじゃない?」
「……そうかも、しれんな……」

髪の毛を梳く動きがまたピタリと止まった。いよいよ眠ってしまったのだろうか、とあたしが訝しむほどに静かになったカラスマは、ややあって小さく口をひらいた。

「……そのエゴを押し通したいと考えるぐらいには、おれはお前に惚れてた、って……ことなんだろうな……」

聞き逃してしまいそうなぐらいに小さな声をどうにか聞き取ったあたしの顔が、また赤く染まる。
——なあんだ。カラスマ、あたしのことが大好きなんじゃない。そのセリフは言わずに、ただカラスマの胸に顔を埋めた。

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