ジャンル:アイドリッシュセブン お題:男同士のあいつ 制限時間:30分 読者:29 人 文字数:1509字 お気に入り:0人

二つ心に

いつでも、先を行くやつの背中を見せられて、歯噛みしていた気がする。
それがいつしか諦めに変わって。
その諦めすらも次第に憎悪に変わって。

そう、相手も知らない独り相撲を延々と取っていたんだろう。
まったくばかばかしいことこの上ないが、ありがたいことに
今俺がここにいるのは、そんな独り相撲の結果だ。


「ただいま戻りました。」

「おー、お疲れーソウ。」

「あ、大和さん、今日は早いんですね。確かドラマ収録だったはずですよね?」


鞄を下ろしながら、ソウが穏やかな口調で問いかける。
今日はタマが学校で、ソウの一人仕事だったか。


「おお、まあな。予定していたシーンの展開が悪いってんで、俺の出番の分を先撮りしたんだよ。おかげさまで。」


そう言って半分ほど減ったビールの缶を掲げて見せると、相手は小さく笑う。


「僕も少しもらおうかな…。」

「んー?ソウは少しで止められんのかなー。とりあえず、腹ごしらえしてねえなら回るの早いから、なんか食っとけ。」

「そうですね、冷蔵庫に確か僕の分の冷奴があったはず…。」


先程つまみを捜索しようと冷蔵庫を開いたときに赤い立方体があった気がする。
色々と察しあえて触れなかったのはファインプレーだ。


「ミツが飲みすぎでこの間こっぴどくイチに絞られてたから、ちょっと禁酒するってんでオニーサン一人酒暇だったのよ。」

「あはは、あのお二人は本当に仲がいいですよね。」

「まあな。」

「羨ましいです。僕には兄弟がいませんし、家族も…『仲良し』というわけではありませんでしたから。」


ざくっ、と自分の胸に刺さる何かが痛み、ぐっとビールを流し込む。
仲良しどころか、忌み嫌って、復讐したいとまで思った。
ソウは、たぶん俺の通ってきた道の一部だろう。
どうにかしたくて、でも分かり合えなくて、諦めている。

家族だから、すべて分かり合うなんて無理だろうけど、
家族だから分かってほしい、という気持ちもわかる。
「あの人」と「俺」は、家族だったのかと言われると、俺は断言できない。


確かに、血でいけば「父」であり、俺はどこまで行っても「子」なんだろう。


「…大和さん?」

「ん?…わー、今俺凄いグロい瞬間見てるー。」

「?」

赤い立方体に更に赤いトッピングをしながら喰らう、どちらかと言えば幼い面立ちのソウは、それはそれはギャップが振り切っている。
アイナナ警察のワンシーンを思い出して、若干の身震いをする。
気を取り直して、冷えたビールの缶を渡して、軽く缶をぶつけ乾杯する。


「まあ、家族だから仲良いってのは、理想だけどよ。ミツとイチですら仲違いしてる時期もあったらしいし。」

「そうなんですか?」

「あの二人がはっきり言ったわけじゃねーけど、なんかの時にぽろっとな。まあそれはそれとして。
俺が思うには、一部同じもん持ってんだから、ある程度は妥協できるんじゃね?ってとこだな。」

「妥協…」


ビールの缶を握り、小さく呟いて考えこむ生真面目な相手を見ながら、俺は小気味いい音で開栓された二本目のビールに口をつける。


「経験者は語る、っていうか。根っこっつーか、なんだ、結局こいつも俺と同じじゃん、って時が来るんだよ。」


それが分かったから、俺はあの人を許せた。
いや、もちろんそれだけじゃない。
分かったのも、許せたのも。


「それまで、こんなに『兄弟』がいるんだから、ここでのんびりしてりゃいいんだよ。」


ソウがまん丸の目をしてから、にっこりと笑う。


「ふふふっ、そうですね。僕、いいお兄さんが出来ました。」

同じジャンルの似た条件の即興二次小説


ユーザーアイコン
作者:ネップリしてるタイプのあけうち ジャンル:アイドリッシュセブン お題:僕とあいつ 制限時間:30分 読者:138 人 文字数:1131字 お気に入り:0人
※いおてん あの子のことは――和泉一織という少年のことは、あまり好きじゃないはずだった。 ことあるごとに突っかかってきて、何かあると口を出してきて、まるで重箱の 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ネップリしてるタイプのあけうち ジャンル:アイドリッシュセブン お題:愛の故郷 制限時間:30分 読者:125 人 文字数:1383字 お気に入り:0人
※いおてん♀ 彼らと関わることが増えて、親睦を深めて、変わったことはいくつもあった。 それはおのれの在り方であったり、仲間との関係性であったり、かけがえない「友 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ネップリしてるタイプのあけうち ジャンル:アイドリッシュセブン お題:早すぎた魚 制限時間:30分 読者:140 人 文字数:1205字 お気に入り:1人
※同棲してるみつてん♀「あつい……」 空っぽになったコップを片手に携え、わたしは静まり返った廊下を進んでゆく。 フローリングのうえをスリッパでぺたぺたと歩き、ち 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ネップリしてるタイプのあけうち ジャンル:アイドリッシュセブン お題:くだらない悲しみ 制限時間:30分 読者:148 人 文字数:1380字 お気に入り:1人
冷蔵庫のケーキが消えた。 そんな事件は何気なく日常的にありえる話で、きっとこの日本でも、東京に絞ったとしても、あちらこちらで頻発していることなのだろう。 けれ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:桃月 ジャンル:アイドリッシュセブン お題:運命の暴走 制限時間:15分 読者:145 人 文字数:957字 お気に入り:0人
「うー……寒いなあ……」「この季節は乾燥します。特に貴方は人一倍体調には注意してくださいよ、七瀬さん」「わかってるってば」 ぼぞりと呟いた言葉にもお小言が二倍三 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:あさか ジャンル:アイドリッシュセブン お題:とびだせお天気雨 制限時間:15分 読者:103 人 文字数:285字 お気に入り:0人
物語において、雨に濡れるというシチュエーションは多くの場合絶望的な状況の演出に用いられる。紡が観ていた八乙女楽の出演するドラマも同様だった。八乙女の演じる主人 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:桃月 ジャンル:アイドリッシュセブン お題:気持ちいい潮風 制限時間:15分 読者:389 人 文字数:1611字 お気に入り:0人
「大和くんはいいよね」「……、はあ……?」 何故、自分は今、この男の不機嫌を正面から食らわねばならないのだろう。二階堂大和は向かい合って座る十龍之介の仏頂面を細 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:アイドリッシュセブン お題:僕の嫌いなにおい 制限時間:4時間 読者:273 人 文字数:4065字 お気に入り:0人
学校の放課後って時間が好きじゃない。授業も好きなわけじゃないけど。そもそも学校って好きじゃないけど。でも放課後が一番嫌いだ。この浮ついた空気が好きじゃない。毎日 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:アイドリッシュセブン お題:うわ・・・私の年収、スキル 制限時間:1時間 読者:448 人 文字数:1703字 お気に入り:0人
「天はもう、俺から学ぶことをやめた方がいいね」楽屋で突然そう言われて、内緒だよと言われて見せてもらっていた台本から顔を上げる。Re:valeの百は肘をつきながら 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:アイドリッシュセブン お題:裏切りの能力者 制限時間:4時間 読者:334 人 文字数:4133字 お気に入り:0人
1回目。「もう生きていたくない」薄暗い一人暮らし用の小さなアパートの一室。カーペットの上に座り込んで、ユキさんはそう言った。ひいたカーテンの隙間から昼下がりの明 〈続きを読む〉

まきの即興 二次小説


ユーザーアイコン
作者:まき ジャンル:アイドリッシュセブン お題:左の私 制限時間:30分 読者:15 人 文字数:1643字 お気に入り:0人
指定席。僕がここにいていいのだという、印。現実にはそんな便利なものはなくて、いつでも探し回っている気がした。気が付けば、案外思いもかけずに手にしているのに。「壮 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:まき ジャンル:アイドリッシュセブン お題:苦し紛れの国 制限時間:30分 読者:16 人 文字数:1533字 お気に入り:0人
まさか、こうして酒を酌み交わすことになるとは思わなかったけど、それは俺にとってとても、嬉しいことで。…そして、何より。「本当に、お礼が言えるようになって嬉しいよ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:まき ジャンル:アイドリッシュセブン お題:記憶の粉雪 制限時間:30分 読者:19 人 文字数:1331字 お気に入り:0人
ほとんど、後ろ姿しか見ていなかった気がする。あとは、ゆっくりと語る母親の口調。後から見る、姿。俺が直接見たものは、自分の心境のおかげか、断片的なものでしかない。 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:まき ジャンル:アイドリッシュセブン お題:強い別居 制限時間:30分 読者:22 人 文字数:1528字 お気に入り:0人
たくさんの煽り文句で、俺は形容されてきた。ただ、それはあくまでも作られた俺へのものであって。本来の、素のままの俺に付ける煽り文句としたら…何があるんだろうか。「 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:まき ジャンル:アイドリッシュセブン お題:失敗の熱帯魚 制限時間:30分 読者:17 人 文字数:1434字 お気に入り:0人
ぼーっと何を見るわけでもなくチャンネルを送り、ソファでくつろぐ。のんびりするのがオフの過ごし方ってなもんで、基本は何もしないに限る。ビールの時間には早すぎる(と 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:まき ジャンル:アイドリッシュセブン お題:未熟なわずらい 制限時間:30分 読者:18 人 文字数:1602字 お気に入り:0人
子ども扱いされているのは十分わかっているけれど。頑張って背伸びしても、相手はどんどんと先に行ってしまうから。子供みたいに我がまま言って、引き留めるくらいしか、な 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:まき ジャンル:アイドリッシュセブン お題:悔しい男 制限時間:30分 読者:19 人 文字数:1439字 お気に入り:0人
夢に見たものが、寸前で途切れる瞬間を見た。暗闇に投げうたれた俺は、その暗闇の中でまだ光り輝く何かを求めて、必死にもがいていた気がする。「よし。あとはスケジュール 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:まき ジャンル:アイドリッシュセブン お題:宿命のもこもこ 制限時間:30分 読者:20 人 文字数:1358字 お気に入り:0人
正直、他人と関わるのは好きじゃない。自分の好きなように解釈して、すり寄ってきたり、怒ったり、泣いたり。僕がしたいことを阻害していく他人は、僕にとって邪魔にしかな 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:まき ジャンル:アイドリッシュセブン お題:希望の交わり 制限時間:30分 読者:22 人 文字数:1541字 お気に入り:0人
猪突猛進だって、昔からよく言われていた。でも、オレはあの時の決断を後悔なんてしていないし、今こうして見ている景色は、あの時の決断がなければ絶対なかったものだから 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:まき ジャンル:アイドリッシュセブン お題:あいつの笑顔 制限時間:30分 読者:23 人 文字数:1832字 お気に入り:0人
皆さんを支えるのが、私のお仕事です。けれど、私は皆さんに支えられてばっかりで…。きちんと、皆さんに頼っていただける、一人前のマネージャーになりたいんです。「おは 〈続きを読む〉