ジャンル:アイドリッシュセブン お題:男同士のあいつ 制限時間:30分 読者:51 人 文字数:1509字 お気に入り:0人

二つ心に

いつでも、先を行くやつの背中を見せられて、歯噛みしていた気がする。
それがいつしか諦めに変わって。
その諦めすらも次第に憎悪に変わって。

そう、相手も知らない独り相撲を延々と取っていたんだろう。
まったくばかばかしいことこの上ないが、ありがたいことに
今俺がここにいるのは、そんな独り相撲の結果だ。


「ただいま戻りました。」

「おー、お疲れーソウ。」

「あ、大和さん、今日は早いんですね。確かドラマ収録だったはずですよね?」


鞄を下ろしながら、ソウが穏やかな口調で問いかける。
今日はタマが学校で、ソウの一人仕事だったか。


「おお、まあな。予定していたシーンの展開が悪いってんで、俺の出番の分を先撮りしたんだよ。おかげさまで。」


そう言って半分ほど減ったビールの缶を掲げて見せると、相手は小さく笑う。


「僕も少しもらおうかな…。」

「んー?ソウは少しで止められんのかなー。とりあえず、腹ごしらえしてねえなら回るの早いから、なんか食っとけ。」

「そうですね、冷蔵庫に確か僕の分の冷奴があったはず…。」


先程つまみを捜索しようと冷蔵庫を開いたときに赤い立方体があった気がする。
色々と察しあえて触れなかったのはファインプレーだ。


「ミツが飲みすぎでこの間こっぴどくイチに絞られてたから、ちょっと禁酒するってんでオニーサン一人酒暇だったのよ。」

「あはは、あのお二人は本当に仲がいいですよね。」

「まあな。」

「羨ましいです。僕には兄弟がいませんし、家族も…『仲良し』というわけではありませんでしたから。」


ざくっ、と自分の胸に刺さる何かが痛み、ぐっとビールを流し込む。
仲良しどころか、忌み嫌って、復讐したいとまで思った。
ソウは、たぶん俺の通ってきた道の一部だろう。
どうにかしたくて、でも分かり合えなくて、諦めている。

家族だから、すべて分かり合うなんて無理だろうけど、
家族だから分かってほしい、という気持ちもわかる。
「あの人」と「俺」は、家族だったのかと言われると、俺は断言できない。


確かに、血でいけば「父」であり、俺はどこまで行っても「子」なんだろう。


「…大和さん?」

「ん?…わー、今俺凄いグロい瞬間見てるー。」

「?」

赤い立方体に更に赤いトッピングをしながら喰らう、どちらかと言えば幼い面立ちのソウは、それはそれはギャップが振り切っている。
アイナナ警察のワンシーンを思い出して、若干の身震いをする。
気を取り直して、冷えたビールの缶を渡して、軽く缶をぶつけ乾杯する。


「まあ、家族だから仲良いってのは、理想だけどよ。ミツとイチですら仲違いしてる時期もあったらしいし。」

「そうなんですか?」

「あの二人がはっきり言ったわけじゃねーけど、なんかの時にぽろっとな。まあそれはそれとして。
俺が思うには、一部同じもん持ってんだから、ある程度は妥協できるんじゃね?ってとこだな。」

「妥協…」


ビールの缶を握り、小さく呟いて考えこむ生真面目な相手を見ながら、俺は小気味いい音で開栓された二本目のビールに口をつける。


「経験者は語る、っていうか。根っこっつーか、なんだ、結局こいつも俺と同じじゃん、って時が来るんだよ。」


それが分かったから、俺はあの人を許せた。
いや、もちろんそれだけじゃない。
分かったのも、許せたのも。


「それまで、こんなに『兄弟』がいるんだから、ここでのんびりしてりゃいいんだよ。」


ソウがまん丸の目をしてから、にっこりと笑う。


「ふふふっ、そうですね。僕、いいお兄さんが出来ました。」

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