ジャンル:暗殺教室 烏イリ お題:誰かは母 制限時間:30分 読者:58 人 文字数:1507字 お気に入り:0人

はじめましてのごあいさつ

毎年恒例の、旧校舎の清掃日。デッキブラシでがしがしと外壁を掃除している千葉は、ふとこちらをじっとみつめる小さな瞳に気がついた。
「……?」
視線のほうに目をやると、おそらく3・4歳ぐらいの小さな女の子が、壁を掃除している千葉の様子を興味深そうにじっと見つめている。
「……参ったな、ここって確か関係者以外立入禁止にしてもらったんじゃなかったっけ?」
ぽりぽりと頬を掻いて、千葉はデッキブラシを壁に立てかけた。そのまま、その女の子に近づく。
「き、君……どっから入ってきたの?」
いきなり話しかけてきた千葉を、こぼれ落ちそうな大きな瞳でぱちくりと見上げたあと、その女の子はぴゃっと駆け出し、茂みの中に消える。
「あちゃあ。逃げられちゃったか……近所の子かなぁ」
そう呟いて、千葉はふたたびデッキブラシを手に取った。しばらく訪れない間に壁がうっすら苔むしてしまっている。外壁塗装も検討すべきかなあ、という思考に、もう頭の中が支配されてしまっていた。


「……なんか久々にこの山道登ると、あの一年の自分すっごいなあ、って思わない?」
「かもねー。あたしなんか今、編集部と家の往復ばっかだから、体がなまっちゃってなまっちゃって」
「あ、じゃあうちのグループの運営する体操教室、週一くらいで通わない? 友達価格で安くしちゃうよー」
そんな雑談をかわしながら、旧校舎へと続く山道をてれてれと歩いているのは、寿美鈴・優月・ひなたの3人。最寄駅で偶然出会った3人は、どうせだからと一緒に旧校舎へと向かっているところだ。
えーそれならちょっとまず見学してみようかなあ、と優月が反応し、それダイエットにもいいの? と寿美鈴がおずおず尋ねるそのすぐ横を、弾丸のように駆け抜ける影がひとつ。どしん、と寿美鈴にぶつかり、尻餅をついた。
「え! ご、ごめんあなた大丈夫⁉︎」
「えっ誰、この子?」
慌てて寿美鈴が手を差し伸べ、その子を立ち上がらせようとする。が、その女の子は目に涙をいっぱいに溜めながらも、その手を取ることなく自分ですっくと立ち上がった。
「わあ、自分で立ち上がれるんだ。強い子だねえあなた」
「キミ、どっから入ってきたの? おとーさんとかおかーさんとか、おにーちゃんとかおねーちゃんとか、友達とか……一緒に来たひとは?」
優月が尋ねた、「おとーさんおかーさん」の言葉にぴくりと反応して、女の子の意志の強そうなはっきりとした眉がハの字を描く。口元はへの字に曲がり、う、う、と小さくべそをかきはじめた。
「あちゃあ、迷子かなあ」
ひなたが困ったように頭を掻くと、女の子ははっきりとした声で主張した。

「パパと、ママが、まいごなの!」


ぴこりん、とE組全体LINEが着信を告げる。前乗りして鍵とか窓とか開けておくよ、と言っていたイケメン学級委員こと、磯貝からだ。
「へえ。今回烏間さん一家、参加だってさ」
「休み取れたんだ! 先生たちの結婚式以来かもね、会うの」
ようやっと最寄駅に到着し、旧校舎へと向かう途中のカルマと渚が嬉しそうにLINEの画面を覗き込む。
「ん? でもこれ——行方不明?」



「どうしようカラスマあの子が万一崖から落ちて怪我とかしちゃってたらっ……!」
「落ち着け、いいから落ち着け。呼び方が昔に戻ってるぞイリーナ」
「あああ、なんであたしあの時手を離しちゃったのかしら」
「だから大丈夫だと。さっき、岡野さんから連絡がきたろう。すぐにこっちに来る」

オロオロと動き回る夫婦に、やってきた三人組女子がにやりと笑って宣言した。
「ビッチせんせー、烏間せんせー、おひさしぶりー。娘さん到着でーす!」

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