ジャンル:暗殺教室 烏イリ お題:平和と弁当 制限時間:30分 読者:116 人 文字数:1588字 お気に入り:0人

おべんとうつくろう

だし巻き卵はスミレに教わった。彼女の、まるでマジシャンみたいな手つきにはまだ遠く及ばないけれども、回数を重ねて練習をした結果、それなりに綺麗に巻けるようになったのはちょっとした自慢だ。
だし巻き卵にじゃこと、歯ごたえが残る程度に茹でて小さく刻んだ大根の葉を入れ、大根おろしに醤油で食べるのがおいしい、と教えてくれたのは莉桜だ。お弁当に入れるから、さすがに大根おろしは用意できないけれど。ごま油が香る香ばしい味はカラスマもお気に入りで、たまにリクエストされる。

オリガ直伝のラタトゥイユは、汁気を少なめにして、餃子の皮をレンチンして作ったカップに入れる。カップごと食べられるから食べてね、と言うと、カラスマは一瞬わけがわからない、という顔をしていた。餃子の皮で作ったのよ、と言うと、目を丸くして「お前器用なんだな」と言われたことは今でも思い出すと少し笑ってしまう。レシピサイトのアイデアをそのままいただいたものだというのは言わないでおこう。

ご飯を入れ物に敷き詰めてキャラ弁を作るのだって今ではお手の物だけれど、ご飯を食べながら書類確認をすることも多いと知っているから、もっぱらおにぎりを握ることが多い。これも、最初はきれいに三角にすることができなくて、カラスマの方がまだきれいに三角に握れたぐらいだ。今では俵形もお手の物になったから、慣れとはおそろしいものだ。今度、ちょっと余裕があるときにはいなり寿司に挑戦してみようと思っている。

今日のメインは唐揚げ。揚げている最中にカラスマが台所にやってきて、今日は唐揚げか、と言ってあたしが鶏肉を揚げるところをじっと見ているとき、十中八九つまみ食いを狙っていることを知っている。最近は娘までそれに加わるようになった。
まあ、揚げたてがいちばん美味しいししょうがないわよね。あたしは気付いてないフリをしつつ、たまにあからさまな隙を作ったりして、そのつまみ食いを黙認している。

ポテトサラダには隠し味でケチャップをほんのちょっと入れると美味しい、ということは、渚が教えてくれた。あんたも料理すんの、と尋ねると、照れ臭そうに「実は最近、朝食は僕が作ってるんです」と教えてくれた。それから何度か、簡単な朝食レシピの教えあいっことか、ちょっとした料理の時短テクニックみたいなものを共有する「料理仲間」になった。
今ではもう相当に腕を上げたのかしら。それとも、新婚のカエデが作るご飯ばっかり食べちゃってるのかしら。

「切り方をちょっと工夫すりゃあ、弁当の見た目もぐんと面白くなんぜ」——あたしの自作のお弁当を覗き込んでそう言ったのは創介。その時教えてもらった「ミニトマトをハートにする方法」は、今でもよく使わせてもらっている。
「烏間せんせーだって男なんだしさー、なんかそんな可愛らしいやつじゃなくて、がつんとした炒め物とかがお好みなんじゃね?」と、拓哉はスタミナ系炒め物のレシピをいくつか教えてくれた。にんにくガッツリすぎてキスする時に困るじゃないの、と不満を漏らすと、でもビッチせんせー、まだ烏間せんせーとはキスしたことねーじゃん、とからかわれたのは、今ではもう微笑ましい思い出だ。
……今では、ふたり同じものを食べていたりするのだから、たまにニンニク臭のするキスをすることだってある。まあ、それはそれで。


毎朝のお弁当作りの最中に思い浮かぶ、生徒たちの懐かしい顔。
あたしが今まで食べて来たもの、あたしが誰かと一緒に食べたもの、あたしが誰かにレシピを教わったもの、あたしが誰かの顔を思い浮かべながらレシピを探したもの。たくさんの記憶がこの小さなお弁当箱の中に詰まっている。
「……よし、完成」
つぶやいて、大きなお弁当箱、中くらいのお弁当箱、小さなお弁当箱の蓋をそれぞれ閉めた。

さあ、今日も愛のこもったお弁当をめしあがれ。

同じジャンルの似た条件の即興二次小説


ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:暗殺教室 烏イリ お題:アルパカの慰め 制限時間:30分 読者:171 人 文字数:1411字 お気に入り:0人
まるで敵のいない野っ原に放り出された草食動物みたいに、クッションを抱えてソファに座り、どこでもない虚空を見つめてぼうっとしているものだから、烏間は思わず心配にな 〈続きを読む〉

からいりくじらの即興 二次小説


ユーザーアイコン
作者:からいりくじら ジャンル:暗殺教室 烏イリ お題:ラストは男祭り! 制限時間:30分 読者:117 人 文字数:1463字 お気に入り:0人
「いやー、やっぱああいう血湧き肉躍る競技は男子の専売だねぇ。超興奮しちゃった!」体育祭の棒倒しが終わり、閉会式も終えて。校庭のパイプ椅子を片付けながら、興奮気味 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:からいりくじら ジャンル:暗殺教室 烏イリ お題:輝く悪 制限時間:30分 読者:108 人 文字数:2080字 お気に入り:0人
「カラスマってさ、この世には絶対的な正義みたいなものがあって、自分は何があってもそっちサイドですって顔をしてること、ない?」あたし、自分を使うオトコの実力を見極 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:からいりくじら ジャンル:暗殺教室 烏イリ お題:元気な故郷 制限時間:30分 読者:107 人 文字数:1965字 お気に入り:0人
殺気を感じて立ち止まると、すぐ横のコンクリートブロックの塀に、ビシッと音を立ててペイント弾が命中した。気付かずそのまま歩いていたらば、ちょうど烏間のこめかみに命 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:からいりくじら ジャンル:暗殺教室 烏イリ お題:進撃の内側 制限時間:30分 読者:127 人 文字数:1929字 お気に入り:0人
「……で? なんだコレは」「なにって、ランジェリー」「おれには紐にしか見えん」「えー。この繊細なレース使いがわかんないなんて、どんだけ朴念仁なのよカラスマぁ」烏 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:からいりくじら ジャンル:暗殺教室 烏イリ お題:悔しい男 制限時間:30分 読者:130 人 文字数:1553字 お気に入り:0人
持ち帰りの仕事がようやくひと段落ついて、烏間がようやくベッドにやってきた時。彼の恋人であるイリーナ・イェラビッチは、いつもの「この衣服には一体どこを保護する目的 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:からいりくじら ジャンル:暗殺教室 烏イリ お題:失敗の食卓 制限時間:30分 読者:117 人 文字数:1699字 お気に入り:0人
熱で浮かされた頭に、おずおずと濡れタオルが乗せられた感触。その心地よさにふっと目を開けると、あまり見ない驚いた顔の烏間がそこにいた。「……すまん。冷たかったか」 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:からいりくじら ジャンル:暗殺教室 烏イリ お題:真実の血液 制限時間:30分 読者:128 人 文字数:1504字 お気に入り:0人
「——時々不思議になるのよねえ」熱心に砂場で「おしろ」を作り続ける娘をぼんやりと眺めながら、木陰でイリーナは呟く。「なにがだ」吹き抜ける風の心地よさに目をつぶり 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:からいりくじら ジャンル:暗殺教室 烏イリ お題:突然の宇宙 制限時間:30分 読者:123 人 文字数:2018字 お気に入り:0人
「ねぇんカラスマ――」「甘えた声を出そうが、ダメなものはダメだ」「……ちっ」先ほどからさんざ「授業なんかかったるい」「やってられない」「そもそも教師なんかやった 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:からいりくじら ジャンル:暗殺教室 烏イリ お題:幼い土地 制限時間:30分 読者:114 人 文字数:1505字 お気に入り:0人
「人を育てる——……か」生徒たちの乗ったバスを見送ったイリーナが、ぽつりと呟いた。「あいつからのアドバイスブックにあった言葉、か」吹けば飛びそうなほどに小さな言 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:からいりくじら ジャンル:暗殺教室 烏イリ お題:俺と霧 制限時間:30分 読者:115 人 文字数:1517字 お気に入り:0人
複雑なようでいて、単純で、だけど複雑。イリーナ・イエラビッチという女は、おれにとってはそうとしか言いようのない性格をしていた。「もー、まぁた雨!? もう雨はいい 〈続きを読む〉