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九品の世界を

眩いライト。灼熱になるその舞台の上で、涼しくにこりと笑って見せる。
プロとして要求されたものにNOはない。
僕は、プライドを持ってそこに立つ。
生半可な覚悟でそこにいないっていうことを、見せつける。


「っはぁ…。」


リハーサルを終えて、一人レッスン室で息を吐く。
僕はTRIGGERのほかの二人に比べて少し背が低い。
悔しいけれど、それは事実。

だからこそ、めいっぱい、指先や足先まで意識して、
大きく、美しく。
ダンスを丁寧にすること、安定した声量を出すこと。
やることは多いけれど、弱音を吐いている暇なんてない。
ファンの子たちを失望させることは、九条天としてあり得ない。
水を飲んで、もう一度。
あの二人に負けないダンスを身につけなくては。


「天。」

「!?」


聞きなれた声がレッスン室に響いた。
驚いて振り返れば、


「龍。何でここにいるの。」

「そ、そんなに睨まなくてもいいじゃないか。」


入口に、龍の姿があった。
あたふたと困ったように視線をさ迷わせ、大きい体に似合わない気弱さの龍を見ると、なんだか毒気が抜ける。


「別に怒ってない。」

「そっか、よかった。」


微笑む相手を招き入れて、パイプ椅子に腰かける。
心配そうに僕の顔を覗き込みながら、


「天、何かあったのかい?」

「…どうしてそう思うの?」

「さすがにもう、短くない付き合いだからね、天に何かあれば、何となくわかるよ。」


のほほんとしてて割と鈍感なのに、こういうところは、やけに聡い。


「あの家にいることが、ほんの少し…今だけ、少し…重いかなって。」


九条さん。僕の『養父』。
ここまで僕がこの業界で活躍できるのは、当然に九条さんのおかげだ。
けれど、あの人の目に宿る哀しさと、妄執にも見える光。
その光に、最近は同情よりも、痛みを伴って伝わる。

もしかしたら、もっと明るくて眩い、綺麗な光を見た…から…?


「…あまり無理するなよ、天。いざとなれば、俺の家でもいいからさ。おいで。」

「ありがとう。」

「どういたしまして。天は俺たちにもっと甘えていいんだから。…ね、楽。」

「楽?」


がしゃんばたん、とド派手な音が扉の向こうから聞こえる。
何でそういうところ決まりきらないんだろう。
こういうの、うっかりファンに見せたらがっかりされると思うんだけど。


「盗み聞きなんて趣味悪いんじゃないの?」

「楽に頼まれたんだよ、俺が行ったんじゃ言い合いになるからって。」


ばつの悪そうな楽が渋々っと言った感じでレッスン室に入ってくる。


「…その通りだろ?」

「うん、否定はしないかな。」

「んの…可愛くねえ奴。」

「まあまあ。」


二人に心配をかけてしまったのは申し訳ないけど、でも、僕は、この二人に出会えたからこそ、TRIGGERでいられる。
TRIGGERの九条天でいられる。


「じゃあ、とりあえず練習付き合ってよ。一人じゃフォーメーション出来ないし。」

「もちろん、とことんまで付き合うよ。」

「当然だな。」


あまり、考えないようにする、わけではないけど。
僕がここにいるための方法を、優先して考えていこう。
TRIGGERの一員として。

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