ジャンル:暗殺教室 烏イリ お題:突然の宇宙 制限時間:30分 読者:51 人 文字数:2018字 お気に入り:0人

宇宙人にキスを

「ねぇんカラスマ――」
「甘えた声を出そうが、ダメなものはダメだ」
「……ちっ」

先ほどからさんざ「授業なんかかったるい」「やってられない」「そもそも教師なんかやったこともないしマトモに教育も受けてない」「だから教育はタコにまかせて、わたしたちは今すぐ街に繰り出して買い物をすべき」という謎論調で烏間をショッピングに誘っていたイリーナは、とうとう諦めてからだを安いつくりのオフィスチェアにもたれさせた。ぎい、といちいち音が鳴るこんな安い椅子にすら、イリーナは座り慣れていないのだ。
「……どうも調子狂うわね。今まであたしがショッピングに誘って、その荷物係を申し出なかった男なんていなかったのに」
「そうか。おれから言わせれば今までお前が出会ってきた男の方が異常だな」
「あんたはさー、こんっなくそボロくて、くそ暑いこんな場所で、こぉんなくそめんどっちいような仕事、やってられるわけ?」
「もっとひどい環境で仕事をしたことなんかザラだから、環境としてはまだ恵まれてる方だ。それに、仕事はどんなものだって仕事だろう。与えられた仕事はまっとうせねばならん」
「くっそマジメねぇ、あんた」
あーあ、と言いながらイリーナはその長い脚を組んだ。それに目もくれない目の前の男に、むう、と不機嫌まるだしの顔をしてみせる。

「……宇宙って広いわよね、カラスマ」
「突然何の話だ」
「そのひっろい宇宙の中では、もしかしたら宇宙人っているかもしれないわよね、カラスマ」
「まあ確率的には否定はできんだろうが」
「その宇宙人だったら、あたしたちとはまったく違う価値観を持ってる可能性はあるわよね」
「まあ……文明も常識も生育環境も、一から十まで違ったらそりゃあ、同じになる可能性の方が低いだろう」
「だから、今まであたしがオトせない男って『宇宙人』だけだと思ってたのよ」
「……そうか」
「だからね、あたしにとってあんたって今、宇宙人なのよ」
「……」

意味がわからずに押し黙った男に、イリーナは追い打ちをかけるように続けた。
「だってあたし、あんたがセックスしてるトコとか、女にでっれでれになってるトコとか、ぜんっぜん想像できないもの」
「そうか。果てしなくどうでもいい想像だな」
「あんたをオトすビジョンみたいなやつを、思い描けはするんだけど、いざ実行すると大体最初の1・2手でダメになんのよねぇ」
「そうか。少なくともおれはお前のハニートラップにはかからんということだな。喜ばしいことだ」
「あたしにとっちゃ激しく問題よ! 例え相手が宇宙人でも、性別がオスなら、そして言葉がわかるならオトせる――それがあたしの自信だったのにっ!」
「まあ、万能なものなど世の中にはなかなか存在しない、ということだ」
きいっ、と目をむくイリーナに、烏間は追い打ちをかけるように微苦笑を浮かべながら答える。
「――お前にもまだ成長の余地があるということだ、それは喜ばしいことなんじゃないか?」




イリーナは目の前の光景に、腕組みをして考え込んだ。
「……想像できなかったし、やっぱり今でも信じらんないわ……」
「なにがだ」
「あんたがでっれでれになってるトコ」
「……別に、でれでれになってはいないだろ?」
「確かに、悔しいけどあたしにでれでれになってるとこは見れたって自信ないわ。でも」
イリーナの乳房にしがみつき、必死に乳を飲んでいる真っ最中の娘をあごで指すと、イリーナは続ける。
「娘にはデッレデレじゃないの」

烏間の眉間に皺が寄る。
「……でっれでれじゃないだろ」
「いいえ、デッレデレよ」
「そんな……そんなことはない、だろう」
「いいえ、デッレデレね」
「……」
気まずそうに烏間は目線をそらした。しかし、娘を抱くイリーナの腕をやさしく撫でる手の動きは止めない。
「昨日も帰りに西松屋に寄って、新しいおもちゃ買ってきてたでしょ? これで何個め?」
「……あれは、たまたま見かけて、好きそうだなと思ったから」
「そもそも職場からウチまでの間に、西松屋ないじゃない。わざわざ寄ってきたってことでしょ」
「……」
職場が同じだと「出先で」という言い訳も通用しないから難しいところだ。烏間は再び眉間に皺を寄せた。
そんな烏間を見て、イリーナが小さく吹き出す。
「……そうね、信じられないことばっかりだわ。今のあたしなら、もしかしたら宇宙人もオトせるかもしれない」
「なんの話だ」
「いいえ、なんでもない。……まあ、今宇宙人がやってきたとしても、オトす気はないけどね」
「だからなんの話だ」
「んーん。あんたっていう宇宙人をオトすことができたあたしは、やっぱりハニートラップの達人なのかな、って」
「……」
でもまあ、もうそれを使うことなんて、仕事以外ではないけどね。オトしたいヤツがオトせたし。
そう言ってイリーナは笑って、烏間の眉間の皺にキスを落とした。

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