ジャンル:暗殺教室 烏イリ お題:真実の血液 制限時間:30分 読者:130 人 文字数:1504字 お気に入り:0人

きみに似ている

「——時々不思議になるのよねえ」
熱心に砂場で「おしろ」を作り続ける娘をぼんやりと眺めながら、木陰でイリーナは呟く。
「なにがだ」
吹き抜ける風の心地よさに目をつぶり、今にも居眠りを始めそうだった傍らの烏間が、だるそうに目を開けて尋ねた。
「あたしが今、あんたの妻で、あの子を産んで、お母さんしてるってこと。……時々まだ信じられなくなるの」
くわ、とひとつあくびをすると、烏間はどこかまだ眠たげな口調でそれに答える。
「なんだ。お前、浮気でもしたのか」
「してないわよっ」
「じゃあ処女懐胎でもしたか」
「バカ言わないでよ」
「左手の薬指にあるそれはなんだ」
「……け、結婚指輪よ」
「なら、答えは出てるだろう」
ん、と小さく伸びをして、烏間は再び目を閉じる。もう、と小さく呟いて、イリーナは小さく膝を叩く。
「膝まではいい。肩借りるぞ」
そう言って彼女の夫はゆっくりと彼女に重みを預けた。膝枕したかったけどな、と少し残念に思いながら、イリーナもゆっくり烏間に体を預ける。彼女の夫は昨日深夜まで仕事をしていたので、本音はまだもう少しベッドの中で寝ていたかったのだろう。
どうしてこうも、幼児というのは朝が早いのだろう。早起きなところも、自分には似ても似つかない。苦笑しながら、イリーナはこの前買ってあげたシャベルで砂をひたすら積み上げ、ぺしぺしと叩く娘を見守っている。

「……あんな素直で、かわいくて、優しくてちょっぴりおませでいい子が、あたしの子供だなんてまだ信じらんないの」
「そうか?……あの子はお前にそっくりじゃないか」
てっきりもう居眠りを開始したと思っていた烏間が、イリーナのただの独り言のつもりのセリフに答えを返す。わずかに驚きながら、イリーナは烏間に尋ねた。
「えっ。例えばどこが?」
「髪の柔らかさは完全にお前似だ」
「……ああ、そういえばあんたの髪の毛って、けっこうチクチクして固いもんね……」
「あと、人懐こさ」
「それはなんていうか、幼児独特のもので、みんなこんな感じなんじゃないの?」
「顔立ちも全体的にお前似だろう」
「それは……女の子だからそう見えるだけなんじゃない? 女の子は男親に似るって聞くわ」
「眉はおれに似ているかもしれんが、目鼻立ちはお前だと思う」
「そうかしら……」

まだ夏になりはじめたばかりの暑い日差しの中を、清涼剤のような風がさあっと駆け抜ける。
この前買ってあげた麦わら帽子がよく似合ってるわ、と微笑むイリーナに、烏間は続けた。
「あと、笑顔がそっくりだ」
「あら。それはあんたにもそっくりよ」
「いや、お前にだろ?」
「確かにあんたがニコってすることはすっごい少ないけど、本気で笑ってるときの顔はあの子に似てるのよ?」
「……」
それはよく「怖い」と評されたあの顔のことだろうか、と考え込む烏間に、イリーナは少し吹き出しながら答える。
「安心して。あの怖い笑顔が似てるんじゃないわ」
「……」

急にむくり、と烏間が体を起こした。
「え? もうちょっと寝ててもいいわよ?」
「いや。お前にそっくりなもの、もう一つ思い出したんだ。それが急に見たくなった」
そう言うと座っていたベンチから立ち上がり、烏間は娘に話しかけた。
「暑いだろ。みんなでソフトクリーム食べに行かないか」
ぱあ、と表情を輝かせ、ふたりの可愛い愛娘は大きな声で「いく!」と宣言する。
きょとんとした顔を向けるイリーナに、烏間はわずかに微笑んでみせた。少しだけ、いたずらっ子のような顔を見せて。


「——気付いてなかったのか? お前とあの子のソフトクリームの食べ方、そっくりなんだぞ」

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