ジャンル:魔法少女サイト お題:名前も知らない昼食 制限時間:4時間 読者:197 人 文字数:1477字 お気に入り:0人
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幼児退行でいちゃいちゃする美要

「はい、あーん」
「ん、あーん」
 要から差し出したものを口に含む。つい先刻、美炭が調理した際に確認した味が当然した。
「ごしゅじんさま、おいしい?」
「……ああ、おいしいよ」
 日々わずかずつ、成長とともに更新される美しい容貌がことりと傾き美炭に愛くるしく確認を取ってくる。己で用意したものを評価するのはさすがの美炭も少し気恥ずかしいが、その姿には敵うはずもなく、求められている答えを口にする。
 絶賛監禁中の朝霧要がストレスからか記憶喪失あるいは幼児退行したのが先日のこと。
 美炭は要をなんとかなだめすかし丸め込み、互いが特別な仲なのだと誤解させた。
 それから、要は少しずつ、露骨に甘えてくるようになった。突然ぎゅっ、と抱き付いて来たり、首輪は嫌だ、全裸は嫌だとわめくようになったり、正直目に余るような部分も多かったのだが、「己の意見を受け入れてもらえる」ことを当たり前に期待する要の姿は新鮮だった。それは、美炭を信頼に足るかこわごわ試しているかのようにも見え、庇護欲を煽ったことは言うまでもない。
「要くんにもしてあげよう。ほら、あーん」
「はい、あーん」
 美炭が差し出したスプーンには、本日の昼食、適量の米とカレーがあった。応じたのは毎晩スプーンとは別のモノをしゃぶっている要の口腔で、素直に開いて嚥下した。
「おいしいか?」
「……ぅ゛ふッ、おいひ、です……」
「……嘘をつくような悪い子は好きじゃないな」
「ごしゅじんさまのご飯、ちょっとだけ、大人の味がする……!」
 どうやら辛かったらしい。せき込む要の目尻に涙が光る。美炭は思わず押し倒してすすりたくなったが、寸でのところで堪えた。
「お水を飲むんだ」
 よしよしと要をあやして透明な液体が注がれたグラスを渡す。はにかんで受け取る要は美炭から与えれれたものに何一つ警戒をしていなかった。美炭はたまに、ここへ食事の終わり時になってから睡眠薬を入れて睡姦することがあった。最初は戸惑っていた要も最近では恥ずかしがったり、もっと美炭を求めてきたりとただの日常の一コマへとなり果てている。
 要と美炭はなぜだかぴったりとくっつき、同じ皿から同じ食器で同じ食事を採っている。美炭の腿に銀のトレーが乗っかり、その上で頻繁に二人の間でスプーンがやり取りされる形だ。そのささやかだが手間しかかからない共同作業は、あの派手な結婚披露宴でのケーキへの入刀作業を彷彿とさせた。多少皿の中が乱れるのもご愛敬だ。
「ごちそうさまでした。ごしゅじんさま」
「お腹はいっぱいになったかな」
「……いっぱいになると、これからで出しちゃうかもだから……、半分くらいです」
「いい子だ」
 要の頭を撫で、目の前で新しく水を注いだグラスに錠剤だった顆粒を落とし込んでやる。未使用のスプーンで溶かせば、光の反射が鈍くなった。
 儀式めいている。というのも最近の美炭は面と向かって要を凌辱できなくなっていた。現に今の要はSM初心者が好む首輪しか拘束具をつけていない。好きなようにただただ貪りたいのに、魂が幼い要にはどうも無体を働けない。だが、要の容姿は美炭の好みで、毎晩健全に楽しむだけでは全く足りないのも事実だった。だから、意識のない、あるいは朦朧とした要で楽しむ。そのうち覚醒するまでがセットだ。
「いただきます」
 徐々に眠りに落ちる要をよりそって見守る美炭。食べられるために食べて眠る要は間違いなく玩具だ。
 ただ、それだけでは満たされない己も確かにあって。
 この儀式に、この感情に、誰も知らない名前をつけたい。

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